テラーノベル
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ピノコニーの夜は、相変わらず夢のようだった。
街を彩る光が水面に映り、音楽が遠くから静かに流れてくる。
「お待たせしました。」
約束の広場に着くと、サンデーが穏やかに微笑んだ。
「いえ、私も今来たところです。」
「それなら安心しました。」
並んで歩き始めると、不思議と沈黙が苦にならない。
以前なら、どちらかが気を遣って言葉を探していた。
今はただ、隣にいる時間そのものが心地よかった。
「今日は、何か見たいものはありますか。」
「サンデー様とご一緒できるのでしたら、どこでも構いません。」
答えた瞬間、自分でも少し恥ずかしくなる。
「……失礼いたしました。少し言い方が……。」
言い直そうとすると、サンデーが小さく首を振った。
「いいえ。」
彼は少し照れたように目を伏せる。
「その言葉は……嬉しかったですよ。」
その穏やかな笑みに、胸が熱くなる。
二人は夢境のマーケットを歩き、小さな露店を眺めた。
色鮮やかな夢泡細工や、星を閉じ込めたような硝子細工。
あなたが一つの羽根飾りを見つめていると、サンデーも隣へ来る。
「お気に召しましたか。」
「はい、とても綺麗です。」
「あなたによく似合いそうですね。」
思わず目を丸くする。
「私、ですか?」
「ええ。」
彼は店主へ軽く会釈すると、その羽根飾りを受け取った。
「もしご迷惑でなければ、受け取っていただけますか。」
「ですが、このようなものをいただく理由が……。」
「理由がなければ、贈ってはいけませんか。」
柔らかな声だった。
けれど、その瞳は真っ直ぐこちらを見つめている。
あなたは少しだけ俯き、小さく笑った。
「……ありがとうございます。大切にいたします。」
「それを聞けて安心しました。」
歩き続けるうち、人混みが少しずつ増えてくる。
前から駆けてきた子どもたちにぶつかりそうになった、その瞬間だった。
「失礼します。」
サンデーがそっとあなたの手首に触れ、自分のほうへ引き寄せる。
距離が、一歩だけ近づく。
「あ……。」
見上げると、彼も少しだけ困ったように笑っていた。
「申し訳ありません。咄嗟に。」
「い、いえ……助けていただき、ありがとうございました。」
彼はすぐに手を離した。
けれど、離れたはずの温もりだけが残っている。
しばらく歩いていると、サンデーが静かに口を開いた。
「……先ほどは失礼しました。」
「謝るようなことではございません。」
「ですが、あなたを驚かせてしまいました。」
少し考えたあと、あなたは微笑む。
「少し驚きました。」
「やはり。」
「ですが……嫌ではありませんでした。」
その言葉に、サンデーが足を止める。
驚いたような表情は一瞬だけ。
すぐに穏やかな笑みに戻った。
「それを聞いて、安心しました。」
二人は観覧車へ向かう。
頂上近くまで昇ると、街の灯りが星空と溶け合っていた。
「綺麗ですね。」
「ええ。」
しばらく景色を眺めたあと、サンデーが静かに言う。
「最近、考えることがあります。」
「どのようなことでしょうか。」
「以前の私は、人との距離を測ることには慣れていたつもりでした。」
彼は少しだけ笑う。
「ですが、あなたの前では、その距離が分からなくなることがあります。」
思わず息をのむ。
「近づきたいと思う反面、それがあなたの負担にならないかと考えてしまうのです。」
その誠実な言葉に、胸が締めつけられる。
「サンデー様。」
あなたは勇気を出して口を開いた。
「もし私が負担に感じておりましたら、このように何度もご一緒したいとは申しません。」
彼は静かにあなたを見つめる。
「それに……。」
少しだけ照れながら続ける。
「今日もお誘いいただけて、とても嬉しかったです。」
サンデーは目を細め、小さく笑った。
「そのお言葉だけで、今日は十分報われました。」
観覧車がゆっくりと地上へ降りていく。
降り際、人混みへ向かう前に彼がそっと手を差し出した。
「人が多いので。」
理由は、それだけ。
けれど二人とも、本当はそれだけではないことに気づいていた。
あなたは少しだけ迷い、そっとその手を重ねる。
指先が触れ合う。
恋人と呼ぶにはまだ少し遠い。
それでも、この手を離したくないと思う気持ちは、お互いに隠しきれなかった。
夢の街の灯りは、そんな二人を優しく包み込んでいた。
#夢小説
コメント
1件
いやー、もう最高でした!観覧車のシーンで「その距離が分からなくなる」ってサンデー様が素直に言っちゃうとこ、グッときましたね。手首つかんで引き寄せた後の慌てたフォローとか、距離詰めたいけど相手を想って慎重になる感じがじんわり伝わってきて…。ラストの手を重ねるところでじんわり涙腺来ました。ピノコニーの夜景も相まって、ロマンチックすぎる🔥