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少女戦姫

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少女戦姫

17 - 壱章 地下と地上の攻防③

2024年02月16日

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アキトが地下で勝利を収める数分前、 屋上でヒマリとカナが共闘していた。

「な、なんて強さなの!?私の弾幕でさえ刀一本で全て凌ぐなんて……」

「別に私はすごくない。貴女が私以下なだけで何も不思議なことは無い。」

「ふ、ふざけないで!」

「私は真実を告げただけ。貴女がただ私以下であるということ。だから貴女の弾幕なんてハエを追い払うのとなんは変わらない」

「こうなったら……!」

サーベル以外の全ての武装を解除し機動力を底上げして近接戦に切り替える。

「射撃では勝てないなら、近接戦でワンチャンに賭けた方がまだマシ!!」

「………うん。それがいいと思う。でも、相手が私じゃなければもっと良かったかもね。」

刀を鞘に収め、居合いの構えを取る。武装解除した彼女は先程までの戦闘で見せたものよりも倍以上は早くなっている。少しのよそ見も許されないほどだが、ヒマリは相手を見ずにただ視線を地面に向け目を閉ざす。感覚はただただ聴覚と触覚飲みに集中させる。肌に触れる風から相手の来る方向を感じ、聴覚で相手との距離を測る。

刹那…。二人の戦闘は突然終わりを告げた。向かい来る相手の戦姫がヒマリの攻撃圏内に入ったその瞬間肉眼では捕えられぬほどの速さで抜刀し、容赦なく彼女の利き腕を切り落とし更に、脚部のスラスターも起動不可に追いやり完全に相手を戦闘不能に追い込んだ。

「貴女のその決断は良かった。でも、私の兵装は刀と大弓の2つ。そこから、メインは刀を使った近接戦闘だと分かるはず。いや、もしかして分かった上でこの行動ならもはやそれは諦めに近いのでは?」

「もう……なんとでも言えばいい。負けた戦姫に駄々こねる権利は無い。」

「それもそうね。なら貴女は私と一緒にお隣のお仲間の戦闘を見る事ね。」

「勝てるように祈れってこと……?」

「どうしようとそれはあなたの勝手。けど、私はオーナーからの言葉をまだ信じれない。だから手出をせず彼女を見るの。」

「……そう。私はあの子が勝とうがどうなろうと関係ない。どうせ私らは利害関係だからね。」

「冷たい戦姫なのね…。」


「どうやらあっちはもう終わったみたいだな。そろそろ遊ぶのやめてケリつけてやるよ。」

「ふん。F帯の私と同格の癖して何イキってんのよ?」

「言ったろ?遊んでやっていた、と。お前レベルに落としてるから同格になれてるんだよ。勘違いするなゴミが!」

腕部に取り付けられた折りたたみ式小型レールガンを伸ばして一発カナに向けて射撃を開始する。

予備動作が丸見えだからか瞬時に盾を構えレールガンを簡単に防ぐ。

「この程度で……」

「ざーんねん。それフェイクね」

盾を前に構えたことで、視界が塞がりその隙を突かれて背後を取られ一撃、重い蹴りを入れられた。

「がっ!?」

「ハッハッハッハッ!!やはり、F帯のド底辺戦姫だ。兵装も弱ければ、経験値も圧倒的に足りてない。貧弱な戦姫なんて、要らないのよ!」

「要らない……。貧弱…………。」

「あぁそうさ!確かアンタは『覚醒』とかいうスキルがあるらしいけど、それに頼ってるような落ちこぼれじゃあ太刀打ちは無理よ」

「私は……私は落ちこぼれ……………。」

「所詮ここまで来れたのも運が強かっただけなのよ!ビギナーズラックってやつ、分かる?あなたの実力は運のみなのよ!」

「運だけの戦姫………。」

「ねぇ?どんな気持ち?ここまでの快進撃がその覚醒ありきで、使えないとなると途端に露天する貴女の無力さ!! 」

「無力…。私が……無力?」

「ちょっと私がギアをあげたら着いて来れないもんね?本当に残念な戦姫。」

「………。そう、私は残念な戦姫。」

「あ?」

「要らなくなって拾われて運だけでここに立ててる残念な戦姫……。」

「おいおい……。まさか図星すぎて悲観的なったってのかよ!」

「ふふっ……。確かにそうかも。でも、それがいい。それでいい。」

「はぁ?」

「底辺から始まる事で下を気にせずただ上を見るだけでいいんだから。上しか目指せないという状況が最高にいい。」

「頭イカれたか?」

「『覚醒』無しで勝てるか分からないが、むしろ使わないことで素の戦闘能力が底上げされるなら私はそれを受け入れよう…。」

「気持ちわりぃ奴だな………。すぐに楽にしてヒマリの首を私が貰い受ける!!」

「ねぇ…。ヒマリ?」

「はい。」

「一個でいいから貴女の刀を扱う時の技を口頭で教えてくれる?」

「……いいでしょう。私はあんな野蛮な戦姫とはやりたくないので手を貸します。」

「ありがとう。」

「しかし100手を貸すのも癪なので技名だけ教えますから、そこから模索して下さい。」

「いいわ。」

「比較的簡単に得られる技は『五月雨さみだれ』」

「五月雨ね。刀じゃなくても再現可能?」

「再現可能。むしろ、ビーム兵器の方が成功率も高く汎用性もある。」

「なら、これ使って勝ってみせる。」

「そう。頑張ってください」

「お喋りはその辺で終わりだァ!」

再度腕部に付けた折りたたみ式レールガンを構えヒマリごと吹き飛ばそうと掃射する。しかし、ヒマリが刀を抜き縦に一振すると向かってきた弾は綺麗にふたつに切れてしまう。

「私を狙っても無駄。それに今の相手は私じゃない。」

「ちっ…。そううまくはいかねぇか。」

「彼女を倒したらいくらでも相手してやる。だから今は彼女とのやり合いに集中して。」

「ふん。今回は特別にその話に乗ってやろう。実際私の目的はお前だ。その前座なんて何ら興味は無い。」

「じゃあその前座に負けてもらって、本筋にたどりつけなくさせてやる!」

シールドの裏面に搭載されたサーベルを取りだして距離を詰める。出力の問題で敵にたどり着くまでに少なくとも2秒ほどかかり、戦姫大戦にとってこの2秒は隙以外の何物でもない。本来はその数秒の隙を埋めるためにライフルなどで牽制しながら詰めるのだが、カナはそんな事をせず最短で距離を詰めるために守りを捨てて攻撃に転じたのだ。

「ノーガードで私に近づけると思うな!」

メインウェポンのレーザーガンをまっすぐ向かってくるカナ目掛け何発も撃ち込む。だが彼女にはカスりもせずそのまま距離を詰められて、肩から腰にかけて一太刀入れられる。

「ぐぁぁぁ!?」

「ここでもミナとのやり合いが役立ったわ。なんだかんだ経験値は積まれてるのね私。」

「こ、この程度の傷で私はやられん!!」

即座に起き上がり回し蹴りをカナに食らわす。なんとかシールドで守りはしたが勢いが強く少し距離を離されてしまう。

「そんなに近接でやり合いたいならお望み通りやってやろうじゃないの。」

腕部の折りたたみ式レールガンを外し身軽にした後腰部に着けていたサーベルの柄を取り出し起動させる。

「ヒマリから技を教えて貰っても付焼き刃の小手先の手なんて私には効かない!」

「意地汚くて姑息なのが私なのよ。効く効かない関係なしにやれる事は全てやる!」

わざわざ同じ土俵に立ちそのうえで勝つことを目指した。理由は単純で、カナが得意としてるフィールドにあえて入りそのうえでこちらが勝利を収めれば彼女の取り柄そのものが否定されたのと同じ意味を持つため、そのまま心を壊してやろうと企んでいるのだ。

そんなこと露知らずカナは全力でぶつかる。サーベル同士が接触し火花が散る。鍔迫り合いになるも、やはり出力の違いからか徐々に押されていく。ここで、以前やった出力をゼロにしてカウンターを決めるという戦法を取るという選択が出るが、あえて彼女はその択を排除し真っ向から立ち向かう。ヒマリから告げられた『五月雨さみだれ』を会得しそのうえで相手を負かす、その目的のために唯一かもしれない勝ち筋を捨てて彼女は賭けに出た。

「所詮F帯は私には適わないんだよ!!」

「私は見てみたいんだ!お前のようなタカを くくってる強者が弱者に負けるその様を!」

スキルを使わずその圧倒的不利な状況。だがそれを彼女はただの気合い一つで互角以上に持っていく。

(こ、こいつ!?何がこいつの出力を底上げしている!?装備はたかだかF帯の平均値の安物だぞ!?)

「この一本がまぐれの勝利でも私は構わない!この戦姫大戦には再戦の二文字はないんだから、どんなに汚いと言われても私は勝ちをもぎ取らせてもらう!!」

その泥臭い精神が勝利の女神を自身の方に向かせた。拮抗していた鍔迫り合いはカナが大きく相手の剣を弾き、肩から斜めに一気に切り裂く。

(ただ切り裂くだけじゃダメだ…。五月雨という言葉から連想しろ私……。)

「ま、まだ傷は浅い今度は私の番だF帯!!」

切られてもなお反撃の意志を見せ、脚部のミサイルポッドを自爆覚悟のゼロ距離で発射しダメージを与えつつ距離を置く。

「ぐっ!!?」

「ゴホッゴホッ…。こ、これでまた仕切り直しといこうじゃねぇか………」

(私もだが、相手も満身創痍だ。覚醒無しでも何とかやれてる…。あとは兵装さえしっかりすればもっと上手く展開をこちらのものに出来るはず。が、そんな先の話は今はいい。今、私がやる事はただ一つ。五月雨を完成させること!そして、その五月雨の完成図は私の中で出来上がった、あとはそれが正解かをこの一撃に賭ける!)

連撃を嫌った相手は脚部ミサイルポッドで距離を置いたが、自身のEN量を考慮すると射撃兵装は燃費が悪いため扱えず、図らずもやはりサーベルでの決着となる。

序盤に遊び過ぎたせいでEN管理を怠り、そのツケが今ここに回ってきた。揺れる足をどうにか奮い立たせサーベルをしっかりと握り、カナを睨みつける。勝負は一瞬……。すれ違いのその瞬間が勝負の切れ目……。

「終わらせてやる……。そして、あんたを連れ帰り研究材料としてこき扱ってやるよモルモット………」

「……。ゴメンだねそんな不自由な生活。私はお前に勝ち、お前の後ろの存在をぶっ潰さないといけないんだ。だからお前は…ここで倒れてもらう!」

両者咆哮を上げながら一気に距離を詰め片方は縦に剣を振るい、片方は下から上に切り上げるように剣を振るう。互いの攻撃範囲に入りそこで決着が着く。

「…………。しょ、所詮F帯…が。 」

「……うぐっ。」

「この体じゃあヒマリの奴とはやりあえねぇな」

「あぁ………そうだな。**敗北者**め」

瞬間、彼女の身体中に断続的な斬撃が繰り出されそのまま倒れ込み『WINNER カナ&ヒマリ』の文字が表示された後展開された戦姫フィールドは消えていき、モールの屋上に続く廊下にと戻される。

(まさか言葉のみで本当に五月雨を完成させるとはね。ビームサーベルの方が粒子の動きを操れる分断続的な斬撃を作り出すのは容易く難易度はそれほど高くは無いが、コツは必要。それを、なんの助言無しに成功させた彼女はオーナーの言う通りいずれ私の壁になる戦姫ね。)

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