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〜沙依夏〜 高校も終わり、最寄りを降りて家に向かう途中。何か事件が起こったらしい。警察がうろついている。ここではある問題が起こっていた。なんでも被害者が全員、童話の登場人物と酷似した死に方をしているという殺人事件が連発しているのだ。人が童話の登場人物のような死に方をするなんてあり得ない。そういえばそんな投稿を少し前に見た気がする。にわかには信じ難いが。聞き込みを続けているとある少年に出会った。背丈から想像するに、年は同じか少し上くらいの子だろう。こっちに恐怖に包まれたような顔で向かってきた。助けを求めている……?
「……助けて」
「え?」
聞き込みに付き合ってくれた警察に助けてもらいながら急いで路地裏に身を隠す。落ち着かせる必要がある。鎮まりたまえ。やっと話を聞くことができた。どうやら件の殺人事件の犯人であろうそいつが目の前で現れたのだという。
「恐ろしい。あーえっと……貴方、名前は?」
「朝顔麟……です……。えっと、君は?」
「聖沙依夏。沙依夏でいいよ」
「じゃあ僕のことは麟って呼んでよ」
「分かった。それで犯人はどんな姿をしてたの?」
「ピノキオみたいな面してた」
犯人であろうそいつがいて当然の権利と言わんばかりに血に塗れていたそうだ。ピノキオはなんとなく聞いたことがある。嘘をつくと鼻が伸びる。そして正直に生きることを決意した彼がやがて人になっていく物語。実に教育的は話。でもたまにこう思うことが私にはある。嘘をつけるのは人間だからこそじゃ? 意見と情報だけで世界が回るのなら、人は童話を必要としなかったはずだ。最初に嘘をついたのは誰なのだろう。
〜麟〜
正式なタイトルは『ピノッキオの冒険』。実はピノッキオは丸太の頃から喋れたんだよ。アントニオっていう大工に拾われて、大層驚かれた。アントニオとジェペット爺さんが喧嘩になるように仕向けたり。ピノッキオもなかなかのクソガキでね。手をつけてもらったらジェペット爺さんのカツラをパクるわ、ついには足をつけてもらったら逃げ出すわで。そして立ち会った巡査はジェペット爺さんが虐待してるものだと思って逮捕するんだよ。そこに帰ってきたピノッキオを待っていたのはその家に一〇〇年あまり住んでいたというものをいうコオロギ。そしてそんなことを続けていると遅かれ早かれ後悔するぞと忠告を受ける。そんなコオロギの話を真面目にピノッキオが聞くはずもなく……説教が続くうちに頭まで木でできていると言われ……ピノッキオは怒ってコオロギに木槌を投げて殺してしまう。あえて擁護するならピノッキオに殺意はなく、当たったのは運が悪かったからでしかない。その後お腹が空いてきたピノッキオは食べ物を探してあちこちを回るけれどある家のおじいさんに呼び鈴を鳴らして面白がるアレだと思われて洗面器で水をぶっかけられて乾かそうとして火鉢の上で寝てしまう。
「そんなところで寝たら……」
ジェペット爺さんが戸を叩く音で目を覚ました頃にはもう足がなくなっていた。爺さんから梨と新しい足をもらってやっと反省したピノッキオは学校へ行くことになる。お金がないからジェペット爺さんは上着を売って教科書を買ってあげた。上着は暑いから売ったってね。次の日ピノッキオは人形芝居が見たいがために学校は明日から頑張ろうと教科書を売る。
「おいっ!」
人形たちがピノッキオに気づいてあんまり騒ぐもんだから人形つかいの火食い親方に火にくべられそうになる。死にたくないともがき回るピノッキオに親方は……だんだん可哀想に思えてきた。親方はピノッキオを帰して(本人のためというより帰りを待っているジェペット爺さんのために)他の人形を火にくべることにした。他の人形が身代わりになるのは嫌だからやっぱり自分がいくというピノッキオに親方は……感激した。火は諦めるからもう二度とするなって誰も犠牲にならずに済んだんだ。
「心の綺麗な親方だな!」
「ちなみに親方はだんなさまとか騎士どのとか大将さまとかって呼ぶとそんなのいない!っていうのに殿下って呼ぶと秒で機嫌を良くする」
「何で?」
その帰りにピノッキオの前に現れたのは狐と猫。金貨を持っていたピノッキオにもっと金貨を増やす方法があると持ちかける。狐と猫曰く奇跡が原っていうのがあってそこに金貨を埋めて泉の水と塩をやるっていうのがやり方なのね。金貨が木にたわわとなるとか。完全に詐欺の手口だけれど、ピノッキオは乗ってしまう。それで一匹と一匹と一体で近くの宿屋で泊まることになった。しかし時間になると狐と猫はいなくなっていた。ピノッキオがコオロギの亡霊の忠告も聞かず野原まで追いかけに行くと、二人の追い剥ぎが。まあお察しのとおりこの追い剥ぎ二人は狐と猫なんだよね。追いかけっこはかーなーり続いてピノッキオが辿り着いた先は真っ白なかわいい家。戸を叩いていると、窓にルリ色の髪で白い肌の少女がいた。助けを求めるピノッキオに少女は私はもう死んでいるからできることは何もないと消えてしまう。実は彼女は自分のお棺を待ってたんだね。そしてピノッキオは追い剥ぎに捕まって首に縄をかけられて木の枝にぶら下げられてジェペット爺さんが来てくれたらいいのにと思いながらしびれたようになっていった……という結末。
〜沙依夏〜
「そして結末が残酷すぎるとして色々と続編が描かれた。ピノッキオは過ちと更生を繰り返して人間になっていくんだ」
なるほど。
「あ、そうだ。お礼が遅れちゃったね。おかげで命を救われることになった。ありがとう。沙依夏」
「いえいえ」
ここまで近くまで来られて放っておくわけにはいかない。そういえばこの連続殺人事件には必ず被害者の近くに元になったであろう童話があったらしい。もしかして麟が立ち会ってしまったそいつがもう人を殺してしまっていたらピノッキオの本が落ちていたりするのだろうか。つまり被害者たちはその本の犠牲になってしまった。確か聞いたことがある。この辺りには魔の本と呼ばれている本がある。どこで扱われているのかは分からない。調べてみる必要がある。