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——カツ、カツ、カツ。
静寂を破り、重厚な足音が近づいてきた。
顔を上げると、自動ドアの向こうから、一人の男が現れた。
身長は190センチ近くはあるだろうか。 黒いピチピチのTシャツの上に、前が閉まらないジャケット。顔には黒いサングラス。 服の上からでも分かる、隆起した大胸筋と太い腕。どう見てもその筋(ヤクザ系)の人だ。
「……ひよりと一緒にいたのはお前か?」
男は僕の前に仁王立ちし、低い声で言った。 圧倒的な威圧感に蛇に睨まれた蛙のように、僕は萎縮した。
「は、はい。同僚の春川です……」
「ふーん」
男はサングラスを外すと、意外にも端正な顔立ちが現れた。だが、目は笑っていない。
僕を頭からつま先までジロジロと値踏みし、呆れたように鼻を鳴らした。
「広背筋が薄いな」
「は?」
「姿勢も悪い。猫背で巻き肩。典型的な運動不足。お前、本当は同僚じゃなくて彼氏なんだろ?そんな弱っちい身体で、いざって時、どうすんだよ?」
図星だった。ジムに通い始めたとはいえ、まだ数回。僕の身体は貧弱なままだ。男は僕の肩に、岩のような手を置いた。ギリリ、と万力のような力が込められる。
(ぐっ……ほ、いたた……ッ!?)
骨が悲鳴を上げる音が聞こえた気がした。
彼はパッと手を離すと、威嚇するように指をボキボキと鳴らした。
僕は縮みあがり、言葉を失った。
その時、看護師さんが声をかけた。
「白石さん、目が覚めましたよ」
その声を聞くや否や、男は僕を押しのけ、病室へ飛び込んだ。 僕もおずおずと後に続く。