⚠自己満夢小説
⚠五条寄りの愛され
⚠高専時代軸
⚠微恋愛
『……』
「……」
「何、アイツらなんでまた怒ってんの?」
むっすーーーと頬を膨らませる。
眉間に刻まれた皺はなくなるどころか増えるばかりで、私は胸の前で手を組んで、なんの罪もない床を睨みつけていた。
私の後ろで五条も同じような格好をしているんだろう。
「また〇〇のお菓子を盗み食いしたんだってさ」
『ただのお菓子じゃないよ。数量限定販売で、人気過ぎて買えないシュークリームだよ』
「味はふっっっつーのシュークリームだったけどな」
「謝ればいいだろ…」
「謝っても許してくれねーんだもん」
『さっきの謝罪は誠意がなかった』
「意味わかんねぇ」
しょうもねーと言ってタバコをふかす硝子。
分かってる。私だってお菓子を食べられたくらいでここまで怒るなんて、子供じみてると。
五条が私の食べ物を取るなんていつものこと。
共有スペースの冷蔵庫に入れたプリンも、冷凍庫に入れたアイスクリームも、今まで散々被害に遭ってきた。
でも今回は限定のシュークリーム。
ここ最近任務三昧だった自分へのご褒美に、行列の末勝ち取った特別なものだったのだ。
五条にとってはただのシュークリームでも、私にとってはこれのために一週間頑張っていたようなもの。
それに五条は「謝っても許してくれない」って言ったけど、自分の謝り方がどんなものだったか記憶にないのだろうか。
『ちょっと、五条それ私の…!』
「あ、バレた。ごめーん」
“ごめーん”じゃねぇよ。それで謝ったつもりか。
「〇〇、許してやってくれないか。もし気が済まないなら私が悟と一緒に同じものを買ってくるよ」
「はぁ?そんな面倒くせぇことしねぇわ」
「悟…。元はと言えば君が人のものを勝手に食べるからだろう」
「食わずに放置する方が悪い」
『任務から帰ってから食べようと思ったの!』
「それにまだ3つあんだろ。そもそも4つも一人で食おうとしてたとか食い過ぎじゃね?」
そう、私が買ってきたシュークリームの個数は4つ。
五条が食べたのは1つだから、まだ3つ残っている。
でもそれとこれとは別で、勝手に人のものを捕るのは怒られて突然のことだ。
反省の色が見えない五条に腹を立てた私は、勢いよくソファから立ち上がった。
そんな私に五条と夏油が顔を上げる。
『…もういい』
「あ、〇〇…!」
夏油の私を呼ぶ声を振り切って、私は自分の部屋に戻った。
「あーあ、〇〇かわいそ」
「だって1つくらい…」
「まだわかんないわけ?」
「?、なにが」
「4つってことは、私達と〇〇の4人で一緒に食べようと考えて買ったんだろうね」
「〇〇だって食われたから怒ってたわけじゃない。皆で一緒に食いたかったから怒ったんだろ」
「!……んだよそれ。…バカじゃねぇの」
『はぁ…』
大きなため息が私一人しかいない部屋に木霊する。
私がお店に行った時、限定のシュークリームはちょうど残り4つだった。
最初は自分の分ひとつだけ買おうと思っていたけど、五条達のことが頭に浮かんだ。
五条は甘いものが好きだし、夏油も嫌いではない。
硝子はあまり得意じゃないけど、このシュークリームは甘すぎず食べやすいと聞いていたから、4人皆で食べたいなって思った。
授業で毎日顔を合わせていても、私や五条、夏油は任務、硝子は怪我人の手当てなどで、休日が被ることはほとんどなかったから、余計。
でも、そろそろ…。
(許してあげないとかな)
五条はそんな私の考えなんて知らないし、悪気はなかったんだとわかってる。
今まで勝手にお菓子を食べられても、他のことで喧嘩したってここまで拗らせはしなかった。
いつだって私が折れて許してた。
五条が素直じゃないから謝れないだけで、本当は少しは反省してるって知ってたから。
(まだ共有スペースにいるかな?)
怒りすぎてごめん。本当は皆で食べたかったんだ。
そう言って仲直りしに行こうと部屋のドアを開けた時。
「!」
『え、五条?』
扉を開けてすぐの壁際に五条がしゃがんでいた。
普段無駄に大きい図体で私を見下ろしているのに、今はコンパクトに縮まっていて小さい。
怒られてしょんぼりした子犬のように見えた。
『なんでここに…。ってかここ女子寮だけど』
「……」
『五条?』
「…ごめん」
ボソッと、小さく一言。
それでも静まり返った廊下では耳によく響いた。
「俺と傑と硝子と、全員で食おうとしてたんだろ。それなら早く言ってくれりゃよかったのに」
『えっと…。熱でもある?』
「ねぇわ!」
『いやだって、五条が謝ってくるなんて』
「んだよ…こっちは真面目なのに」
『あ、ごめん。つい…』
改めて五条に謝られると、私もしょうもない事で怒ってたなぁって逆に申し訳なくなってくる。
五条は立ち上がると、白い箱が入った透明の袋を差し出してきた。
それはシュークリームを買ったお店の袋だった。
『え』
「限定シュークリームってやつは売り切れてた…から、他のやつだけど」
箱の中を覗くと、そのお店で変えるクッキーシューやエクレアが数個ずつ入っていた。結構な量だ。
『こんなに買ったら高かったでしょ。お金…』
「別にこれくらい。俺金持ちだし」
『知ってるけど…。自慢?』
「違うわ。気にすんなってこと」
私が慌てていると、片手を五条に掴まれた。
そのまま引っ張られて廊下を進む。
『ちょっと、速いよ!どこ行くの?』
「皆で食うんだろ。傑達待ってる」
沈黙が流れ、2人分の足音だけがやけに大きく響く。
ドクドクと激しく鳴る心臓は、歩くのが早いからか、はたまた…。
私はそんな考えを頭を振って消すと、笑いながら言った。
『五条』
「なに」
『ありがとう!』
「!、……おう」
五条の耳が赤かったことに私は気付かなかった。
そのあとシュークリームやエクレアなどをドカ食いして、1日で体重が3kgも増えた。
「〇〇太った?」
『💢💢』
そう言ってきた五条を殴り飛ばし、“最強を殴った女”と噂になってしまったのは、また別のお話。
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