「………ふわあ」
ベットから起き上がって、大きくあくびをする。
やっぱり起きると寒さにびっくりするなあ…
窓の外を見る。
今日は雪が落ち着いてる。この世界では晴れることが滅多に無いらしい。
まあこの世界のことも思い出せないんだけど…
凸さんからこの世界のことを色々教えられた。
この世界は気温がとても低くて、猛吹雪になることが多い。
大人数が大きな建物に住んでる大拠点や、ここみたいに少人数で建物に住んでる小拠点がある。
植物がまともに育たなくて、食糧難に悩んでるらしい。
そしてこの世界には魔獣がいる。
巨大な白い狼とか、白熊とか、色々な魔獣が氷を生やして攻撃してくる。
食料を求めて襲ってくるから、周りを見回りして倒したりするらしい。
これが凸さんに教えられたこと。
………うーん…
ここに来て一日立ったけど、記憶は戻らない…
………考えてもしかたないか、下降りよう。
階段を降りると、凸さんとべるさんが上着を着ていた。
「あ、おどろくさんおはよう。」
「おはようおどろくさん。」
「おはよう!二人とも出かけるの?」
「うん、ちょっと大拠点の方に話をしに行くんだ」
「私は行かなくていいの?」
「おどろくさんはここに来たばかりだし、別にいいよ。」
「まあ本ぐらいしかないから、暇かもしれないけど。」
「…そういえばしぇいどさんとうたいさんは?」
「しぇいどさんは俺達より先に行ってて、うたちゃんはまた部屋に籠もってる。」
…うたいさんの姿まともに見てないなあ
調べものしてるらしいけど…凄く大事なことなのかな。
「それじゃあ行ってくるねおどろくさん」
「うん!行ってらっしゃい!」
…これからどうしよう
暇だなあ…本読もうかな。
書庫に入って、本棚から適当に一つ本を取り出す。
本を開くと、凄く古いみたいで汚れてたり、破れたりしてほとんど読めなかった。
うーん…
書庫を出てソファに寝転がる。
………眠たくなってきちゃった。
力を抜いて、夢の世界に入る。
痛い、痛い…寒い…
頭が痛い、気持ち悪い…もう嫌だ
………『暖かい』って、どんな感じなんだろう…
生まれてから、寒い檻に入れられて、冷たい食べ物を食べて、冷たい扱いを受けてきた私は、『暖かい』を言葉でしか聞いたことがない。
大人たちが暖かいという言葉を使っていたのを聞いた。多分寒いの反対。けど想像が出来ない。
…なんでこんなに苦しまないといけないんだろ…私何か悪いことしちゃったのかな…悪い狼なの?
怖い…
「…っ!はぁっ、はぁっ…」
起き上がって荒くなった息を整える。
冷や汗が凄い。
「………大丈夫?」
いつの間にか傍にいたうたいさんが、心配そうな目で私を見てた。
「凄いうなされてたよ、顔色も悪いし。」
「だ、大丈夫…」
…夢、かな…けど内容が思い出せない…
………『暖かい』?
その言葉が頭に浮かんだ途端、頭痛が襲ってきた。
痛みで頭を押さえる。
「っ…」
「…大丈夫?」
「………だい、じょうぶ…ちょっと頭が痛くなっただけ。」
「………そっか」
うたいさんはそう言うと階段を登り始めて、足を止める。
「………相談したいことあったら、言ってね。」
そう言うとうたいさんは2階へと登っていった。
…相談
うたいさんのことは、まだよく知らない、けど…
人への思いやりがある、優しい人なんだろうなって思う…
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