テラーノベル
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第1章 第十五話 ノヴァ
「……こ…ろ…す…」
感情の消え失せた、地を這うような冷酷な声が荒野に響き渡る。
上空から舞い降りたのは、仮面軍No.4。
重々しい白い仮面でその素顔を完全に覆い隠し、首筋に不気味に輝く【No.4】の数字を刻んだ、謎の女だった。
彼女の細い手には、闇を照らし出す光輝くエネルギーを帯びた、一振りの剣が握られている。
その刃は、迷いなく目の前の『青龍の怪物』へと向けられた。
「グガァァァァァァァッ!!!!」
理性を完全に失い、内なる破壊の本能に支配されている青龍(ウカビル)にとって、目の前に現れた者が誰であるかなど関係ない。
自分に冷徹な殺意を向けてくる「目障りな敵」として認識した青龍は、激しい咆哮とともに大地を爆砕させながら、凄まじい速度で突撃した!
空間を引き裂く速度で迫る、赤黒い稲妻を纏った異形の爪。
しかし、謎の女の身体は一切の躊躇なく、冷徹な動きで応じた。
「……光の双剣」
鋭く振り下ろされた、その武器――【ブラスターエクリプス】から放たれた光の斬撃が、突進する青龍の肩を正確に深く切り裂いた!
ズガァァァァァン!!!
「ガァァァッ!?」
痛覚すら麻痺しているはずの暴走状態の肉体が、その禍々しい衝撃にわずかに押し戻されるが傷は一瞬にして再生する。
この仮面の女の戦闘力と洗練された剣技は、これまでの幹部たちとは一線を画すほどに跳ね上がっていた。
青龍はさらに激昂し、強靭な龍の尻尾を鞭のようにしならせて女を打ち据えようとする。
地殻を容易に叩き割るその一撃に対し、女は無駄のない動きで避ける。
さらに空中へと跳ね上がると、流れるような身のこなしで【ブラスターエクリプス】による苛烈な剣舞の連撃を浴びせかけた。
「光の業剣」
ドバババババババッ!!!
周囲の地面が次々と光の剣気によって爆炎に包まれ、荒野がさらなる大破壊に巻き込まれていく。
理性のない青龍の圧倒的な暴力と、冷徹な殺戮マシーンであるNo.4の、息をもつかせぬ超決戦。
ガキィィィン!!
空中から斬りかかってきた女に対し、青龍は禍々しい青黒い龍の翼でその鋭い刃を防ぎながら、もう片方の爪でその胸元を烈しく引き裂こうとする。
「グゥオオオ!」
しかし、その鋭い爪が女の被る重厚な仮面を激しく掠めた、まさにその瞬間――。
バキキッ……。
激しい衝撃によって、女の顔を覆っていた仮面の一部が砕け、その隙間から、生気を失い濁りきった瞳と、なびく金髪が見えた。
その瞬間、戦場に奇跡的な衝撃が走る。
「……っ……!?」
激しい戦闘の最中。肉体を完全に支配していたはずの『青龍の怪物』の奥底から、一瞬だけ、ウカビル自身の意識が奇跡的に目を覚ました。
目の前で冷酷に剣を構えるその横顔。
そして、彼女が持つその美しくも禍々しい剣。
間違いない。
その剣の筋、そしてその武器は、かつて共に切磋琢磨した仲間――ノヴァの愛用する剣。
「ノヴァ…?」
ウカビルの中に激しい困惑と戦慄が走る。
だが、意識を取り戻したのはウカビルだけではなかった。
仮面が砕かれ、外気に触れたその瞬間、
No.4――ノヴァの濁りきっていた瞳の奥に、ほんのわずかな光が宿る。
「……う、頭が……っ……。ウカ……ビル……?」
ノヴァは激しい頭痛に頭をむしり取るように身悶えし、光輝く【ブラスターエクリプス】を握る手が小刻みに震えていた。
首筋の【No.4】の数字が禍々しい黒い光を放ち、彼女の脳内に凶悪な術式を強制執行しようと激しく脈打つ。
しかし、それ以上にノヴァの心に宿った「ウカビルを傷つけたくない」という強い意志が、その洗脳の呪縛と真っ向からぶつかり合っていた。
「ウカ……ビル……だめ……逃げ、て……」
ノヴァの濁りきっていた瞳から、大粒の涙がポロポロと溢れ出す。
「ノ·····ヴァ!!」
その涙が、彼女の頬を伝って地面に落ちた、まさにその瞬間だった。
ピキィィィン……ッ!
激しい拒絶反応の限界を迎えたのか、ノヴァの顔を覆っていた白い仮面が、今度は音を立てて完全に粉々に砕け散った。
それと同時に、彼女の首筋で不気味に光っていた【No.4】の数字が、バチィィィンと弾けるような音を立ててその光を完全に失っていく。
その劇的な変化は、対峙していたウカビル(青龍)の体内にも決定的な影響を及ぼした。
「ガ、アァァァッ……!?」
ノヴァの洗脳が解けたことで、彼女から放たれていた冷酷な殺意と邪悪な気配が完全に消滅した。
それを感知したウカビルの肉体からも、暴走していた内なる『青龍』の破壊衝動が、嘘のように急速に引いていく。
ウカビルの全身を包んでいた悍ましい赤黒いオーラが霧散し、背中から突き出ていた禍々しい翼と強靭な尻尾が、消滅していく。
赤黒く染まっていた彼の両目には、徐々にハイライトを取り戻し、元の優しいウカビルの瞳へと戻っていった。
二人は完全に元の状態へと戻ったのだ。
「ノヴァ……! ノヴァァァッ!!」
ウカビルはボロボロの身体のまま、激しく地面に膝をついた。
その目からは、堰を切ったように涙が溢れ出て止まらない。
大切な仲間を、大好きな人をあやうく自分の手で、理性のない化け物となって殺してしまうところだった。
その圧倒的な恐怖と罪悪感が、ウカビルの胸を激しく締め付ける。
「ごめん……! ごめん、ノヴァ……っ!! 僕、理性を失って·····」
ウカビルは地面に何度も拳を打ちつけ、声を震わせながら、涙を流して何度も何度も謝罪の言葉を口にした。
悔しさと情けなさで胸がいっぱいだった。
そんなウカビルを見つめ、ノヴァはゆっくりと歩み寄ると、その場に優しくしゃがみ込んだ。
彼女もまた、操られていたとはいえウカビルを傷つけてしまったことに心を痛め、涙を流していた。
しかし、目の前の少年が泣きじゃくる姿を見て、ノヴァは掠れた、けれどいつもの温かい声で静かに微笑んだ。
「大丈夫…だよ、ウカビル。……私の方こそ、ごめん。仮面軍に…捕まって、操られて……あなたのことを·····」
お互いに涙を流しながら、何度も何度も謝り合う二人。
過酷すぎる運命に翻弄され、傷つけ合ってしまった二人だったが、荒野の中で、ようやく本物の「絆」を再び取り戻すことができたのだ。
「よかった……ノヴァが、元に戻って、本当によかった……っ」
「うん……ウカビルが、無事でよかった……」
二人が涙を拭い、ようやく小さく笑い合えた、まさにその瞬間だった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!!!!
突如として、世界のすべてが激しく震え始めた。
ただの地鳴りではない。
大地そのものが恐怖で悲鳴を上げているかのような、かつて体感したことのない全方位からの凄まじい地響き。
「な、何……!? 一体何が起きてるの……!?」
ウカビルとノヴァが驚愕して天を見上げた、その瞬間。
二人の顔から、すべての血の気が完全に引き、絶望に目を見開いた。
荒野の上空、立ち込める暗雲をすべて一瞬で吸い尽くすかのように、空のど真ん中に「バカでかい巨大なエネルギー弾」が突如として出現したのだ。
それは、惑星の半分を覆い尽くしてしまうのではないかと思えるほどに狂暴で、圧倒的な質量を持った紫黒色のエネルギーの塊だった。
空間そのものがエネルギー弾のプレッシャーでメキメキと歪んでいく。
その絶望的な光の直上。
禍々しい漆黒の鎧を身に纏い、神のごとき圧倒的な威厳を放ちながら、冷酷に地上を見下ろす一人の男の姿があった。
仮面軍の最高幹部にして絶対の支配者――No.1、キングスタング。
キングスタングは、地上のウカビルとノヴァを一瞥すると、地響きのような低い声で冷徹に言い放った。
「これを落とせば、この星は滅びる。……さぁ、フィナーレだ」
#オリジナルすとーりー
SOMAMON7A
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古流斬
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コメント
1件
うわあ…15話、読了しました。ノヴァ、戻ってきてくれたんですね…!仮面が砕けて、洗脳が解けて、ウカビルを思い出したあの瞬間、涙が止まらなかったです。お互いを傷つけ合った罪悪感を抱えながらも、それでも「大丈夫だよ」って微笑むノヴァと、泣きじゃくるウカビルの再会シーン、本当に胸が熱くなりました。でも…最後のキングスタングのあのエネルギー弾。星が滅びるって…続きが気になりすぎます。次回、どうか二人は無事で。