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門番と思わしき男を倒し、遂にその扉に手をかけ先に進む。屋上は幾つかの小さな屋台に自販機にベンチと、いわゆる休憩所のような作りになっていた。そして、目的であるミシマは扉を開けた正面の小さなステージ上に置かれた椅子に腰かけ、足を組み余裕を見せつけながらこちらを眺めていた。
「随分と偉そうだなアイツ…」
「一応今回の計画先導者はアイツだからね。僕はこの計画にはそんなに関与してない。強いて言えば、君を確保したら汚名挽回なんじゃないのか、て促した程度。」
「結構なことやってるじゃないですか」
「まぁ、僕もミライソフトの社員なんでね」
「ここに来ることは何となく予見していた。だが、まさかミカゲさんと共に来るなんて、それは想定外だ。」
「本当は僕も出しゃばる気はなかったけど、あらかじめ話してた内容と異なる点があってそれを確かめるべくここに来た。」
「では、その件を含め少しお話でもしましょうか。どうぞこちらのステージまで」
言われるがまま彼の元まで向かう。その僅かな移動の間に不意をつかれ襲われるかもしれないと警戒しながら歩を進める。
「そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ。ここには私とお二人しか居ないのでね。」
彼の言うとおり入口からステージ上まで特に何も無く上がることが出来て椅子に腰かけ彼と面と向かって話すこととなる。
「オッサン目的はなんだ?あんたが計画したコレの達成条件は僕を確保すること。なら、わざわざこうして話す意味もないと思う。」
「そうですね。君の言う通り確保が目的ならすぐにでも行動に移すべきですが、恐らく私の部下から話を聞いたでしょう?」
「?」
「あなたを確保する理由はその戦姫が欲しいから。その戦姫の持つスキルを解析したいから、だからあなたを確保する。こんな内容を聞いたと思われます。」
「確かに言ってたなそんなこと。」
「その話を僕がしたあと追加で『確保する際は必ず戦姫大戦をすること』そう条件を追加したはずだが?」
「はい。確かにそう仰っていたので部下たちにもそうさせたはずですが…」
「ざんねんながら一部の人間は直接捕まえに行ってた。」
「そんなはずはありません。確かに私はミカゲさんの指示通り戦姫大戦で負かし、確保するよう伝えてありますし、試作品である『S.F.C』を持たせ問答無用で勝負をできるようにもしました。」
「そうなると指揮系統が機能してなかったことになる。それは、君のミスということに直結するが?」
「そんな馬鹿な……。この一件で私は部下からの信頼も失ったというのか……… 」
「僕個人としては君を信頼している。だからここの後継人に選んだし、君の汚名挽回のチャンスも作ってあげた。しかし、結果として君の部下による無謀が起こり、僕にこうしてと言い詰められている。分かるか僕の言いたいことは?」
「………。」
「どの道ここで君がこの子とその戦姫と戦闘しないと君の未来はない。君のやるべきことは至ってシンプルだ。間接的に僕を裏切ってるんだ、あとは結果で示せ」
「……はい。元よりそのつもりです。」
「っと、戦姫大戦に移る前に僕から幾つか聞きたいことがある。それに答えてくれ」
「いいでしょう。」
「まず、この計画についてだがこれはミライソフト全体で決めたことか?それともオッサン個人の私怨か?」
「両方が正しいですね。確かに私はあなたに負けその鬱憤を晴らしたいことも理由としてあります。が、私怨で行動など会社は許すことは無い。それは分かりますね?」
「まぁ、独断で行動してミスしたら会社に大きな打撃を負うからな」
「だから最初は諦めてましたが、君の戦姫が覚醒というスキルを持っていたことを話したことで、君の確保を任された。正確に言えばミカゲさんがそうなるように流れを作ってくださった。そのおかげで、合法的に君に逆襲を出来るようになったということだ。」
「なるほど。覚醒のことを話したことで会社の意向となり、それがオッサンの私怨と重なった。だから両方正しいってことね。」
「他に聞きたいことは?」
「さっき話の途中にでてきた『S.F.C』て一体なんなんだ?」
「『S.F.C』は略称で正式名は【戦姫フィールドカプセル】と言うものです。戦姫大戦をするにあたり、決められた戦姫フィールドに向かわないといけないが、これはその手間を無くす画期的なアイテム。」
「途中出くわしたヤツらが胸ポケットから取り出してたのはそれか」
「効果範囲は起動させたカプセルを中心に自身と対戦相手を結んだ範囲、もしくは直径6メートルとなる。」
「それなりに広いんだな…。」
「このS.F.Cの欠点はオーナーである人間もフィールド内に含まれるため死の危険性が生まれてしまうこと。まぁ、試作品だからここは市場に出る時は改善されてるだろう。」
「そんなとんでもねぇもんを使ってまで僕を確保しようと躍起になるなんてな…」
「その価値があるんですよ、あなたとその戦姫にはね。」
「まぁ、僕は負けるつもりは無いしオッサンはしっかりと僕に二度負けて会社から干されるといいよ。」
「そうですね。これをしくじればクビでしょうね。二つの意味で……。」
「ミシマさん。あなたとその戦姫の人生が掛かってるんです。じゃないと……。」
「はい。分かってますよミカゲさん。それじゃあ、やろうか。」
「やるぞカナ!」
屋上でリナとミシマが話をしている同時刻。地下にいるアキトの方でも、進展が見られた。
「なに?その話は本当だろうな?」
「あぁ…今この状況で嘘言ってなんになる?俺らがただ不利になるだけだ。」
「再度聞くがお前らは俺の友人が倒そうとしているオッサンの部下なんだよな?」
「厳密に言えば違う。元はミカゲさんの部下だったが、あの人が出世した為その後継人であるミシマさんの下に着くことになった。だからミシマさんの部下ではあるが元を辿ると俺らはミカゲさんの部下だ。 」
「ではなんだ?この地下での行いはそのミカゲという人物の指示だと言うのか?」
「それも違うね。そもそもミカゲさんはこんな非道なこと考えもしないはずだ。かと言ってもミシマなんとも言い難い。」
「なら、誰の指示で……」
「さぁね。一応指示を受けたのはミシマさんという事になってるけど、この地下での行動を促す指示は珍しくメールでのやり取りだったから、相手がミシマさんなのか別の人なのかそれは分からない。」
「疑うという行動は取らなかったのか?」
「不確定なうえに9割方憶測なものを行動に移すわけないだろ?」
「ま、まぁごもっともな意見だな。」
「とにかくいま話のが俺ら末端が知り得る情報だ。話すこと話したんだ、解放しろ。」
「あぁ。解放はするけど、どうなるかは俺知らないよ?」
「はぁ?」
「今の話聞いた感じ、君らの上司が負けたらそれに関与した社員も闇に飲まれるんじゃない?」
「ふん。腐っても俺らはミシマさんの部下だ。上司の負けを考えるほど落ちぶれてない。」
「あっそ。なんにせよオレは先に進むからな」
「勝手にしろ」
彼らが立ち塞がった扉に手をかけ先に進む。その先で見たものはいわゆるサーバールームと思わしき場所だった。しかし何となく違和感を覚え中に入り周囲を見渡す。するとノートパソコンが置かれた事務デスクを見つけ、近くに行き画面を覗いてみる。そこで見たのはこのモールの階ごとの地図と規則性は無いが至る所に数種類の点が見られた。
「これって……」
「アキトが今想像してる通りのものじゃない?」
「念の為ミナのマップと照らし合わせてくれない?」
「言われなくてもこれ見た瞬間にやってあるよ。もちろん結果はお察しの通り」
「やっぱりそうか。この点は『バトルスポット』で間違いないんだな。」
「色別になってるのは何か訳があるの?」
「カラーを見るに『青』は稼働中『赤』は稼働停止『黒』は点検中とかだろうな。 」
「入口で聞いた話だとモールの奥の方のバトルスポットは点検のはずよね?でも、黒色には点灯してない。」
「やっぱり嘘だったってことね。んで、これ自体はぶっちゃけそんな問題ない。バトルスポットの管理なら、変なことでもなんでもないしな。」
「でも、なんでこんなとこにコレが?」
「やましい理由があるんだよ。例えばコレとかな。」
そう言ってアキトはとある画面をミナに見せる。それは、各バトルスポットでの戦姫情報の数々だった。
「これって、ここで戦闘した子達の戦闘データ?」
「そ。で、これを擁護するならバトルスポットのバトルアーミーの強さ調整の為のデータ収集、てとこかな。」
「 擁護するなら、でしょ?」
「もちろん。まぁ、これよく見ると戦姫だけじゃなくてオーナーの情報もちょいちょい見られてるんだよね。確実に情報の取扱が黒の会社の所業かな。さらに恐ろしいのが、このデスクの備え付けの収納見たら紙媒体で資料がガッツリ作られててもう、ね? 」
「黒とかのレベルじゃなくない?これ証拠として写真撮るなりしとかない?」
「もちろんそのつもり。で、後で警察に話すかな。どうせそろそろ本格的に大事になってるだろうからね。」
「ここ漁ればまだまだ色んなの出てきそうじゃない?」
「そうだね。けど、そこまですると俺らが怪しまれちゃうから気になるものだけ纏めようか。」
「なら、私コレ気になる」
「『S.F.Cについて』ていう資料。ちょっと中読んでみるね」
我が社で新たな製品を開発した。その商品の名は【戦姫フィールドカプセル】略称はS.F.Cとしよう。これは画期的なアイテムだ。本来戦姫大戦をやるには必ず近場のバトルスポットが必要だったが、これはそのバトルスポットを探すという手間を無くし、何処でも戦姫大戦を楽しめる、そんな代物になっている。使い方は簡単で、この商品の突起部分を押して地面に軽く投げるだけで周囲を戦姫大戦が可能となるフィールドを自動で作り上げる。
効果範囲はカプセルを基準に直径6メートルまたは、所持者と対戦相手を線で結んだ距離を基準に半球…つまりはドーム型の空間を作り出すというものだが、今はまだ試作品の為使い切りになってしまうがいずれは何度も利用可能なそんな商品にしたい。
問題が発生した。S.F.Cは辺りを戦姫フィールドに変えることが出来るが、そのフィールド内にオーナーも入ってしまうことだ。これでは最悪の場合、オーナーに被弾したら怪我を負い死ぬ可能性も生まれてしまった。これでは商品として売り出すことは不可能だ。改良は必須だが、上層部はこの商品を一刻も早く売り出し利益にしたいと躍起になってる感じが露骨になってきている。売れ筋になるのは間違いないだろうが、こんな致命的な欠陥を見つけた以上そのまま売り出すわけには行かないので何とかして期限を伸ばしてもらおう。戦姫によって人が死ぬなんて言う事故があっていいわけないのだから。彼女らは今や私達の生活の一部でパートナーでもある。そんな彼女らをまるで兵器のような扱いをしたり、それに準ずることをさせたくは無い。
「とまぁ、他にもいろいろ書いてるけど抜粋するとこんな感じの内容だね。」
「試作品の欠点を知り、それでもS.F.Cを使用しているミライソフトは一体…」
「なんにせよこれも情報としては大事だよね?」
「そりゃね?」
「なら、これも記録して証拠として提示できるね」
「ま、俺らがわざわざ警察に言うまでもないだろうが一応な」
「……!ねぇねぇ屋上のバトルスポットが赤から青に変わった!」
「なに?てことは今屋上でリナが戦姫大戦を始めたってことか」
「私らはどうする?」
「今から行っても間に合わないし、恐らく行かせてもくれないだろう」
「どういうこと?」
入ってきた扉から数名の人が現れアキトを取り囲む。
「そこで大人しくしてもらうぞ。私らは戦姫犯罪対策課の人間だ。ここのモールで不自然な長期的メンテナンスが突然入ったと連絡があり、その調査にきた。」
「警察が動いてくれるのはありがたいかも」
「お前はなぜこんな所にいる? 」
「その辺含めて署でゆっくり話します。なのでまだもう少しここにいさせてください。」
「なにかやましい事があるのか?」
「信じられないかもしれないですが俺はただの一般人ですよ。友人を助けたい為にここにいるんです。」
「……何かワケありか?」
「まぁ、少しゴタゴタがありましてね。」
「………。分かった君を連行する前に君が見届けたい何かがあるのなら待とう。だが、条件としてこの部屋からは出るな。」
「ありがとうございます。」
(リナ……。絶対に勝てよ?)