テラーノベル
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上司「目黒くん、このプロジェクトのプレゼン、修正したから確認しといて」
mg「はい!」
朝起きて、会社で仕事をこなして、ギリギ
リ終電に乗って、家に帰ったら力尽きて寝落ちする。それが俺のルーティーン。
今日もまた、抑揚のない日々を過ごすだけ。何も特別なことなんてない。今目の前にある当たり前を大事にするだけ。
そのはずだった…
fk「めめ〜、少しいい?」
mg「なんすか?」
fk「それがさ、オファーしてたイラストレーターさんが急に辞退したいって言ってきて、また違う人を探さないといけなくなったんだけど、一緒に探してほしくって」
mg「いいっすけど、会議って…」
fk「来週ー」
mg「ギリギリじゃないっすか!?」
fk「だから急いで探さなきゃいけないの!」
mg「えぇ…?まぁ協力はしますけど」
fk「よかったぁ!わら」
fk「今から空いてる?」
mg「空いてるというより、この確認だけすれば区切りはつきますけど」
fk「まじ!?」
俺は知ってる。深澤先輩が目を細めて、ニタっと笑うときは何か企んでいることを。
深澤先輩、と会社では呼んでいるものの、なんやかんやあって知り合いだから、年上だけど「タメでいいよ!」って言われて、普段はタメ口で「ふっかさん」と呼んでいる。
fk「じゃあさぁ、今から美術館行かね?」
mg「美術館、ですか?」
fk「そっ!だって美術館に飾られるような才能のある人に頼みたいじゃん?」
mg「まあ、そうっすけど、今からオッケーしてくれる人っていますかね?」
fk「やらなきゃ始まらないじゃん?最初から諦めてちゃダメだよー」
mg「…分かりましたよ」
fk「ありがと〜!わら」
そういう事になり、急遽美術館に行く事になった。こういうことは稀ではない。寧ろよくあることだ。でも、こういう日は大抵終電を逃す。その時は仕方ないのでタクシーで帰る。まあ、どっちでもいいんだけど。
深澤先輩と一緒に美術館に入る。今は絵画とイラストを融合させた新型アートを展示している。美大に行っていたものの、才能は乏しく、努力だけで上り詰めたから、こんなことが出来るのだと感心してしまう。
しばらくすると、絵画専用の部屋に入った。先ほどは同じ絵に絵画とイラストが共存していたが、ここは完全に絵画を極めているといったところか。
fk「めめ!これすげーぞ!」
mg「ほんとだ、色の使い方が斬新でいい」
fk「一旦この人の連絡先聞いてくるわ」
mg「ありがとうございます」
深澤先輩はフレンドリーでお人好しだからこういう交渉は全部任せている。俺は伝えたいことを整理して言うことが苦手で、その場で考えるよりも、準備期間が欲しいタイプなのだ。
そんなことを考えていると一つの作品に釘付けになった。派手なものではない、寧ろ淡白で、彩度は低い。それなのに、俺の目にはその作品しか映らなくなった。
緑豊かな並木坂の真ん中で、こちらに向かって手を振っている黒髪の青年。口元は笑っているのに、目からは一筋の涙が。その容姿に、既視感があった。いや、既視感しかなかった。これって…
mg「俺…?」
そう、俺だ。間違いない、俺の姿そのままだ。でもこの数年、俺が被写体になったことはない。作品の完成に数年間かかるとしても、完成したら被写体になってくれた人に見せるのはマナーのようなもの。でもそんなことはなかった。なら何で…
fk「連絡したけど無理だったわ〜。ん?めめ?どーした?」
mg「あっ、すみません、ぼーっとしてました。」
fk「そう?…えっ?これって…」
mg「ふっかさん…」
fk「もしかして…」
俺とふっかさんは作品の横にあるタイトルと概要に目を移す。そこには
コアラと木の実
84
3,050
柴うさぎ
2
桃紫 さく🌸
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『タイトル/絵の中の貴方へ』
『私は、人の絵を描くとき、被写体がいないときは必ずこの子を描いてしまうのです。それが不思議で仕方ないのです。しかも、彼は彼でも、様々な姿が浮かぶのです。本を読んでる姿、私と同じように絵を描いてる姿。でも、彼が誰なのか、分からないのです。名前も、その本当の姿も知らない。だから、本当にいるのなら、会いたい。会って話がしてみたい。何か知っている方は、私の方に連絡していただけると幸いです。作者
________阿部亮平より』
fk「やっぱり…阿部ちゃんだったね」
先に口を開いたのはふっかさんだった。この絵のタッチも、阿部らしいものだったからだろう、自信があった。それが、作者の名前で確信した。確実に阿部が描いた絵だ。
fk「めめ?」
ふっかさんはそう言った気がしたが、それよりも、頭の中がごちゃごちゃで整理ができず、立ちつくしていた。
mg「亮平…?」
無意識に口にしたその名前。10年以上前を境に姿を消した俺の…
____恋人の名を。
コメント
1件
うわ、これめっちゃ気になる展開…!第2話でいきなり過去の恋人の絵が出てくるとは思わなかった。美術館で自分そっくりの作品に遭遇して、しかも作者が亮平って…その衝撃、俺にも伝わってきたわ。ふっかさんとの軽いノリのやり取りから一転、ラストで「亮平…?」って呟くシーンが切なくて刺さった。この先どうなるんだろ、続きめっちゃ気になる🔥