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「失礼だな西野。由梨はもともと可愛かったんだよ」
「ああ、すまんすまん。恋は盲目ってやつだな」
「だからそれが失礼なんだよ」
同級生と軽口をたたき合う倫之と、まだ顔の熱さが去らない私はそれぞれに、いつから付き合ってるのとか結婚は考えてるのとか、あれこれ質問攻めにされた。
ほとんどは聞かれそうだと思って答えを用意していた内容だったので、どうにかそつなく返せたと思う。
そんな質問タイムが一段落ついた頃。
「悪い、ちょっとここで席外すな」
「えーっ?」
「由梨の友達にも挨拶したいから、三組の方行ってくる」
倫之の説明に、なるほどというふうに皆がうなずく。
……いや、一部から、というか泉谷さんからは、じっとりした妬みの視線を、ずっと向けられていた。
きっと会の間に倫之を誘って、後で飲みに行こうとか画策していたんだろう。心の中でごめんなさいとつぶやきつつ、その場を離れる倫之についていく──正しく言えば、いまだ離れない肩を抱く彼の手に、半ば強引に引きずられるように。
その後、たどり着いた三年三組の同級生が集まるテーブルでも、倫之の宣言に皆が驚き、ひとしきり質問攻めにされる、という一幕が繰り広げられたのだった。
同窓会から、早や三ヶ月が過ぎた。
季節はすっかり夏を迎えて、連日、最高気温三十五度前後の暑い毎日だ。
そんな中、私は、暑さのせいだけではなく汗をかく日々を過ごしている。
『それで、結婚はいつになるの?』
受話スピーカーから聞こえる母の声に、私はため息をつきつつ決まり切った答えを返す。これで何度目だろう。
「だから、そういうことはまだはっきり考えてないって」
『のんきなこと言ってる場合じゃないでしょ、由梨。あんたもう三十三なのよ』
母の切り返しも、聞くのは何度目だろうか。ここ二ヶ月ほどの間に、飽きるほどに繰り返されたやり取りである。すでに数えることを放棄して久しい。
『あちらのご両親だって楽しみにしてるんだから。お互い、孫の顔ぐらいちゃんと見たいって』
「孫ならもういるでしょ。沙耶香ちゃんとこと、洋海のとこに」
倫之の妹と、私の弟はそれぞれ数年前に結婚して、とっくに子持ちだ。
『わかってないわね。最初の子の結婚ってのは、親にとっては感慨深さが違うものなのよ』
「……そうなの?」