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ぼくには話の内容を整理する気力もない。

力なく俯いていると、激しい金属のぶつかり合う音がした。


独りぼっちで、ぶーんと音がするので上を見ると、照明の明かりは消えかかり、一匹の蝿が飛んでいた。


それを見て、ぼくは真っ暗な箱の中で一つの考えが浮かんだ。


そうだ! ぼくの検査結果!


ぼくは一人でなんとかしないといけないんだ!


バラバラにされても生きている子供たち。これからの被害者のため。そして、ぼくの身体の秘密。


今、探さないといけないんだ!


一階に着くと、ぼくは勇気を振り絞ってカルテ室を探した。


確か昔、別の病院で母さんとお医者さんがカルテを見ていたのを思い出した。


当然、母さんと父さんが心配だった。それに大原先生が硬質な声の人たちを説得しているけど、まだ戦っている音がしていた。


早くカルテを探さないと……。


薄暗いエレベーターが一階に着いた。


扉が開くと、一人の看護婦さんが立っていた。


「どうしたの? ぼく? 消灯時間はとうに過ぎているのよ」


茶色がかったポニーテールで、マスクをした看護婦さんだった。


「あの。カルテ室はどこですか? ぼくの検査結果を医療関係者の父に見せてもいいと、今日の夜にお医者さんに言われたんです。でも、明日の朝まで、ぼく自身待てないんです……。きっと、命に関わることだし……。夜も眠れなくて、気になって……。父は一階のロビーで疲れて寝ています」


ぼくは大袈裟に溜息をついて、俯いた。


咄嗟についた嘘だけど、この人を上の階に行かせてはいけないし、カルテ室まで案内してくれればいいのだけど。


「ぼく……。可哀想だけど……。そういうのは大人やお医者さんに任せた方が……」


マスクをした看護婦さんは、俯きかげんに同情してくれている。


額の広い看護婦さんだった。目を細めているから、ぼくのことを考えているのだろう。


「看護婦さん。お願い……。看護婦さんも大人だし……」


看護婦さんは、上を向いて、逡巡する。


「例外……よね。患者第一だし……」


上を向いているから、表情はわからない。


「お願い。明日だと、より気分が悪くなっているよ」


ぼくは無理に明るく言った。

体の感覚が変だ。


「そうね。じゃあ、ぼく。地下一階のカルテ室まで行くわ。お父さんはロビーで寝ているのね。今の時間はお医者さんたちは、救急外来にしかいないの。ナースステーションには、看護婦さんは私を含めて二人だけ。先輩に見つかる前に戻ろうね」

白いスープと死者の街

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