東京都予選も終わりまた練習する毎日が始まった。正式なコーチの居ない星蘭高校ではまどかがコーチの代わりに指導していた。伊集院家の本邸は広く敷地内に様々なスポーツのコートがあるため、学校で練習出来なくても困らないまどかが自ら教えると申し出たのだ。
練習が終わって大和を迎えに行くためバスケ部のいる体育館へ行くと、バスケットボールの音が響いていた。中を除くと大和と部員が1on1をしていた。練習は終わっているようだが自主練をしていたのでまどかは体育館の隅に腰掛ける。『大和、バスケうまくなったなぁ』とまどかは考えながら試合の行方を見届ける。しばらくすると大和が持っていたボールをコートの外へ投げ言った。
「5対1でいいぜ。1on1じゃ勝負にならねぇ」
久しぶりに聞いた大和の荒い口調を聞きまどかは5年前の試合を思い出す。
当時小学5年生だったまどかと大和にU18日本代表に招集されるという前代未聞の出来事が起こった。まどかはバスケが大好きで強くなると実感する度達成感を感じる少女だった。小学生で最も活躍している小学生男女1人ずつを招集し、練習にのみ参加させるつもりだった監督はまどかの動き、技術を見てとても驚いていた。それをまどか自身も感じており、試合では存分に実力を発揮しようとしていた。
しかし、まどかよりも年上の18歳の代表たちは自分たちより幼い小学生が日本代表に入るのをとても嫌がり、1on1でまどかに絶望を植え付けた。まどかと対戦した全員のやる気はなく、わざと負けていったのだ。最初こそ自分の実力だと思っていたまどかだが3人目で異変に気づいてダンクを決めた。そして同時に叫ぶ。
「日本代表とはこんなものか。小学生に負けて恥をかきたくないためわざと負けるとはあなた達の力などたかが知れている。5対1でいいわ、1on1じゃ勝負にもなりません。わたくしにが圧勝して差し上げます」
こう言い放ちボールをU18キャプテンへ投げつける。
上等だと言わんばかりに、試合形式で1Qから始まる。本気のU18に対して序盤から差は広がっていく一方的な展開になった。そして試合終了直前にまどかは冷たい視線を向け、口を開く。
「この程度の実力なら1回戦すら突破できませんよ。わたくしごときに負けて残念でしたわね。」
そう言い放ち、まどかはハーフラインからシュートを打った。スパンッとネットを揺らし、3Pが鮮やかに決まりブザーが鳴る。
「バケモノめ」
まどかを見て監督が呟いた。
それ以降バスケはやっていない。
だが、バスケで絶望を味わう直前自分が言った『5対1でいい、1on1じゃ勝負にならない』という大和の言葉を聞き、自分と同じになるかもしれないと恐怖を抱いていた。だからあのような行動に出たのだろう。大和はとても驚いた顔をしていた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!