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「オレは元々そのつもりない」
「だって麻弥ちゃんが婚約するって・・」
「あぁ・・。それは親たちが勝手に決めたことで、親と麻弥が勝手に言ってるだけ」
「勝手に・・って。そんなちゃんともう決められた大事なこと変えられなくない?」
「オレは元々ずっと麻弥とは結婚はしないって言ってある。だけど最近親父が倒れて今みたいな状況になったから、親たちも急に焦り出して話を勝手に進め始めただけだから」
「なら余計そんな状況ならそうなっちゃうんじゃないの?」
「オレが好きなのは透子だけだから。透子以外誰も考えられないし」
「だからって・・・。もうそんな問題じゃ済まないでしょ・・・」
「透子は心配しなくていい。変わらずオレを信じて好きでいてくれればそれでいい」
「それでいいって・・・。婚約の話まで出てるのに今までと同じようにって無理あるよ・・」
「なら、透子はオレが他の人と結婚しても平気なんだ?」
「平気なワケないじゃん!・・でも、もうどうしていいかわかんない」
「透子は何もしなくていい。変わらずそのままでいてくれれば。但し、絶対何があってもオレを信じて好きでいること。そしたら絶対大丈夫だから」
「なんで言い切れるの・・?」
ずっと揺るがない樹の自信がたまに不思議に思う。
何があっても樹は気持ちを揺るがさずに、真っ直ぐ気持ちをぶつけてくる。
「自信あるから」
何を根拠に何を思ってそう言ってるのかもわからないけれど。
だけど、きっと、こうやってずっと真っ直ぐなところに惹かれているのも事実。
私は今までいろんな状況を経験して、自信を失くして、この年齢まで結局はもう傷付くことが嫌で無難な生き方をしてきたような気がする。
ただ無理をせず仕事だけしていたら、そんなことで傷つくこともない。
でも、樹はどんな状況でも傷つくことも怖がることも恐れず常にぶつかってくる。
自分にないその強さにホントは憧れて好きになった。
樹なら、どんな自分でもどんな状況でも救い上げてくれるような気がした。
「樹はなんでそんな強いの・・?」
「そりゃ・・・オレには透子がいるから。透子がいてくれるからオレは強くなれる」
「私なんもしてあげられてないよ?」
「透子がオレの頑張れる理由になってる。一緒にいてくれるだけでそれでいい。透子がいなくなったら、オレはオレで無くなるんだよ?」
「私だって、もう今樹がいない自分なんて考えられないよ・・・」
「なら。悩む必要ないじゃん。とにかく婚約のことは透子が気にすることない。オレが絶対なんとかするから」
結局はこうやって説得されたらもうその言葉を信じたくなる。
「ホントに、信じてていいの・・?」
「もちろん。ずっとそう言ってんじゃん」
樹は優しく微笑みながら答える。
「これはさ、オレだけ頑張っても成り立たないんだよね。透子もさ、オレを信じて頑張ってくれないと。だからさ、一緒に頑張らない?」
「一緒に・・?」
「そう。お互いどんな状況だとしても、お互いを信じて頑張る。いつかさ、ホント何の問題もなく一緒にいられる時まで」
「じゃあ一緒に頑張ってたらその時はいつか来るってこと?」
「うん。正直これからもまだ透子が不安になったり心配するようなことが出てくるかもしれない。だけど・・、これだけは覚えておいて。それはオレと透子がこの先一緒にいられる為に乗り越えなきゃいけない必要な時間だって」
きっと樹はまだこれだけじゃない何かを抱えているのかもしれない。
だけど、きっと樹は今やらなきゃいけないことをしているのは確かで。
それはどれもきっと意味ある時間。
一人で全部抱えている樹を、私がこれ以上苦しめちゃダメだ。
ただ樹が自分を好きでいてくれるという確かな事実と真実があるなら、私もただそんな樹を信じて自分なりに頑張るしかない。
「わかった・・・。私も樹と一緒に強くなる」
「それでこそオレが惚れた透子」
そう。
ずっと守ってくれるこの強さも、こうやって目の前で微笑んでいつも包んでくれる優しさも、どれも結局はまた樹への想いを今まで以上に更に強くさせていくだけ。
そして・・・この今の自分の気持ちがすべての答えなんだと、改めて気付いた。