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編集は、
作業であって、感情じゃない。
音を整える。
間を切る。
刺さりすぎる言葉は、削る。
名前も、顔も、
特定につながる情報は、
すべて落とす。
誰かを守るためじゃない。
自分が、
同じことをされたくないから。
それが、
恋愛教祖として決めたルール。
——動画を、公開した。
しばらくしてから、
コメント欄を開く。
《優しい人じゃん》
《ちゃんと謝ってたよ》
《R、言いすぎじゃない?》
わたしは、スマホを伏せる。
……ほらね。
優しい言葉は、
証拠になる前に信じられる。
通知が一つ増えた。
コメント。
名前は伏せられている。
でも、
言葉の選び方で分かる。
——声の主は、ジュン。
《昨日の“構造”の話、面白かった》
一文だけ。
その下に、続く。
《でもさ》
《あれ、
ちょっと寂しいガキの遊びじゃない?》
空気が、変わる。
《誰?》
《昨日の人?》
《知り合い?》
わたしは、反論しない。
削除もしない。
(怯えてない)
(それどころか、
分かった上で踏み込んでる)
少し時間を置いて、
固定コメントを
一つだけ入れる。
「補足します」
短く。
「この動画は、
誰かを断罪するためのものではありません」
「名前も顔も出さないのは、
守るためです」
「見せたいのは、
“人が引っかかる構造”だけ」
それ以上、何も足さない。
コメント欄は、割れた。
《考えさせられた》
《Rのやり方、好き》
《冷たい》
《感情がない》
……そこ。
ジュンは、
そこを突いてきた。
その夜。
DMが届く。
ジュン
君の動画さ。
構造は分かる。
でも、
あれは安全な場所から
石を投げてるだけ。
既読は、つけない。
少しして、続き。
ジュン
感情を使わない正しさって、
一番ラクだよ。
なるほど。
——プロだ。
理解している言葉で、
こちらの足場を削りに来る。
わたしは、
次の動画の原稿を開く。
書き足すのは、
たった二行。
「恋愛は、頭脳戦じゃない」
一拍、置いて。
「先に
『正解』を見せた方が、勝つ」
説明はしない。
反論もしない。
現実は、
いつも静かに答えを出す。
動画を、公開した。
数時間後。
通知。
ジュン
君の「構造」、
一つ抜けてるよ。
——“情”ってやつ。
既読は、つかない。
スマホを伏せる。
……そう。
だから次は。
情を、使う。