テラーノベル
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「静かな声を、あなたは拾ってくれた」
人前で話すことが苦手だった。
言葉が喉まで来ても、飲み込んでしまう。
何かを頼まれても「大丈夫です」と笑ってしまい、本当は困っていても誰にも言えない。
そんなあなたは、ある日、書庫で一冊の本を落としてしまった。
「失礼。」
静かな声とともに、本が拾い上げられる。
白い手袋をはめた指先が、丁寧に埃を払ってからあなたへ差し出した。
「ありがとうございます……。」
かろうじてそれだけ言うと、俯いて本を受け取る。
相手は少しだけ微笑んだ。
「そんなに緊張しなくても構いません。私はあなたを責めるつもりはありませんから。」
穏やかな声音だった。
顔を上げると、柔らかな笑みを浮かべた青年と目が合う。
それが、サンデーとの最初の出会いだった。
⸻
それ以来、不思議と書庫へ行くたびに彼と顔を合わせるようになった。
「また会いましたね。」
「……はい。」
会話はいつも短い。
あなたは話題を探すことが苦手で、沈黙になるたびに「何か失礼なことをしてしまっただろうか」と不安になる。
しかしサンデーは、その沈黙を気まずそうにはしなかった。
同じ空間で本を読み、時折おすすめの本を教えてくれる。
「この物語は、人の弱さを優しく描いています。あなたなら気に入るかもしれません。」
自分の好みを覚えてくれていることに、胸が少しだけ温かくなった。
⸻
ある日、あなたは廊下で数人に強く意見を求められていた。
言葉が出ない。
焦るほど、何も言えなくなる。
「……あの、私は……」
声が震えた、その時。
「彼女は少し考える時間が必要なようです。」
聞き慣れた声が響いた。
サンデーだった。
彼は穏やかな笑みを崩さないまま、その場を自然に収める。
誰かを責めることもなく、場の空気だけを静かに変えてしまった。
人が去ったあと、あなたは何度も頭を下げた。
「すみません……迷惑を……。」
「迷惑?」
サンデーは少しだけ首を傾げる。
「困っている人を助けることを、私は迷惑だとは思いません。」
その言葉に、思わず目頭が熱くなる。
「でも、私は……何も言えなくて……。」
「言葉は多ければ良いというものではありません。」
彼はあなたの目をまっすぐ見つめた。
「あなたは誰かの話を最後まで聞ける人です。焦って話さず、相手を否定せず、静かに受け止められる。」
「それは、とても得難い長所ですよ。」
誰かにそんなふうに言われたのは初めてだった。
⸻
それから少しずつ、あなたは彼の隣で笑えるようになった。
相変わらず言葉は少ない。
けれど沈黙は怖くなくなった。
ある夕暮れ。
窓から差し込む光の中で、サンデーは本を閉じてあなたを見る。
「最初に会った頃のあなたは、私を見るたびに逃げてしまうのではないかと思っていました。」
「そ、そんなことは……少しだけ、ありました……。」
正直に答えると、彼は小さく笑う。
「では今は?」
あなたは少しだけ勇気を出して、彼の隣へ一歩近づいた。
「……今は。」
深呼吸をひとつ。
「会えると、うれしいです。」
その一言だけで精いっぱいだった。
けれどサンデーは、まるでその言葉を何より大切な贈り物のように受け止める。
「それは光栄ですね。」
彼は穏やかに微笑む。
「実は私も、あなたと過ごす静かな時間を楽しみにしていました。」
優しい風がページをめくる。
多くを語らなくても伝わる想いが、そこにはあった。
あなたの小さな勇気を、彼は誰よりも大切に受け止めてくれる。
そんな日々の積み重ねが、二人の始まりになった。
#夢小説
コメント
1件
え〜〜っ、もうめっちゃ良かった!!😭💕🌸 「言葉は多ければ良いというものではない」ってセリフ、心にズドンと刺さった…。主人公が「会えるとうれしいです」って勇気出して言えたシーン、こっちまで涙出そうになったよ。静かで優しい世界観なのに、全然退屈じゃなくて、むしろずっと浸っていたくなる感じ…。無花果澤ゆゆさんの紡ぐ空気感、大好きです!!続き早く読みたい〜!📖✨