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午後十一時。
校舎の廊下は昼間のざわめきが嘘のように沈黙に包まれていた。外から差し込む月明かりが、窓ガラスを通して長い影を作る。
「……本当にやるの?」
小柳菜乃花が、不安そうに声を漏らす。彼女の長い髪が揺れ、薄暗い廊下で震えるように映った。
「肝試しみたいなもんでしょ? そんなに怖がらなくても」
谷本穂乃果は懐中電灯を振り回しながら、明るい調子で答えた。普段からクラスのムードメーカーで、こうしたスリルを楽しむ性格だ。
七人の少女たちは、放課後に「学校に夜まで残って探検しよう」という軽いノリから始めた肝試しに集まっていた。
浜野里奈と浜野香里、年子の姉妹。性格は正反対で、里奈は臆病、香里は冷静。
原口理沙は頭の回転が速く、オカルトには懐疑的。
深沢真綾は感受性が強く、幽霊や怪談を信じている。
細谷瑞希は運動神経がよく、いざという時の行動力に期待できる。
――だが、その夜はただの肝試しでは終わらなかった。
「ねえ、今ドア閉まらなかった?」
浜野里奈が振り返る。
昇降口のガラス戸が、音もなく施錠されたように閉じていた。
「うそ……カギ、外から閉められた?」
原口理沙が眉をひそめる。試しにドアを押しても引いても、まるで見えない力に阻まれているかのようにびくともしなかった。
その時、校内放送が突然鳴り響いた。
――ジジジッ。
スピーカーから、ざらついたノイズと共に低い声が流れる。
『……ようこそ、夜の学校へ。七人の挑戦者よ。夜明けまでに“鍵”を見つけ、脱出せよ。失敗すれば、永遠にこの校舎に……』
全員の背筋が凍りついた。
肝試しのはずが、いつの間にか“脱出ゲーム”に変わってしまっていた。
細谷瑞希が声を震わせながらも、勇敢に口を開く。
「とにかく……探そう。出口は必ずあるはず」
七人は懐中電灯を手に、夜の学校を彷徨うことになった。
不気味な放送と閉ざされた扉――。
脱出のための“鍵”を探す、恐怖のゲームが始まる。