テラーノベル
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重力から解き放たれた感覚の後、背中を焼くような衝撃が走った。
崩落したコンクリートの破片と共に、俺は大河内を抱えたまま
地下数十メートルの未完成のシェルター跡へと叩きつけられた。
暗闇。
立ち込める埃と、漏れ出した配管からの水音だけが響く。
「……ガハッ、…あ……」
数メートル先で、大河内が瓦礫に下半身を挟まれ、虫のように悶えていた。
かつての絶対権力者も、地の底ではただの脆い老人に過ぎない。
俺はきしむ体に鞭を打ち、ゆっくりと立ち上がった。
左肩の傷が完全に開き、熱い血が指先まで伝い落ちる。
足元に転がっていたのは、投げたはずの親父のドスだった。
「……終わりだ、大河内。あんたの作った『聖域』が、あんたの墓場になったんだ」
俺はドスを拾い上げ、一歩ずつ歩み寄る。
「……待て、黒嵜。…殺して何になる。……私がいなくなれば、この国の経済は…さらなる混乱に……っ!」
「知ったことか。俺は極道だ。国なんてデカいもん背負っちゃいねえ。…俺が背負ってるのは、あんたが踏みつけにした、小さな命の重さだけだ」
刃を振り上げる。だが、大河内は絶望の中で、不気味な笑みを浮かべた。
「……なら忘れるな、榊原が私と交わした真の契約は……『お前の命』を守ることではなく…お前を『私と同じ側の人間』にすることだったのだぞ……」
「…何だと?」
「お前は…私を殺した瞬間……この国の影を継ぐ者となる。……暴力で秩序を書き換える、新たな…怪物にな……」
その言葉と同時に、頭上の崩落口からロープが降りてきた。
「和貴兄貴!生きてますか!」
松田の声だ。
続いて、ライトの光が暗闇を切り裂く。
俺は振り上げた刃を止めた。
こいつを殺せば、俺の復讐は完成する。
だが、それは大河内の言う通り、血塗られた連鎖の一部になることなのか。
俺はドスを鞘に収め、大河内の顔に唾を吐き捨てた。
「……ならあんたには、汚ねえ泥水を啜りながら、一生かけて罪を数えてもらう」
俺は松田が投げたロープを掴んだ。
だが、その時。
暗闇の奥から、カチリ、と金属が噛み合う音がした。
生き残っていた「死番虫」の残党か、あるいは――。
「……黒嵜。……地獄へは、一人で行かせねえと言ったはずだ」
響いたのは、久瀬の声だった。
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