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2 - プロ級な小学生2

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2025年09月11日

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私の名前は凛。私にはすごい利があってね………


凛(りん)は、小学六年生。静かな町の公立小学校に通っている、ごく普通の女の子――に見える。

でも、彼女の部屋のドアを開けた瞬間、世界は一変する。

そこには、電子ピアノ、譜面台、録音マイク、スピーカー、そして五線譜で埋め尽くされたノートが並んでいる。

凛は、**「作曲の天才」**だった。

彼女が音楽と出会ったのは、まだ4歳の頃。保育園の発表会で耳にしたバイオリンの旋律に、なぜか胸がギュッとなった。

その夜、テレビから流れるCMのメロディを、そっくりそのまま口ずさんだ凛を見て、両親は驚いた。

「この子、音を記憶してる…?」

それから数年。

凛は誰にも言わず、ひたすら音を聞き、音を真似し、音を自分の言葉として使うようになっていた。

今では、自分で作曲し、DTM(パソコンを使った音楽制作)までこなしている。

YouTubeに投稿したインスト曲は、1週間で再生数5万回を突破。

そのコメント欄には、こんな声が並んでいた。

「これ、本当に小学生が作ったの?」

「映像なしで、映画を観てる気持ちになる…すごすぎる」

「プロでもこんな世界観出せないよ」

でも、凛はあくまで静かに、自分の世界で音と生きていた。


ある日、凛のもとに一通のメールが届いた。

件名は――

「君の音楽を、映画に使わせてもらえませんか?」


第二章:プロからの依頼

そのメールの送り主は、谷川慶一郎という映像監督だった。

ドキュメンタリー映画で数々の受賞歴がある人物で、次回作のテーマは**「記憶と時間」**。

彼は偶然、YouTubeで凛の楽曲「雨の記憶」を聴き、心を撃ち抜かれたという。

「たった2分の曲なのに、10年分の記憶を見せられた気がした」

凛は戸惑った。自分の曲が、映画に?

しかも、プロの世界で?

「…私なんかで、いいのかな」

そんな凛に、母がそっと言った。

「“プロかどうか”じゃなくて、“本物かどうか”で選ばれたのよ」

そして凛は、メールの返信ボタンを押した。

「はい。私の音楽でよければ、ぜひ使ってください」


その日から、凛の毎日は変わった。

映像に合わせた劇伴(げきばん)音楽の制作、監督との打ち合わせ、何度もやり直すアレンジ、納期との戦い…。

楽しいだけじゃない。だけど、すごく本気で、すごく大変で、そして――

「生きてるって感じがする」

凛は、何度もそうつぶやいた。


第三章:音が語るもの

映画の中で、凛が作った曲は「記憶の欠片」「雨と光」「忘れられた約束」など、全12曲。

特に注目されたのは、クライマックスで流れるメインテーマ「Re:memories」。

監督からは、ほとんど何も指示がなかった。

「凛ちゃんが“記憶”って言葉から感じる音を、そのまま出してほしい」

だから凛は、一晩中ピアノの前に座って考えた。

思い出すのは、祖母と歩いた古い商店街のこと。

雨の中、傘の音と一緒に聞いた遠くの風鈴の音。

父が出張から帰ってきた日の、うれしいような照れくさい気持ち。

「記憶って、誰かと過ごした時間のことなんだ」

そう気づいた凛は、まっすぐピアノに向かった。

そのメロディは、優しくて、切なくて、でも温かい――

まさに、“時間そのもの”だった。


最終章:そして、音は世界へ

映画『記憶の星』は、東京国際映画祭でグランプリを受賞。

凛の音楽も同時に話題となり、ニュースで「奇跡の12歳作曲家」と取り上げられた。

ある日、学校の音楽室に記者が来て、「今の夢はなんですか?」と尋ねた。

凛は、少し恥ずかしそうに笑ってこう答えた。

「世界中の人に、“自分の物語を思い出してもらえるような音”を作りたいです」

拍手がわき起こる中、凛はピアノの前に座り、静かに鍵盤に触れた。

そして――また、新しい音が生まれた。

それは、未来への一歩を踏み出す、最初の一音だった。

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