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山城が駆るトラックの轟音と、志摩が放ったデータの衝撃が、三和会の鉄の規律を粉々に砕いた。
大型スクリーンには、大河内がひた隠しにしてきた「軍事シェルター計画」の全貌と
裏で繋がる政財界の腐敗したリストが、消しようのない汚点として映し出されている。
「…馬鹿な。私の、私の帝国が……!」
大河内が防弾ガラスを叩き、顔を真っ赤にして叫ぶ。
その権威は、もはや雪解けの泥水よりも脆く崩れ去ろうとしていた。
「久瀬、どけ。……お前を殺すのは、今じゃねえ」
俺は喉元に突き立てたドスを、ゆっくりと引き戻した。
久瀬は壊れた補助装置から火花を散らし、膝をついたまま動かない。
その瞳には、機械の意志ではない、一人の極道としての深い空虚が漂っていた。
「和貴、早くしろ!警察の本体が来るぞ!今度は中臣の犬じゃねえ、本庁のガサ入れだ!」
志摩がトラックの窓から身を乗り出し、怒鳴る。
俺はステージを駆け上がり、防弾ガラスの隔壁を親父のドスの柄で力任せに殴りつけた。
「大河内!お前の積み上げた『聖域』は、ただのゴミ溜めだったんだよ!」
亀裂の入ったガラスの向こう、老いた怪物が後ずさる。
その時、ステージの床下から地響きのような音が鳴り響いた。
再開発のために掘り返された地下空洞が
志摩のハッキングによるシステム暴走と、先ほどの爆発の影響で崩落を始めたのだ。
「……っ、崩れるぞ!」
山城が叫ぶ。
足元のコンクリートが割れ、巨大なステージがゆっくりと闇の深淵へと傾いていく。
「助けてくれ、大河内!私はまだ役に立つ!」
足元に縋り付く中臣を、大河内は冷たく蹴り飛ばした。
「……無能な駒に用はない。…黒嵜、道連れだ。この街と共に、お前も地の底へ沈め!」
大河内が懐から自爆装置のスイッチを取り出した。
この起工式会場そのものが、証拠隠滅のための爆薬の塊だったのだ。
「……させねえよ」
俺は迷わず、大河内の腕に向かって親父のドスを投げつけた。
鈍い音と共に刃が腕を貫き、スイッチが手からこぼれ落ちる。
俺は大河内の胸ぐらを掴み、崩れゆくステージの縁へと引きずり出した。
眼下には、真っ暗な地下の空洞。
「……親父、拓海。…見ててくれよ」
俺は大河内を抱えたまま、瓦礫と共に闇の中へと身を投げた。