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主演女優賞

7 - 灯火〈Black〉

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82

2022年11月02日

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義足の彼 × 同居中の彼女


Side北斗


「よっと」

玄関で義足を脱ぎ、そのまま壁に立てかける。

持って帰ってきたユニフォームを、洗面所の洗濯かごに放り込んだ。これは俺が所属するバスケットボールチームのもの。車いすバスケのプロチームで、今日も試合をこなしてきたばかりだった。

けんけんの状態でリビングまで行くと、キッチンでフライパンを握っている彼女を見つけた。

「ただいま」

「おかえり」

この笑顔を見たら、試合の疲労なんてひとっとびだ。

「美味そう。カレー?」

「うん、このくらいしかなくて。いい?」

もちろん、と答える。小さい頃から大好きだ。

「今日の試合はどうだった?」

そう問われ、振り返って笑う。

「よく出来たよ。いつも通りにシュートもちゃんと入った。でも動きすぎて疲れたな」

「お疲れ。今度の大会、見に行くから」

ありがとう、と返した。

リモコンを操作し、テレビをつける。何気なく変えたチャンネルでは、バスケのニュースがやっていた。

健常者のバスケ。有名な海外チームだからだろうか、所属している日本人選手の活躍が大々的に報じられている。

車いすバスケは、端的に言えばパラリンピックくらいしか報道されない。

少しの寂しさを抱えながら、かばんに入れっぱなしのスマホを取ろうと立ち上がったとき、右足に痛みが走った。

正確に言えば、痛みが走ったように思っただけだ。膝から下がない右足が。

「っつ…」

押さえながらうずくまった。

「北斗? …え、大丈夫?」

すぐに駆け寄って肩を抱き、ソファーに寝かせてくれる。

「幻肢痛か。痛み止め持ってくるね」

ある部分ではなく、下のほうがズキズキと痛むように感じるのが嫌なところだ。俺の足はもうないってのに。

「うっ、いった…」

痛み止めの薬を飲んでも、悶絶するような悪魔は退いてくれない。

「今回ひどいね…」

「ちょっと酷使しちゃったかな」

疲れた日によく起こることだ。なんとか我慢していると、ようやく落ち着いてきた。

「ごめんな…いつもいつも」

うん、と首を振る。「あなたのせいじゃない。しょうがないよ」

その優しさに、何回救われたことか。

と、「あっ」

思い出したように彼女が手を叩いた。

「そういえば、明日の夜天神祭があるんだって」

天神祭とは、この近くの神社で毎年夏に行われるお祭りのことだ。小さい頃なんかはよく遊びに行っていたが、大人になると忙しくて行けていない。

「ちょうどオフでしょ? 一緒に行こうよ」

「でもトレーニングしなきゃ……」

難色を示すと、えーっと残念がる。

「そんなことずっと考えないの。休めるときは休む」

それもそうだけど、とうなずく。「…わかった。俺も久しぶりだし、行こうか」

やった、と嬉々とした表情になった。

「確か、前に買った浴衣があったと思うんだけどな……」

と軽い足取りで2階に上がっていった。


続く

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