テラーノベル
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なかなか初投稿で市町村ヒューマンズ書く人いない気がします。
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「数が多いわ! 湧き出てくるのが止まらへん!」
渋谷駅前、スクランブル交差点の真ん中で大阪が叫ぶ。背負った扇を一閃させると、虎の咆哮と共に衝撃波が放たれ、数十体の影を一気に霧散させる。しかし、倒しても倒しても、地下街や路地裏からドロドロとした黒い影が溢れ出してくる。
「大阪、右だ!」
さいたまの声が通信に入る。彼は台東区から、呪力センサーを介して東京中の「陰の流れ」を視覚化していた。「僕もいっちょやりましょかっ」とさいたまが印を組むと、渋谷の路上に光の線が出現。線に触れた陰たちの足を一瞬で焼き切り、大阪への追撃を遮断した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
一方、港区。
レインボーブリッジの主塔の上に立つ横浜は、巨大な黒鉄の鎖を唸らせていた。
「どいつもこいつも、行儀が悪ィんだよ!」
彼が鎖を振り下ろすたびに、アスファルトが爆ぜ、陰たちが紙屑のように舞う。横浜の異能は「攻撃力を倍にする」。彼の攻撃が命中した場所には、隕石が落ちたようなが大穴が空く。
その足元、地上では名古屋と静岡が背中を合わせていた。
「静岡、右翼の陰を抑えろ! 逃がすなよ!」
「分かってますよ……桜血霧!!」
静岡が両手を広げると、戦場一帯に濃密な、それでいてまるで鮮やかな着物のような模様の霧が立ち込める。影たちは視界を奪われ、互いに衝突しあって動きを止める。
「ようやった!!!」
同時に名古屋が重く黒光りする二振りの刀を振るう。霧の中で立ち往生する影たちを、まるで見えない刃が刈り取っていくかのように、鮮やかに、高速で斬り伏せていった。
だが、戦況は芳しくない。
「……思った通り此奴等、戦う気ないね」
浜松が呟く。彼は影の群れの中に飛び込み、「洋琴の弦」を鋼糸のように操り、陰を細切れにしながら後退していた。
「私達が倒しても、生き残りは全て『皇居』の方に流れている……自分たちが消滅することすら、東京を侵食するための『燃料』にしてるようだね」
その時、通信機からノイズが走る。
『……ふふふ、正解です。浜松さん、貴方は勘が良い。』
赤い風船の声が、戦場全域のスピーカーから鳴り響く。
『1万体の陰は、ただの兵隊ではありません。彼らは「忘れ去られた境界線」の記憶。彼らが都心で散るたびに、東京の土地に刻まれた「今の秩序」が剥がれ落ち、私の「領界」が上書きされていく……。』
地響きが起きる。
港区、渋谷区、台東区。三点をつなぐ三角形のエリアが、どす黒い光の壁で囲われ始めた。
「なっ……二重領界だと!? 閉じ込められたのは、俺たちの方か!」
横浜が歯噛みする。
結界の中心部、皇居の上空に、巨大な赤い風船がゆっくりと降りてくる。その下には、意識を失い、無数の影の鎖に縛り付けられた一人の青年——「東京」の姿があった。
「東京ッ!!」
名古屋の叫びも虚しく、街の明かりが一つ、また一つと、どす黒い闇に飲み込まれていく。
激しい爆音と影の奔流の中、浜松とさいたまの通信回線だけが、異様なほど冷静に情報のやり取りを続けていた。
「……おかしいと思わないかい? 港、渋谷、台東。この三点を結んだ正三角形……綺麗すぎるんだよ」
浜松が、指先に絡めたピアノ線を弾きながら呟く。彼の周囲では、細断された影が黒い霧となって霧散していた。
『あぁ、僕も今計算してたところだ。……浜松君、これ「江戸の結界」の焼き直しだね』
さいたまが、脳内の呪力センサデータをフル回転させる。
『港区は増上寺、台東区は寛永寺……つまり徳川ゆかりの「鬼門」と「裏鬼門」を、現代の陰で上書きして、東京……江戸の守護を反転させてるんだ。でも、一点だけ……計算が合わない場所がある』
「……渋谷だろう?」
浜松が不敵に笑う。
「渋谷は江戸時代、ただの農村や大名の下屋敷だった場所。本来、江戸を守る『要』じゃない。そこを無理やり結界の起点に選んだのは、現代の『若者の負の感情』や『混沌』を利用するためだろうけど……」
『そう、そこが「定義の歪み」だ!』
さいたまの声が弾む。
『東京を「江戸」として塗り替えようとする敵の術式にとって、あまりに現代的すぎる「渋谷」は、不純物でしかない。そこを突けば、この三角形の均衡は崩れる!』
「鍵が揃ってきたね、具体的な異能解錠のポイントは?」
『渋谷駅の「地下」だよ。 迷宮のように入り組んだ地下構造は、地上で展開されている平面的な結界の計算を狂わせている。あそこに、僕たちの呪力を直接流し込めば、内側からパンクさせられるはずだ!』
浜松はすぐさま全員に通信を飛ばした。
「朗報だよ、 ターゲットを皇居から『渋谷の地下、最深部』に変更して! 大阪、君の出番だよ。あそこの混沌を乗りこなせるのは、君しかいないんだろう?」
『ハハッ、言うてくれるやんか! 迷宮攻略は得意分野や!』
大阪が豪快に笑い、扇を構え直す。
「名古屋、静岡、横浜は大阪が地下に潜るまでの『道』を作って! さいたま君は呪力を全て渋谷にバイパスして。私は…一寸した贈り物を贈るよ」
浜松が空中に指を走らせると、目に見えない音の障壁が展開され、影たちの進軍が目に見えて鈍る。
「……赤い風船。君、東京を『過去の亡霊』にしようとしたみたいだけど……私達は『今』を生きる都市だ。上書きなんてされちゃ困る」
戦況が、一気に「渋谷・地下」へと収束していく。
それは、緻密な地理的計算に基づく、政令指定都市たちによる反撃の狼煙だった。
#とどひゅ
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