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第11話:すれ違いと、確かな絆
同棲生活も軌道に乗り、オフィスでも家でも穏やかな時間が流れていた。
しかし、目黒のあまりにも抜きん出た容姿と、誰にでも人当たりの良い完璧な雰囲気は、どうしても周囲の人間を引き寄せてしまう。
ある日の夕方、他部署との合同懇親会の席でのことだった。
宮舘は少し離れた席から、輪の中心にいる目黒を静かに見つめていた。
目黒の周りには、他部署の若手女子社員や年配の女性上司、さらには男性社員までもが集まり、絶え間なく笑顔で話しかけている。
目黒は相変わらず誰に対しても嫌な顔一つせず、柔らかい微笑みを浮かべて対応していた。
本人は社交辞令と気遣いとして接しているだけで、1ミリも相手に興味などないことを宮舘は知っている。
けれど――周囲の華やかな女性たちが、目黒に親しげにボディタッチをしたり、連絡先を交換しようとスマートフォンを差し出したりする光景を見るたび、宮舘の胸の奥がチクリと痛んだ。
> (私には、音のない世界しかない。目黒くんと普通に声で笑い合うことも、電話で声を聴くこともできないのに……)
これまで誰かを羨んだことも、己の障がいに対して強い劣等感を抱いたこともなかった宮舘だったが、目黒を心から愛しく思うからこそ、自分には与えられない「普通」を持つ周囲の人々に対して、小さく胸を痛めてしまったのだ。
帰り道、目黒の車の助手席に乗り込んでも、宮舘はどこか静かだった。
いつもなら目黒の手話に優しく微笑み返すはずの宮舘が、どこか遠くを見つめるように車窓の夜景を見つめている。
マンションに着き、リビングの明かりをつけた瞬間、目黒は宮舘の手をギュッと握りしめた。
目黒は眉をひそめ、今にも泣き出しそうな、焦りと心配が入り混じった顔で宮舘を見つめた。
そして、ポケットからスマホを取り出し、素早く文字を打ち込んだ。
『涼太さん、どうしたんですか? 今日の懇親会から、ずっと元気がないみたいで……俺、何か嫌なことしましたか?』
宮舘は画面を見つめた後、少し躊躇しながらも、ゆっくりと手話を紡いだ。
――「目黒くんは、誰にでも優しくて、人気者だから。私といて、退屈しないかなって……少し、考えてしまったんだ」
その手話の意味を理解した瞬間、目黒の瞳が一瞬大きく見開かれ、すぐに激しい愛おしさと切なさで満たされた。
目黒は宮舘の言葉を最後まで待つこともできず、その背中に手を回して、力強く抱きしめた。
鼻腔をくすぐる目黒の温かい体温と、力強い鼓動が、宮舘の肌を通して直接伝わってくる。
目黒は宮舘を腕の中から少し離すと、宮舘の顔を大きな手で挟み込み、真っ直ぐにその目を見つめた。
そして、練習した手話に、溢れんばかりの感情を込めて伝えた。
――「他の誰が、俺を見ても、関係ないです」
目黒の手の動きは熱を帯び、激しく、しかしどこまでも真っ直ぐだった。
――「俺が、見ているのは、世界で、涼太さんだけです。声なんて、聞こえなくていい。涼太さんの、手も、目も、優しい心も、全部、俺の宝物です」
目黒はそう伝えると、宮舘の額に、そして頬に、最後に優しく唇を重ねた。
音が届かなくても、目黒の瞳が、手が、肌の温もりが、
「あなたしかいらない」と叫んでいた。
宮舘の胸を満たしていた小さな不安や劣等感は、目黒の深い愛の言葉によって、温かな涙と共に洗い流されていった。
宮舘は目黒の首に細い腕を回し、自分から静かに唇を寄せた。
二人の絆は、ささやかなすれ違いを経て、より一層固く、解けない結び目となって深まっていくのだった。
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コメント
1件
うわあ、この回めっちゃ良かった…! 目黒くんが練習した手話で「涼太さんだけ」って伝えるシーン、ガチで胸が熱くなった。宮舘さんの「音のない世界しかない」って不安もすごくわかるし、そこを力いっぱい抱きしめて否定する目黒くんの愛情が重くて尊い…。すれ違いの後の絆の深まり方が丁寧で、泣きそうになったわ。続きも楽しみ!