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放課後の教室は、ざわつく声と紙の擦れる音で満ちていた。
翔は人気者としてクラスの中心で笑い、軽口を交わしている。外ではいつも通りの仮面をかぶり、友達に囲まれる。
しかし、翔の視線はどこか落ち着かない。
「紬と…今日も話せなかったな」
心の奥で呟く。学校では、互いに名字で呼ぶだけ。距離は近いはずなのに、心の距離は遠く感じることがある。
一方、紬も教室の隅で静かにノートに向かっていた。友達の話に合わせることはほとんどなく、冷静な顔で時折笑う。
しかし心の奥には、翔の姿がちらつく。
「翔、なんであんなに楽しそうに…」少しの嫉妬と切なさが胸に広がる。
昼休み、二人のすれ違いが顕著に現れた。翔は女子グループと話している。紬は別の男子と話していた。互いに気づかず、外ではお互いの感情を隠していた。
翔は無意識に心配する。「紬は大丈夫かな…」
紬も、少し不安に思う。「翔は…楽しそうで、私といるときとは違う」
放課後、二人は神社のベンチに向かう。21:29――二人だけの時間。ここでは外の仮面は必要ない。
翔が先に座り、腕を組んで空を見上げる。
「今日は…変な気分だな」
紬も座り、少し声を震わせて言った。「翔、私…ちょっとイライラしちゃった」
二人は互いのすれ違いを感じていた。
「ごめん、俺…外ではつい楽しそうに振る舞っちゃう」翔は手を差し出す。
紬は少し黙ったあと、握り返す。「私も…外では平気な顔してたけど、本当はちょっと寂しかった」
静かな夜風が通り過ぎ、二人の手を包む。
翔は心の奥で思う。「外では嘘の顔を作ってしまう。でも、21:29さえあれば、紬と本当の気持ちで向き合える」
紬も同じ気持ちで頷く。
「ここでなら、怖くない。翔…私、やっぱりあなたと一緒にいると安心する」
「俺もだ。紬、外では距離があるけど、ここでは全部本当の気持ちでいられる」
ベンチに座る二人の影が、夕日の光で寄り添う。
夜風が髪を揺らし、葉のざわめきが静かに耳をくすぐる。
学校でのすれ違い、誤解、嫉妬――全ては外の世界の影だった。
でも、21:29の時間は、それを消し去る力を持っている。
翔は紬の手を握りながら心の中でつぶやく。「すれ違っても、21:29があれば大丈夫だ」
紬も同じ気持ちで手を握り返す。「翔となら、外の世界に負けない」
21:29――二人だけの秘密の時間。ここでは互いに本当の自分でいられる。
その時間があるから、学校のすれ違いにも耐えられる――二人にとって、21:29は欠かせない存在になっていた。