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#たまに雑談
風崎 むぅまろ🦇🍀︎ 🍬🍚
無限城の奥深く、氷蓮華が咲き乱れる極寒の静寂の中で、すべては塗り替えられた。童磨の毒に全身を侵され、死を待つはずだったしのぶの運命は、彼が分け与えた「血」によって残酷に、そして甘美に反転した。鬼となった彼女の瞳には、上弦の数字が刻まれている。しかし、そこに憎悪の火は灯っていない。童磨の万世極楽教という欺瞞の救済が、彼女の脳を、本能を、そして凍てついていた心をゆっくりと溶かしていったからだ。
「ねぇ、しのぶちゃん。鬼になるって、こんなに素晴らしいことだったんだね。もう誰も恨まなくていい、悲しまなくていい。ただ僕だけを見ていればいいんだよ」
童磨が細い腰を引き寄せると、しのぶは抗うどころか、吸い寄せられるようにその胸に顔を埋めた。鬼としての飢餓感は、童磨という絶対的な強者への渇望へと形を変える。復讐という毒が抜けた彼女の身体には、今や彼への純粋な、そして狂気すら孕んだ愛だけが満ちていた。
しのぶの指先が、童磨の扇を持つ手に絡みつく。かつては急所を突くために研ぎ澄まされたその爪が、今は愛おしげに彼の頬をなぞった。
「…ええ、そうですね、童磨さん。あんなに苦しかった毎日が、嘘みたいに穏やかです。あなたの隣にいられるのなら、地獄の業火だって心地よい春の陽だまりに思えてしまう」
童磨は歓喜に震えた。感情が欠落していたはずの彼にとって、しのぶから注がれる本物の熱は、何よりも代えがたい「奇跡」だった。彼は彼女を抱き上げ、蓮の香りが漂う寝所へと誘う。
重なり合う二人の肌は氷のように冷たいはずなのに、内側から溢れ出す情動が火照りとなって空間を支配していく。童磨の愛撫は丁寧で、壊れ物を扱うかのように甘い。しのぶは、彼に喰らわれることさえも至上の悦びだと感じるほど、深く、深く堕ちていった。
「苦しくないかい?もっと、僕に溺れてほしいんだ」
「もっと…もっと壊してください。あなたの一部に、して…」
無限城の構造が二人を祝福するように歪み、外界から隔絶された楽園を形作る。他の誰の声も届かない、ただ二人だけの永遠。しのぶの瞳からこぼれる涙は、悲しみではなく、愛に満たされた恍惚の証だった。
月明かりさえ届かない深淵で、上弦の鬼たちは互いの存在を貪り、睦み合う。それは、呪われた血が生んだ、この世で最も美しく背徳的な、真実の愛の形だった。