テラーノベル
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外に出てみると、やはり白河先生の車だった。
先生がおりてくると、「やっぱり…駄目だった…。ごめん…」と言ってきた。
私は、「良いよ。全然気にしてないから。」と言った。
家に入り、じっくりと話を聞いた。
やはり嫌なことを言われたり、されたりしたらしい。
朝、職員室に入った時の他の先生の目線。
生徒達からの悪口黒板メッセージなど…。
先生は涙を浮かべながら話していた。
私は「頑張ったね。」と褒めた。
白河先生は「ありがとう。凛さん」と言ってくれた。
先生は少し微笑んだ。
多分、私が褒めたからかな?
その次の日からは、夏休みに入った。
私たちは、かき氷を作ったり、素麺流しをしたり、旅行に行ったりと沢山楽しんだ。
8月の下旬。
私たちは浴衣を着て、祭り(花火大会)に行ってきた。
屋台が沢山出ていた。
「どれでも良いよ。凛さんが欲しいものを欲しいだけ買っていいからね!」と先生は言った。
私は、大好きな肉巻きおにぎりとたこ焼き、りんご飴を買った。
白河先生は、焼きそばといちご飴、私と一緒に食べるためのポテトを買っていた。
やはり先生はにこにこしていて、楽しそうだった。
その後に、私たちは金魚すくいをした。
私は全然すくえなったけど、白河先生は3匹もすくってくれた。
私が「凄い!!」と言うと、先生は「ふふっ!」と言い笑っていた。
そして花火を見た。
とても美しく、綺麗だった。
私と先生のひと夏の新しい思い出が出来た。
そして始業式の日。
先生は暗い顔をしながらカッターシャツへ着替えていた。
「大丈夫…?本当に」と私が言う。
「うん…大丈夫…」と先生はボソッと言った。
ずっと暗く、笑顔の時と真逆だった。
私はどうしても先生を笑顔にさせたい。
だって…人にとって「笑顔」は、一番素敵に輝ける瞬間だと私は思うから。
先生が玄関を出る前に「白河先生の夢ってなに?」と聞いた。
「夢…か…。」
「無い…?」
それが、先生の答えであり、夢だった。
先生はそう言うと、私に手を少し遠慮気味に振り、出ていった。
私は、先生の夢を叶えてあげたいし、全力で応援しようと思った。
その日の夜。
先生が帰って来てからもっと詳しく話を聞いてみた。
「いや…実際は、学校に行けない子とかが行けるような小さな教室っていうか…学校を創りたいなって…」と先生は言った。
私は、「素敵…。その夢…叶えること…出来ないかな?」と言った。
「そうだね。叶えてみたいけど…。場所もないしなぁ…」
「確かにそうだな」と思った。
「ちなみに…凛さんの夢は?」と先生は聞いてきた。
いきなり聞いてくるので、ちょっと驚きながらも、「先生の夢を叶えること」と言った。
「そうなんだ。ありがとう。僕も凛さんと幸せになることも1つの夢だから」と答えてくれた。
でも、いきなり叶えることは難しい夢なので、とりあえず叶える前提で、私が成人(18歳)するまではそのままで居ようという話に結論づいた。
そして私は、通信制高校へ転校することにした。
白河先生はもちろん認めてくれた。
あとは、白河先生への嫌がらせの問題だ。
通信制高校へは、丁度10月に行われる後期の入学式で転入することにした。
しかし、その時期は、中学校の体育祭の時期と被さっている。
先生は、「休んででも、凛さんの入学式には行くからね。というか…休みたいし!」と笑いながら言った。
「そうやね。休んでほしいかも!」と私も口から出任せに言った。
そして、その3日後に中学校の体育祭の日にちが決まった。
白河先生が言うには、10月はじめの金曜日だった。
入学式はその次の日の土曜日ということだった。
「とりあえず被らなくて良かったね〜!」と2人で同時に言い、笑いながら胸を撫で下ろした。
「最近は…どう?」と私は聞いた。
「まだまだ色々されてるよ…。でももう諦めた。もういいやって…」と先生は答えた。
そして先生は、1枚の紙を持ってきた。
「これは今日、生徒からもらったんだけど…ほら。」と先生が見せてきた。
その紙には、『教えるの下手だね。白河先生。だから不幸祝いの手紙でーす!』と書いてあった。
私は思わず、「何これ…」と言った。
「だから即捨てようかなと思ったけど、凛さんに状況を見てもらおうと思って…」と先生は言った。
「今年も、教職員リレーに出るから。出来れば…来てほしいな…」と恥ずかしそうに言ってきた。
教職員リレーとは、名前の通り、体育祭での学校の先生全員強制参加のリレー。
私は、「もちろん見に行くからね!!」と言った。
先生は「ありがとう!!本当に嬉しい!なんか元気をもらえた!」とめちゃめちゃ嬉しそうな顔で私を見つめて言ってくれた。
そして、10月初めの金曜日。
中学校の体育祭の日がやってきた。
コメント
2件
健気なひとほど悪い目に遭うけれどそれは払い除けることのできる問題だ!とふたりが教えてくれているみたいで、この作品から勇気をもらえます。