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「どうです、そろそろ酔いが覚めましたか?」

ベットに横になったままの私を見下ろす川本さん。


「私をどうするつもり?」

お酒に混ぜられた薬のせいで体こそ動かないが、声は出せる。


少しだけアルコールの抜けた私は川本さんに話しかけた。


「あなたを滅茶苦茶にしてやりたいんです。うちの会社はあなたに潰されたようなものですから」


そんな・・・。

それは完全な逆恨み。


「こんな事をすれば、事態がさらに悪化するだけでしょう?」

「わかっています。でも、あなたが許せない。あの部長が悪い奴なのも、それを止められなかったうちの会社に責任があるのもわかってはいるんです。でも、だからといって、取引先に手を回すようなやり方って、あんまりです」


言いながら、川本さんは泣いていた。


「ごめんなさい」


私は今、ここで謝るべきではないと思うけれど、彼の気持ちもわかってしまった。

彼の身に起きたようなことが、最近うちの会社でも起きたから。


ん?

って事は、今回の件って・・・

海山商事は規模こそ大きくないけれど、歴史のある老舗企業。取引先だって古くからの付き合い。

そこの間に入って手を回すようなことが、うちの会社にできたんだろうか?

いや、無理だな。と言うことは・・・


***


「鈴木さん、そろそろ諦めて下さい。あなたに恨みはありませんが、僕は今夜あなたを抱きます。そうしなくては気が収まりませんから」


ギシッ。

ベットがきしみ、川本さんが私に覆い被さった。


「や、止めてっ」

必死に声を出すけれど、当然誰も来てはくれない。


ビリッ。

着ていたブラウスが破れる。


「お願い止めて。こんなことしても」

誰の得にもならない。そう言いたいのに、唇を塞がれて声に出せない。


ただ涙だけが流れた。


パサッ。

ビリッ。

脱がされたスカートが床に落とされ、ストッキングの破かれる音。


もうダメ。

私はこのまま襲われてしまう。

もう2度と鷹文に会えなくなる。

その時、

ドンドンドン。

乱暴ににドアが叩かれる音がした。


川本さんの動きが止る。


ドンドンドン。

再びドアが叩かれて、


「ったく、誰だよ」


不機嫌そうに体を起こした瞬間、

バンッ。

ドアを蹴破る大きな音と共に、誰かが部屋に入ってきた。


「一華」

それは今一番聞きたかった声。


「タカフミー」

涙でボロボロになりながら、私も名前を呼んだ。


「お、おまえ」

ベットまで駆け寄って来た鷹文が唸った。


次に聞こえてきたのは、

バンッ、ドスッ、バッコンッ。

おそらく川本さんを殴る音。

私には見えなかったけれど、きっとそうだ。


しばらくして、

「鷹文さんもう」

男性の止める声が聞こえた。


「一華。ごめん」


もう一度私の元へ来ると、シーツで私を包みそっと抱いてくれた。


「私こそ・・・ごめん」

涙が止らなくて、それ以上は言葉にならない。


「もう良いから、目をつむっていろ。俺が側にいるから、もう大丈夫だからな」

「うん」


そっと目を閉じると、張り詰めていたものが緩んで、私はそのまま気を失ってしまった。

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