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編集は、いつも自宅。
背景が映る配信は、絶対にしない。
窓を閉め、
カーテンを引き、
音も切る。
“誰かを守る”って、
そういうところから始まると思ってる。
——だから。
配信を切ったあとも、
コメント欄だけが、熱を持っていた。
《優しい人じゃん》
《ちゃんと謝ってたよ》
《R、言いすぎじゃない?》
わたしはスマホを伏せた。
……ほらね。
優しい言葉は、証拠になる前に信じられる。
動画はもう編集済み。
名前も、顔も、
特定できる情報は全部落とした。
誰かを晒すためじゃない。
“見せたいのは構造だけ”。
それが、恋愛教祖としての最低条件。
次の日の夕方。
撮影目的でもなく、
ただ歩いていただけだった。
背後から、声。
「あっ……み〜つけた」
心臓が、一拍遅れる。
振り向くと、
そこにいたのは——
「昨日は、どうも」
ジュン。
昼の光の下だと、
夜よりも輪郭がはっきりして見える。
「……ねっ。ひとつだけ聞いていい?」
逃げ道を残した、軽い口調。
「きみの名前」
一瞬、迷ってから答える。
「……R。
恋愛教祖のR」
間。
ジュンは、
きょとんとした顔のまま、
意味を処理できないみたいに
瞬きをした。
「……なに、それ」
整った顔が、少しだけ崩れる。
苦笑い。
「ほんと、意味わかんねぇ」
そう言いながら、
金髪の前髪を、指でかきあげる。
光を弾く、キラキラした動き。
——あ。
これ。
中高生の女の子が、
一瞬だけ勘違いする仕草。
「冗談でしょ?」
そう言いながら、
ジュンは距離を詰めてくる。
わたしは、下がらない。
(ああ……)
この人、
自分の“武器”に無自覚だ。
「冗談なんかじゃないよ」
静かに言う。
ジュンは、また笑った。
「……そっか」
ジュンの目が、ほんの一瞬だけ細くなる。
「……めんどくさいね、君」
切った。
そこで、話は終わった。
「まあ、いいや」
ジュンは、もうどうでもよさそうに言う。
「ガキの正論ってやつ?
そのうち分かるよ」
背を向ける。
わたしは、その背中に向かって言った。
「分かってるよ」
「だから次は――
分かってる“大人”の言葉を使う」
ジュンは振り返らない。
「……ふーん」
ネオンが、無機質に瞬く。
その“ふーん”の中に、
少しだけ、
興味が混じっていることに気づいた。
ロックオン。
この瞬間、
ジュンは飼育するターゲットに。