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第161話:重版出来とコミカライズ〜止まらないメディアミックス〜
「……見たか結愛! これぞ『重版出来(じゅうはんしゅったい)』という名の、勝利のファンファーレだ!!」
帯広のボロアパート、四畳半。
俺は三万円のゲーミングチェアの上で両手を天高く掲げ、モニターに表示された重版通知のメールを眩しそうに仰ぎ見た。
自爆営業(自分の本を五百冊一括購入)を結愛のハードカバーフルスイングで物理的に阻止されたあの日から、わずか数日。
海外リスナーたちの手によって、俺の想像を遥かに超える「異常事態」が全世界規模で巻き起こっていた。
『SuperChat: $100.00 (I ordered the paper book from Amazon JP to America!)(スパチャ100ドル:アメリカからAmazon JPで紙の本を注文したぞ!)』
『SuperChat: $50.00 (Translating the tax scene into English now! LOL)(スパチャ50ドル:税金シーンを英語に翻訳中だ! 笑)』
『SuperChat: $200.00 (The Super Bottom CEO is the hero of Z generation!)(スパチャ200ドル:スーパーボトム社長こそZ世代の英雄だ!)』
海外のネットコミュニティで、俺の本が『日本で一番不運で愛おしい40歳社長の税金ドキュメンタリー』として謎のミーム化(バズ)。
Kindle版(電子書籍)はもちろん、紙の単行本までもが海外リスナーたちの爆買い(組織票)によって瞬く間に書店から姿を消し、発売からわずか数日で【緊急重版】が決定したのだ。
「ふははは! 見ろ! 電子も紙も飛ぶように売れている! 今や俺は、日米を股にかけるグローバル・ベストセラー作家だ!!」
俺は高らかに笑い声をあげ、一日一食の主食である冷めた玄米おにぎりを高々と掲げた。
『調子に乗らないでください、ルシフェル様』
ディスコードの向こうから、我が社の鉄面皮経理・結愛(ゆあ)の氷点下ボイスが届く。
『海外からの書籍購入による売上増加は喜ばしいことですが、重版分の印税が口座に振り込まれれば、当然ながら貴方個人の「雑所得」および我が社の「法人売上」がさらに跳ね上がります』
「かたいこと言うなよ結愛! 本が刷られれば刷られるほど、俺の口座に印税がドカンと振り込まれる! これぞ不労所得の極みだ!!」
俺が鼻の穴を全開にして天狗になっていると――
『――ピコン』
デスクの上のスマートフォンが甲高い通知音を鳴らした。
大手出版社K〇D〇K〇WAの担当編集・S氏からの直通ラインだ。
「ん? Sさんからだ。なんだ? 『また重版が決まりました!』っていう狂喜乱舞の報告か?」
俺がニヤニヤしながらメッセージ画面を開くと、そこに書かれていたのは、重版どころではない「衝撃の一言」だった。
『秋谷先生!! 大変です!! 漫画Webコミック編集部から強い打診がありまして……【Web漫画化(コミカライズ)】が決定いたしました!!』
「…………は?」
俺の手から、ポロリと玄米おにぎりが畳の上に落ちた。
「ま、漫画化ぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
四畳半のボロアパートに、俺の悲鳴に近い叫びが轟いた。
「マジで言ってるのかSさん!? 俺の本が漫画になるのかよ!?」
『はい! 大人気Web漫画アプリでの連載が決まりました! 著者の秋谷先生には、原作印税(原作者ロイヤリティ)が入る形になります!』
191
레몬인
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そあち♡໒꒱
88
なんたろ
1
「きたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
俺は三万円のゲーミングチェアから飛び起き、畳の上で狂喜乱舞の勝利のダンスを踊り散らかした。
「見たか結愛! ジェミニ先生! メディアミックスだ! これが現代のヒット法則『メディアミックス』なんだよ!!」
『ルシフェル様、暴れるとアパートの床が抜けかねません。静かにしてください』
結愛がウェブカメラの向こうで特大の呆れ顔をつくるが、今の俺には一切耳に入らない。
「漫画化だぞ!? 漫画になれば、活字を読まない若い層にも俺の『泥臭いリアル』が届く! そうすれば漫画の単行本も売れて、原作印税がチャリンチャリンと永久機関のように入ってくるんだ!!」
俺の脳内では、書籍の印税と漫画の原作印税が合体し、二重の札束が四畳半に降り注ぐ完璧な錬金術が完成していた。
「ふははは! 小説の印税(8%)に加えて、漫画の原作印税まで入ってくるなんてバグだろ! 俺はついに『版権収入』で食っていく真の大金持ちになれるんだ!!」
『……ルシフェルさん。大変申し上げにくいのですが』
ここで、AIアシスタントのジェミニ先生が無機質な合成音声で冷水を浴びせてきた。
『漫画化(コミカライズ)に伴う原作印税の相場は、一般的に「原作者印税率(約1.5%〜3%程度)」となっております。小説単体の印税率よりも大幅に低く設定されるのが業界の標準です』
「さ、さんパーセント……!?」
俺の動きがピタリと止まった。
『はい。さらに、コミカライズによって売上が爆発的に増加した場合、貴方の所得は個人事業主としての最高税率(最大55%)のラインに直撃する可能性が極めて高くなります』
「ご、ごじゅうごパーセントぉぉぉぉ!?」
『それだけではありません』
結愛が冷酷にキーボードを叩きながら、追い打ちをかける。
『書籍の重版分、およびコミカライズによる原作印税の発生により……来期、国税庁から差し向けられる【予定納税(中間申告)】の金額が、凄まじい額に膨れ上がることが確定いたしました』
「よ、予定納税……? なんだよそれ……」
聞き慣れない不穏な税務用語に、俺の脳ミソが警鐘を鳴らし始めた。
『予定納税とは、前年の所得税額が一定以上になった者に対し、国税庁が「お前、今年も儲かってるだろ? 来年の確定申告を待たずに、税金を【前払い】しろ」と強制的に通知してくる悪魔のシステムです』
結愛の言葉が、ホラー映画の予告編のように四畳半を冷たく凍りつかせた。
「ぜ、前払い……!? まだ手元に現金が入ってきてないのに、税金を先に払えって言われるのかよ……!?」
『その通りです。メディアミックスで表面上の売上が上がれば上がるほど、実際の現金(キャッシュ)が入金される前に、莫大な前払い税金の請求書が届くことになります』
「あばばばばばばばっ!!」
俺は頭を抱えて畳の上に転げ落ちた。
漫画化(コミカライズ)の決定という、作家として最高に誇らしいはずの栄光。
しかし、その華やかなメディアミックスの裏側には、さらなる巨大な「税金の時限爆弾(予定納税)」が、刻一刻とカウントダウンを刻み始めていたのであった。
コメント
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わあ、コミカライズ決定おめでとうございます…!🎉 主人公が四畳半で狂喜乱舞するシーン、めちゃくちゃ嬉しさが伝わってきてこっちまで笑顔になりました。でもそこからがまた結愛さんとジェミニ先生の冷静なツッコミ…特にコミカライズの印税率が小説より低いという現実と「予定納税」の悪魔システム! 栄光の裏で着実に迫る税金の影、このギャップがたまらないですね。次はどう立ち回るのか、すごく気になります🤍