「まぁ、とにかく自分なりに頑張るよ」
「うん。でもまぁまさか麻弥が透子にそんなすぐに報告するほど仲いいとは思ってなかったから、それはちょっと想定外だったけど」
「最近は全然会ってなかったんだけどね。てか、こっちこそ麻弥ちゃんと樹が幼馴染でそこまでの仲だって知らなかったからビックリなんだけど」
「あぁ・・確かにそっか。てか、それもホントはオレの責任かもな~」
「樹の責任って?」
「だって、透子と麻弥引き合わせたのオレだし」
「どういうこと?」
「オレがまだ透子に憧れ始めた頃、麻弥がプロデュースしたいって話持ってきて。オレが力貸すよりそういうのヒットさせてる透子にお願いした方が確実だろうなって思って、透子と一緒に出来るようにしてもらった」
「確かに・・イキナリ私指名でその時プロデュースの話来たから少し不思議だったかも。そっか、そういうことか」
「まぁそれは上辺の理由で、裏の隠してた理由は、麻弥通じてでも透子と繋がるきっかけ欲しかったから。多分透子気付いてなかったと思うけど、オレその当時麻弥に付き添って現場だったり何度か透子と顔合わせてたんだよね」
「えっ!樹・・いた??」
また私の知らない時に樹が自分の時間軸に存在していた。
「いたよ。 その時の透子はやっぱ仕事に夢中で、オレのことなんて全然目にも入ってなかったけどね」
「私、樹とずっと前から出会ってたのに、全然樹に気付けてない・・」
「仕方ないよ。まだその時はオレも透子と釣り合える男になりきれてなかったし、まだ気持ちを伝える勇気も、存在すらまだ知ってもらう勇気さえなかったんだから」
「もしその時から何か始まってたらまた状況変わってたりしたのかな」
「いや。きっとその時のオレは頼りなさすぎて、透子と始めることなんて出来なかったと思うよ」
「そんなことないでしょ。樹は樹なんじゃないの? どんな樹でもやっぱりまた惹かれてたような気がするけど」
「っていうか、オレがダメだったんだよね。絶対に自分に自信つけてから、透子の前に現れて始めたかった」
「よく私も他の人の元に行かないでいれたよね」
「まぁもしそうだったとしても、どうにかして奪いにいってただろうけどね」
「ウソ」
「ホントに。自信ついたら、透子がどんな状況であれ自分のモノにしようって決めてたから。だから結局透子はオレから離れられない運命なんだよね」
「何それ・・」
「まぁだから、きっと透子が離れたとしても絶対取り戻しに行くから覚悟しといて」
「離れないし・・・」
「いや。透子はすぐ周りの事考えて自分後回しにしちゃうからオレが心配なんだよね」
「そんなことないよ・・」
「もちろん。信じてるよ、透子のこと。だけど、そのことはちゃんと覚えておいて」
「わかった・・・」
「だから、ずっと何があってもオレを好きでいて」
「うん。ずっと好きでいる。何があっても」
今はただそんな樹を信じたいと思った。
これからどんな未来が待っているかわからないけれど、ただ樹とこれからも一緒にいたい。
樹が言ってる運命がもし本当に実在しているのなら。
きっとこれから何があったとしても、また樹といられるはずだから。
その未来を信じて、その樹を信じて、またいつ会えるかわからない樹と、その時にまた会おうと約束して、それから仕事に戻った。
その後からは、特に状況が変わるワケでもなく、婚約が進んだという話も聞かないまま数日が過ぎた。
そして毎日忙しくしている樹と会えないままの日々。
そんな変わってほしかった日常も特に何も変わらないままで。
結局私と樹との時間も、何も今のまま変わらないままで・・・。
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