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あれから康二は深澤との約束を守り、穏やかな寮生活を過ごしていた。もちろんあの部屋のことは気になるが、それ以上に生活が充実していたのだ。
だが、あの部屋について触れる日が再びやってきた。たまたま廊下を歩いていると、ガチャと重厚な扉が開く。ここに来てからしばらく経つが、あの扉が開く瞬間を見るのは初めてだった。
康二は目が離せなくなった。
中から高身長の青年が、濡れた頭をタオルで拭きながら出てきた。かなり整った顔立ちをしている。
「うわっ、びっくりした!」
少し低めで落ち着いた声を発した青年。
向井「あ…」
「ん?見た事ない人…あっ、もしかしてあなたが転校生の向井康二くん?」
向井「はい、向井…ですけど…」
目黒「やっと会えた!俺、1年の目黒蓮です。康二くん、転校初日から可愛いってみんな言ってて、有名だったから。たしかに可愛い顔してる。」
目黒は眩しい笑顔を向けながら康二の頬に触れた。康二はピクッと肩を跳ねらせながら、彼の甘い顔に危うく落ちるところだった。
向井「いや!待って!?えっ、目黒くん1年生なん?後輩!?めっちゃ口説いてくるやん勘弁して!!」
火が出そうなくらい顔を真っ赤にして、急いで目黒の手を払い除けた。
阿部「あー。こら、めめ!意地悪しちゃダメだよ。無駄なスキンシップはダメっていつも言ってんじゃん。」
向井「阿部ちゃん…!な、なんなん!この人!!初対面でこんな、ハレンチな!!」
目黒「ははっ、康二くんにはまだ早かったね。スキンシップも、…この部屋も。」
意味深な言葉を残して去って行った目黒の背中を見ながら、康二はドキドキと高鳴った胸を押さえた。
阿部「康二、大丈夫?」
向井「あ、うん…大丈夫」
阿部「そう?顔、赤いけど。もしかしてドキドキした?めめに」
阿部は意地悪そうに笑った。
向井「そっ、そんなんやないし!それにあの部屋!その、目黒くんは俺にはまだ早いって言ってたけど、どうせ筋トレする部屋かなんかやろ!俺だって、筋トレくらいできるっちゅーねん!ムキムキなったろやないかい!!」
康二はムキになって阿部に八つ当たりするように言い放った。すると阿部は堪えきれずに笑い出した。
阿部「っはは!康二面白過ぎ!」
向井「なんなん!!阿部ちゃんまで馬鹿にして!!」
阿部「そんなにあの部屋に入りたい?康二」
向井「…うん。正直、気になる。」
阿部「そっか。でも、俺はおすすめしないな。康二が嫌な思いするの、嫌だし。後悔して欲しくない。」
そう呟いた阿部の顔は引きつっていて、悲しげだった。