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「好きです、付き合ってください」
季節は春。桜はもう散って降っているこの時期に、私にも青春が来た。
学校の桜の木の下で、クラスメイトの瀬戸くんに告白された。
私は人を好きになったことがない。でも、彼氏という存在には憧れていた。
「うん、いいよ」
だから、瀬戸くんのこと全然知らないし、好きじゃないけど付き合った。
季節は夏。このじめじめする暑さで、セミの鳴き声まであると気が狂いそうになる。そのせいで、夏休みに入ってから外に出ることは少なくなっていた。
冷房をガンガンにつけて棒アイスを食べながら寝転がっていると、瀬戸くんからラインが来た。
『百花さん、土曜日に夏祭りがあるんですけど一緒に行きませんか?』
「夏祭り!」と言いながら起き上がってすぐに既読をつけて返信する。
『行きたい!』
私にも二回目の青春が来た。
春に告白されてから一緒に帰ったり通話したりするくらいで、こういうイベントは無かったからワクワクする。
棒アイスが棒だけになって味もしないのに口に入れたままでいると、瀬戸くんが『了解!』と夏祭りの詳細のサイトリンクを送ってくれた。
リンクをタップすると『○○夏祭り!』という見出しと、屋台の種類や夏祭りを開催する場所などの詳細が載せられていた。
小さい頃から夏祭りは、りんご飴とかイカ焼きが好きだったけど彼氏の前で食べるには勇気がいるかも。
りんご飴は食べにくくて口元がベタベタになるし、イカ焼きもなんか恥ずかしい。
アイスの棒を捨て、髪をひとつに結んで鏡を手に取る。
「ニキビできてる…」
夏休みに入ってスキンケアをサボる日が多くなってしまい、大きなニキビが出来ていた。
あと普通にお菓子食べすぎが原因でもある。
今日は月曜日。金曜日までにニキビを消そうと作戦を立てることにした。
こうやって食べるものとか肌を気にするのは、別に瀬戸くんを好きになったからじゃない。彼氏と別れたくないからだ。
夏祭り当日、私は鏡を見てため息をついた。
「ニキビ消えてないじゃん…」
薬用のクリームを塗っていたはずなのに、少し小さくなるくらいで全く治らなかった。
肌が汚いからって冷められたらどうしよう…と不安になる。
___気持ち悪いなお前。
ふと、あの日のことを思い出した。
思い出すと、これから彼氏と夏祭りデートだというのに涙がこぼれそうになる。