テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
宮舘の、初めて見る弱々しい姿。潤んだ瞳。その全てが、渡辺の胸をナイフのように抉った。
(やだ…)
(やだ、やだ、やだ…!!こんな顔、させたいわけじゃないのに…!)
(ごめん、涼太…ごめん、ごめんなさい…!)
心の中では、後悔と謝罪の嵐が吹き荒れている。今すぐ、この手を離して、抱きしめて、謝りたい。なのに。
なのに、プライドと、素直になれない子供じみた自分が、それを許さない。必死で本心を隠そうとして、渡辺の口から飛び出したのは、今、この世で一番、宮舘涼太に言ってはいけない、残酷な言葉だった。
「…うるせぇな」
その声は、自分でも驚くほど冷たく、乾いていた。
「お前が、どんな気持ちで俺のこと見てようが…俺には、関係ないだろ」
宮舘の瞳が、絶望に見開かれる。
「俺が誰と話そうが、誰と笑い合おうが、それは俺の勝手だ。お前は、ただのメンバーの一人だろ。いつまでも、幼馴染ヅラしてんじゃねぇよ」
言った。
言ってしまった。
世界から、音が消えた。
宮舘の顔から、すっと表情が抜け落ちる。潤んでいたはずの瞳は、まるでガラス玉のように光を失い、掴まれていた胸ぐらを、力なく振り払った。その手は、もう渡辺に触れてはいない。
(違う…)
渡辺の心臓が、氷のように冷えていく。
(違う、違う、違うんだ、涼太…!!)
心の叫びは、もう声にはならない。目の前で、自分にとって一番大切な存在が、自分の言葉によって、壊れていく。その光景を、ただ、見ていることしかできなかった。
コメント
1件