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女装男子は恋したい 番外編3
柔太朗の涙が落ちる。
勇斗の手はまだ離れない。
強く握ったまま。
「だから」
勇斗が言う。
「もう一回ちゃんと話せ」
逃げるな。
って目。
柔太朗は俯いたまま。
涙がぽたぽた落ちる。
「……無理」
小さな声。
勇斗の眉が少し動く。
「なんで」
柔太朗の肩が震える。
「だって」
言葉が詰まる。
「……はやと」
久しぶりに呼んだ名前。
勇斗の胸が少し痛む。
柔太朗がやっと顔を上げる。
目が真っ赤。
「俺さ」
笑おうとする。
でもうまくいかない。
「最初から嘘だらけだったじゃん」
勇斗は何も言わない。
ただ聞いてる。
柔太朗が続ける。
「女の子のフリして」
「名前も違って」
「全部騙して」
声が震える。
「そんなやつ」
小さく息を吸う。
「好きでいられるわけないじゃん」
勇斗の表情が少し変わる。
柔太朗は言葉を止めない。
止めたら泣きそうだから。
「はやとは」
「ありさが好きだったんだろ」
胸がぎゅっと痛む。
「でも」
「俺は柔太朗で」
「男で」
目を逸らす。
「もう別人じゃん」
静かな空気。
周りの学生が通るけど。
二人の世界だけ止まってる。
勇斗がやっと口を開く。
「一個いい?」
柔太朗は答えない。
でも聞いてる。
勇斗が少し息を吐く。
「確かにさ」
「最初」
苦笑する。
「女だと思ってた」
柔太朗の心臓がまた痛む。
勇斗が続ける。
「でも」
少し近づく。
柔太朗の目を見る。
「デートして」
「笑って」
「くだらない話して」
「一緒に飯食って」
声が少し低くなる。
「好きになったの」
間。
「お前だよ」
柔太朗の目が揺れる。
勇斗が言う。
「ありさって名前でも」
「男でも」
「柔太朗でも」
小さく肩をすくめる。
「正直わけわかんねぇ」
本音。
「でも」
もう一度言う。
「好きなのはお前」
柔太朗の喉が鳴る。
勇斗が少し笑う。
「だからさ」
「逃げんな」
柔太朗の手を引く。
少しだけ。
距離が近くなる。
「怖いのは」
「俺も一緒」
柔太朗の目からまた涙が落ちる。
「……ほんと?」
震える声。
勇斗が頷く。
「ほんと」
柔太朗が小さく言う。
「でも」
勇斗
「ん?」
柔太朗
「俺」
少し息を吸う。
「もうありさじゃないよ」
沈黙。
勇斗が答える。
「知ってる」
柔太朗
「スカートも履かないし」
勇斗
「うん」
柔太朗
「声も低いし」
勇斗
「うん」
柔太朗
「男だよ」
勇斗は数秒見つめる。
それから。
少しだけ笑う。
「うん」
そして言う。
「柔太朗じゃん」
その言葉で。
柔太朗の涙が止まらなくなる。
勇斗が困った顔する。
「そんな泣く?」
柔太朗
「だって…」
声がぐちゃぐちゃ。
勇斗が小さくため息。
そして。
手を引く。
柔太朗
「え」
勇斗
「とりあえず」
歩き出す。
「飯行くぞ」
柔太朗
「え?」
勇斗
「3日逃げた罰」
少し笑う。
「全部聞く」
柔太朗の胸が熱くなる。
勇斗が振り返る。
「ありさの話も」
少し間。
「柔太朗の話も」
まっすぐ。
「全部」
柔太朗は数秒黙る。
それから。
小さく頷く。
「……うん」
二人が歩き出す。
まだぎこちない距離。
でも。
完全には離れてない。
コメント
2件
『完全には離れていない。』⇦表現が好きすぎる、、💓
