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世界から音が消えたような、長い長い沈黙。
それを破ったのは、宮舘だった。その声は、感情というものが全て抜け落ちた、ただの音の羅列のようだった。
「…そっか」
宮舘は、力なく笑った。それは、今まで渡辺が見た中で、一番悲しい笑顔だった。
「俺って、そういうふうに、思われてたんだな…」
その言葉が、渡辺の胸に突き刺さる。違う、と叫びたいのに、声が出ない。心の中で自分を責め続けているうちに、宮舘は、まるで自分に言い聞かせるかのように、言葉を続けた。
「ごめんな?翔太。…そうだよな。俺…勝手に、いい気になってたみたいだ」
その声は、驚くほど冷静だった。さっきまでの潤んだ瞳はどこにもない。そこにあるのは、全てを諦めてしまったかのような、深い凪いだ瞳だけ。
そして、宮舘は、ビジネスパートナーに向けるような、完璧で、そして残酷な表情を作った。
「でも、メンバーとして、まだまだやらなきゃいけないこと、たくさんあるだろ?それだけは、やってくれ」
淡々と、言葉を並べていく。
「プライベートでは、もう関わらなくていいから」
それは、今まで二人が築き上げてきた、何十年もの歴史の、完全な終わりを告げる言葉だった。
(プライベートでは、関わらない…?)
渡辺は、その言葉の意味を、すぐには理解できなかった。それは、あまりにも現実味がなくて、まるで悪い夢を見ているかのようだった。
「…じゃ、俺、先に着替えてるから」
宮舘は、渡辺に背を向けると、自分のロッカーへと歩いていく。その背中は、もう二度と、こちらを振り返らないという、固い決意に満ちているように見えた。