それは暑くも寒くもない平凡な火点し頃のこと
モブこと茂夫はバイト先の相談所で悶々とした気持ちを抑える為に最近流行しているヒーロー漫画をソファに座って読んでいた。
読んでいた、と言っても形だけである。
どういう事かと言うと、茂夫は漫画を読んでいる風に見せて隣に座っている師匠、霊幻をチラチラと盗み見ていた。
ここまで言えば分かると思うが、茂夫は霊幻の事が好きなのだ。
茂夫も性に疎いとはいえ、想いを寄せている人と2人きりは堪えるだろう。
そこで茂夫は体を動かせば冷静になれるだろうと考えたのだ。
「あの、師匠。そろそろ終業時間ですし少し買い物に出かけませんか?」
と声を掛けた、と同時に霊幻のネクタイがヨレている事に気がついた。
「僕、師匠にネクタイプレゼントしたいです」
気づけばそう口走っていた。霊幻は驚いた様子で
「お前がどっか行きたいって言い出すの、あんまりないしな、あと人に物を贈ろうとするのもあんまり無いだろ?仕方ないから俺がモブの最初のプレゼントを貰ってや(ry」
茂夫は霊幻の独り言を聞いて気づけば落ち着いていた。
「……ふふ もう、行きますよ師匠 」
「お、おう」
茂夫は長々と話す霊幻を丸め込み無理やり近くのショッピングモールに駆け込んだ
目に入った落ち着いた雰囲気の店にできるだけお淑やかに入店した。
いらっしゃいませ、と店員さんの声が耳に入り、茂夫は少し姿勢が強ばった。
そして茂夫は緊張をかき消す様にネクタイが売っているコーナーへと足を進めた。
一方霊幻はどんどん進む茂夫に圧倒され一言も発さぬままネクタイコーナーへ連行されていた。
「さ、師匠!この中から好きなの選んで下さい。」
と茂夫は薄い胸を張る。
霊幻は困りつつ、「なんでもいいんだけど…」
と言葉を漏らす。
その言葉が茂夫の耳に入った途端、茂夫があからさまに顔を膨らまし拗ねた。
「……」
前髪で見えない眉毛の先を下に曲げて怒った顔をしながら霊幻に無言の圧を掛ける茂夫。
そんな茂夫の顔を初めて見た霊幻は
「えっと…じゃ、これ」
とよく見もしてないピンクのネクタイを指さした。
霊幻は適当に指を指したが、茂夫からすると初めて想いを寄せている人にプレゼントができるのだ。
そりゃあ贈るだけで嬉しいだろう
「これですね、お会計してきます!」
と駆け足でレジに向かう茂夫。霊幻は他のも見ようと見送り、ふと目に入った値札を見て茂夫を全速力で追いかけた。
その後、無事ネクタイを霊幻にプレゼントし一緒にラーメンを食べて解散した2人は別々に帰路に着く。
茂夫がプレゼントしたピンクのネクタイを霊幻が毎日つけている話はまた今度。
コメント
7件
あ"ッッッッッ好きだぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!!!!!!!🫠🫠🫠(急な告白)
無意識にフォローボタン押してたのはないしょ