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「俺たち誰にも愛されてなかったのかな」
きんときが線路の上を歩きながら呟いた
「そんなことはないよ。少なくとも俺たちは」
「そうか?」
「俺たちは家族に愛されてなくてもクラスメートに嫌われてもアイツらがいてくれた」
小学生の時からずっとそばに居てくれた
親友なんて綺麗な縁ではなかったけど親友より固い絆で結ばれていた
「けど今はいないから、確かに俺たちは愛されてないのかもしれないな」
自分で言って笑ってしまう
そうだそうだ
俺たちを愛してくれる人なんてあいつらしか居ないんだからアイツらが居ない今誰が愛してくれてるんだ
誰が俺たちのことを見てくれてるんだ
「そう、だな」
きんときは少し俯いた
俯いて何かをぼーっとみていた
この世界から逃げ出してから時々彼はこんな目をする
何かを諦めたかのような
何かを失ったような
そんな目を…
俺は勢いよく走って彼を追い越した
「nakamu?」
「きんときそんな事してたら置いてくからな!」
悪いなきんとき
俺は不器用だから
俺はお前みたいに人を励ます方法を知らないから
こうすることしか出来ないんだ
「待てよ!」
そう言ってお前は俺を追いかける
あいつらが居ないと思うのは俺たちがもう合わせる顔がないからだ
俺たちはあいつらの隣にいる資格を無くしてしまったからだ
生き残るために沢山のことを犠牲にしてしまった
もう罪を犯すことに抵抗感はなくなっていた
それは違うな
もちろん大きな犯罪は抵抗がある
俺たちが抵抗感をなくしたのは強盗だ
生きるために食料と金を盗んだ
時には人も傷つけた
こんな俺達が彼らの隣に立っていいのだろうか
彼らが許してもきっと
世間様が許さない
どっちにしろ詰みだったんだよ
俺たちの居場所はどこにもない
そんなことを思っていると急に手を引かれた
「nakamuその先は危ない」
そう言われて前を見てみるとどうやら電車が来ていたらしい
田舎町だからといって舐めていたら死ぬな
「ありがとうきんとき」
彼の手を掴み返したそういえばもう彼の手は震えていない
きっともう慣れてしまったんだな
慣れてはいけない気がした
こんな環境に
またいつか元の環境に戻った時に俺たちは
人間らしくいられるのかな
そんなことを考えてしまった
きんとき視点
最近nakamuがぼーっとしてる
暑さのせいもあるだろうけどきっとこの先のことを考えているんだ
いや違うか
ぶるーく達のことを考えているんだ
俺だって考える
もし俺が犯罪を犯してなかったら
今もバカ騒ぎできた
今頃もっと笑えたんだ
俺のせいだ
nakamuは悪くないって言ってくれた
だけど
人を殺した俺が悪いのも事実なんだ
だからすべての責任をもって
お前らの前から消えようとしたんだ
それなのに…
なんでついてきたんだよ
なんでお前まで罪を犯してるんだ
まだお前だけでも引き返せたのに
俺はこの先どうしたらいいんだよ…
nakamuを助けたい
nakamuだけでも
いや、違うな
本当は、
本当は俺も助かりたい
アイツらと一緒に居たかった
なぁもし
「なぁnakamu」
急に彼は俺を見て言った
「ん?」
「昔のおとぎ話とかどっかのアニメのヒーローみたいなめちゃくちゃ優しくてみんなに愛されているそんな人が居たら」
「汚くなった俺達も見捨てないでちゃんと救ってくれるのかな…」
そう呟く彼はどこか儚げだった
「何、馬鹿なこと言ってるんだ」
「そんな夢ならとっくの昔に捨てたよ!俺たちのヒーローはあいつらだった!だけど俺たちがあいつらを捨てたんだ」
「これからの人生にシアワセの4文字なんてない!アイツらが居ない人生にシアワセが訪れるわけが無い」
思わず叫んでしまった
最低限の水しか飲んでいなかったせいで喉に乾きを感じる
「今までの人生で分かっているはずだろう…?」
そうだアイツらがいてくれたお陰で今まで楽しかったんだ
だから
アイツらがいなくなったら楽しみなんてあるはずない
あっていいはずがない
「きっと」
「きんときをいじめたヤツらは俺は悪くない俺じゃなくて良かったって今頃思ってるよ」
きっとそうだ
人間なんてみんな醜くて汚い
俺たちの世界からヒーローはいなくなった
もう誰にも助けられない
だから
もうほぼ諦めてしまった
「そう、だな」
暗い雰囲気になってしまった
それを誤魔化すために必死に話題を考える
「そういえば」
「どうした?」
この先の言葉が続かない
何か無いか
何か…
咄嗟に周りを見渡してみると食料が入っていた袋を見つけた
「そういえばもう食べるものないな」
あ、確かに
と彼は言った
「また、盗むのか…」
彼はやはり何処か盗むという行為にまだ抵抗があるようだった
「きんとき」
そう言って肩に触れる
「俺たちはこうするしかないんだ」
「こうやって生きるしかないんだ」
もう普通には戻れないんだ
「そうだよな、」
彼の目から光が無くなる
きっとそれを奪ってしまったのは世界で
そして俺自身なんだろう
「行こうよきんとき」
盗みに
【続く】