コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
僕の名前は大輝。ごく普通の小学生 とは少し違うかもしれないその理由は……
第一章 ごく普通の少年?大輝
大輝(だいき)は、ごく普通の小学校に通う小学五年生。…と見せかけて、実は全国でも知る人ぞ知る将棋の天才少年だった。
将棋の駒を握りしめたのは、まだ保育園の年長さんだったころ。おじいちゃんの家で「ヒマつぶし」に始めた将棋が、まさか自分の才能を開花させるなんて、そのときは誰も思っていなかった。
小学校に入るころには、地元の将棋大会で連戦連勝。三年生で県大会を制し、四年生の終わりには「小学生名人戦」で準優勝。今や「将棋界のスーパー小学生」として、プロの間でもその名が知られるほどだった。
でも、大輝は自分のことを「ただの将棋好きな小学生」だと思っていた。ある日の放課後、大輝は学校の図書室で一人、本棚のすみっこにある将棋の本を読んでいた。
「うーん…この詰み筋、ちょっと違うんじゃないかな…」
つぶやく大輝に、クラスメイトの翔太が声をかけた。
「おい、大輝!また将棋かよ!お前、どんだけハマってんだよ!」
「えー?だって将棋って、無限に面白いじゃん?毎回ちがう局面、ちがう作戦…。最高だよ!」
翔太はちょっと笑いながら、「変わってんなー」と言って教室に戻っていった。
でもそのとき、図書室の入り口にひとりの大人が立っていた。
黒いスーツに、真剣なまなざし。どこかで見たことがある気がする…。
「君が、大輝くんかね?」
「…はい?」
「私は、日本将棋連盟の者だ。君に、ある提案があるんだ。——プロの棋士と、特別対局してみないか?
大輝(だいき)は、ごく普通の小学校に通う小学五年生。…と見せかけて、実は全国でも知る人ぞ知る将棋の天才少年だった。
将棋の駒を握りしめたのは、まだ保育園の年長さんだったころ。おじいちゃんの家で「ヒマつぶし」に始めた将棋が、まさか自分の才能を開花させるなんて、そのときは誰も思っていなかった。
小学校に入るころには、地元の将棋大会で連戦連勝。三年生で県大会を制し、四年生の終わりには「小学生名人戦」で準優勝。今や「将棋界のスーパー小学生」として、プロの間でもその名が知られるほどだった。
でも、大輝は自分のことを「ただの将棋好きな小学生」だと思っていた。
第二章 天才の力を発揮するとき
ある日の放課後、大輝は学校の図書室で一人、本棚のすみっこにある将棋の本を読んでいた。
「うーん…この詰み筋、ちょっと違うんじゃないかな…」
つぶやく大輝に、クラスメイトの翔太が声をかけた。
「おい、大輝!また将棋かよ!お前、どんだけハマってんだよ!」
「えー?だって将棋って、無限に面白いじゃん?毎回ちがう局面、ちがう作戦…。最高だよ!」
翔太はちょっと笑いながら、「変わってんなー」と言って教室に戻っていった。
でもそのとき、図書室の入り口にひとりの大人が立っていた。
黒いスーツに、真剣なまなざし。どこかで見たことがある気がする…。
「君が、大輝くんかね?」
「…はい?」
「私は、日本将棋連盟の者だ。君に、ある提案があるんだ。——プロの棋士と、特別対局してみないないかい?
図書室の静けさが、一瞬にしてピリッと張りつめた。
「プロ棋士と…対局?」
大輝は目を見開いた。まさかこんな場所で、そんな誘いを受けるなんて思ってもみなかった。
「失礼、名乗っていなかったね。私は川村六段。プロ棋士だ。君の噂を聞いてね、今日はわざわざ見に来たんだよ。」
大輝は思わず立ち上がった。
川村六段――テレビで何度も見たことがある、あの人だ。鋭い読みと大胆な攻めで知られる中堅の実力派プロ。そんな人が、なんで自分に?
「どうして…僕と指したいんですか?」
川村六段は、少し笑って答えた。
「実は、近々プロ棋士と若手有望棋士のエキシビションマッチが開かれる。そのメンバーの中に、“特別ゲスト枠”として君の名前が推薦されたんだ。」
「推薦…?」
「そう。君の棋譜を見たよ。正直、驚いた。これはもう“子どもの遊び”の域を超えている。本気でぶつかってみたくなったんだ。」
大輝は心の中で、心臓がドクドクと鳴るのを感じた。
わくわく、ぞくぞく、少しの不安。でも、それよりも――
「やります。」
大輝の声は、はっきりとしていた。
「プロがどれだけすごいのか、知りたいんです。僕が、どこまで通用するかも。」
川村六段は満足そうにうなずいた。
「いい返事だ。じゃあ、来週の土曜日、銀座の将棋会館で待っているよ。対局は持ち時間30分、切れたら一手30秒の早指しルールだ。」
「分かりました!」
その瞬間から、大輝の一週間はまるで戦いのようだった。
帰宅後、大輝は自室の将棋盤を広げると、さっそく準備に取りかかった。自分の得意戦法、相手の棋風、これまでの棋譜分析――。
「川村六段は、相掛かりを得意としてる。なら、こっちは…新型の矢倉でいくか?」
指を組み、盤面を見つめ、まるで千手先まで読むかのような集中力。
同級生たちがゲームやアニメに夢中になる中、大輝はまるで将棋の世界に入り込んでいた。
そして、いよいよ対局当日。
会場には報道陣のカメラ、プロ棋士たちの視線、ざわめく観客。
そんな中、大輝は真っすぐと盤に向かい、深く礼をして言った。
「よろしくお願いします。」
プロ棋士・川村六段も、静かに一礼を返す。
「さあ――はじめようか、小さな天才くん。」
第三章 始まった対決
銀座・将棋会館の特別対局室。
大輝は、プロ棋士・川村六段と向かい合っていた。
「振り駒、お願いします」
審判の声に、大輝が振った駒がコトコトと机に転がる。
「先手、大輝くんです」
心臓の鼓動が静かに高鳴る。
対局時計がカチリと鳴り、戦いの幕が上がった。
1手目 ▲7六歩
定石通りの出だし。大輝は呼吸を整えながら、冷静に盤を見つめる。
2手目 △3四歩
川村六段も王道で応じる。
双方の駒が少しずつ前に出ていく。ゆっくりと、しかし着実に。
序盤は、定跡通りに進んだ。
だが中盤に入ると、大輝は思い切った選択をする。
▲4五歩!
観客席がどよめいた。
序盤のバランスを崩すような、早すぎる仕掛け。しかしこの手には、大輝が数日間かけて練り上げた**「新型矢倉の奇襲構想」**が隠されていた。
川村六段は、一瞬驚いた顔を見せたが、すぐに冷静に応じた。
△4五同歩 ▲2四歩!
「おおっ…!」
解説席のプロ棋士が思わず声を上げた。
「これは…捨て歩?いや、駒損をいとわずに主導権を握るつもりだ!」
大輝の指し手は、大胆だが論理的だった。駒を捨て、空間を作り、先に主導権を握る。まるで、プロ顔負けの攻め筋。
終盤戦。時計の針が残り3分を切る。
観客席では、「小学生がプロ棋士を追い詰めている」とざわめきが広がっていた。
対局を生配信していたネット上では、コメント欄が大炎上。
「これ、本当に小学生かよ!」
「川村六段、ちょっと焦ってない?」
「一歩でも間違えば負ける…すげぇ勝負だ!」
だが、そんな中でも大輝の目は静かだった。
彼は“勝ちたい”という思いよりも、**「この一局をやりきる」**という一点だけを見ていた。
そして…ついに、運命の一手。
▲6三銀!
詰めろ――!
プロも観客も息をのむ。詰みまではまだ数手あるが、受けを誤れば即死。
川村六段は一手、二手…と指し、そして時計が残り10秒になったとき――
△同銀…
川村六段の手が止まる。
「……負けました」
その瞬間、会場が静まり返った。プロ棋士・川村六段が、小学生に投了した。
対局後、控室で川村六段が大輝に言った。
「……完敗だった。君の読みは深い。そして、何より将棋を楽しんでいるのが分かる。悔しいけど…すごい将棋だった。」
大輝はちょっと照れくさそうに笑った。
「僕、勝ち負けも大事だけど、面白い将棋を指せたかどうかの方が大事なんです」
「……その心がある限り、君はきっと強くなり続けるよ」
その日、大輝の名前は全国ニュースで報じられた。
「小学生、プロ棋士を撃破!」という見出しが新聞の一面を飾り、YouTubeの対局動画は200万再生を超えた。
でも――
翌日、大輝はいつもと変わらず、学校の教室で席についた。
友だちに囲まれながら、給食を食べて、昼休みに校庭でドッジボールをした。
「おい、名人〜!昼休みに将棋やろうぜ!」
「いいけど、今日は変則ルールね!“おやつ一個かけ将棋”!」
「それ反則じゃん!」
笑い声が広がる中、大輝は心の中で思った。
(僕はまだまだ、強くなれる)
中学生になった大輝は、奨励会を経て、ついにプロ棋士となる。
彼の初対局の相手は、かつてのあの男――川村六段だった。
「お久しぶりです、大輝くん…いや、“大輝四段”か」
「はい。でも、あのときの一局が、僕の始まりだったんです」
彼は盤に向かって、駒を手に取る。
「よろしくお願いします」
そして今――新たな伝説が、始まろうとしていた。