コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ある病院の待合室
数人の人がある医師からの説明を受けていた。年齢がバラバラで、面識がない者達ばかり。
ある意味初対面で、とある行事に共に身を投じることとなっただけの間柄。
「説明は以上です。なにか質問は?」
『……。』
「無いようなので、皆さんは検査着に着替えてきてください。」
5人の人が着替えるため席を立ち移動を始めた。しかし、座ったまま動かない少女が1人。そんな少女に医師は近寄る。
「どうかしましたか?」
「! いえ。」
「そうですか。それなら良いのですが。逃げ出さないでくださいね。」
最後の言葉を少女の耳元で言う医師の口許は歪んでおり、その表情は正気とは思えない。
「っ!?」
「では、お早めに戻ってきてくださいね。」
医師はそう言って立ち去ったが、少女は震えたまま少しの間立ち竦んだ。
検査着に着替え、待合室に戻ってきた5人の人が再び席につく。
「では、改めて。本日は当院のボランティア(企画)に参加頂き感謝します。」
「んなことはどうでもいい。さっさと始めよーぜ。」
「ボランティアっていっても礼金出るってほんと~?」
「えぇ、勿論。」
「ならいーけどさ。」
「ふふ。そうですね。では、待ちきれない人もいるようなので始めましょうか。」
医師がそう言うと
「では、最初は貴方にお願いします。」
「やっとかよ。」
医師の言葉を遮り、催促した青年が連れていかれた。
青年が扉の向こうに連れていかれ、少しすると、
「ギャァァァァァァァ!!!!!」
凄まじい叫び声が残った4人の耳に届く。
「な、なに!?」
「何が起こって……!?」
2人が席を立ち、青年が連れていかれた扉の向こうを凝視する。
唐突に開かれた扉。
そこにいたのは済ました雰囲気の医師。
「さあ、次はあなたの番ですよ。」
そう言って先程青年と共に言葉を遮り、礼金の心配をしていた女性。
「あんたね!なにやったのよ!」
「さぁ、こちらへ」
女性の言葉を無視して医師は催促する。
「なにやったの!答えなさいよ!」
女性はその場から動かず医師を睨み付ける。
「……仕方ありませんね。」
そう言った医師は近くにいた白衣の人間達に何かを言った。
「な、何すんのよ!離しなさいよ!」
女性は強制的に扉の向こうに連れていかれ、少しすると青年と同じように叫び声が聞こえた。
残った3人は恐怖に震えるしか出来ない。
扉が開く。
ビクリ
と、体を固まらせる3人はゆっくりと扉の方を見る。
そこにいるのはやはり医師の人。
にっこりと笑って
「次はあなたの番ですよ。」
と男性の肩に手を置く。
「ひっ!?あ、あいつらをさきにやれよ!」
「順番は変わりません。さ、お早く。」
「ふ、ふざけんじゃねー!俺は金をもらいに来たんだ!」
「えぇ、ですから。無事に終わったら礼金をお渡ししますよ。……無事に終わったらね。」
「や、やめっ! たすけっ……。」
男性の情けない声が待合室に木霊する。
他の人に向かって伸ばされた手は白衣の人間達に阻まれ、扉の向こうに連れていかれた。
「わ、私帰る!」
震えた声で大学生くらいの女性が立ち上がる。
「帰るってどうやって?」
座ったままで中学生くらいの少女は女性に問う。
「何とかなる。とりあえず帰るって伝えないと!」
このままじゃ……。と女性は最悪の未来を想像したのだろう。震えた体を抱き締めるようにした。
その時
「ギャァァァァァァァ!!!!!」
先程の男性の叫び声が響き渡る。
「「!?」」
2人して扉を凝視する。その表情は段々と恐怖に彩られ
「も、もういや……!」
体に力が入らないのだろう、座り込んだまま動かなくなってしまう。
肩が震えていることから泣いているのだろうと予測できる。
扉が開く。
2人は震えたまま扉の向こうから現れた医師を見る。
「か、帰らせてください。」
女性が医師に訴える。
「おや?帰りたいのですか?」
医師は首を傾け不思議そうに問う。
「あ、当たり前じゃない!こんなところにいたくない!帰らせて!」
女性は医師に掴みかかる。先程まで動けなかったとは思えぬほど素早い動きだった。
「それは困りましたね。」
声のトーンも雰囲気も変わらないままに医師は言う。
「え?」
「貴女方は帰れませんよ。少なくともコレが終わるまではね。」
「そ、んな。」
女性から力が抜けたのを見て
「さぁ、行きましょうか。あなたの番ですよ。」
「ひっ!? い、いやぁぁぁぁぁ!!」
女性を引きずるようにして扉の向こうに消えた。
残った1人は呆然としながら扉を見ている。
「帰れないの?」
その言葉は絶望を含んでいて
先程連れていかれた女性の断末魔を聞きながら
「あーコレ知ってる。見覚えあるわぁ。」
私は呟く。
扉が開き、抵抗すら出来ない少女が連れていかれた。
その際、医師に
「次は貴女ですね。」
と微笑まれた。