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「もう嘘はよそう鈴子、僕を襲った犯人は君に雇われたと言っているそうだ、君の会社の名前で300万犯人に支払われていたってね!これほど証拠があるのにまだ君は僕に嘘をつくのかっっ?」




浩二が我慢できずに怒鳴った、声が部屋に反響して窓ガラスが微かに震える、あまりに驚いて鈴子は後ずさり、壁に背中がぶつかった



「私は本当に何も知らないの、いったい何を言ってるの?」




声が裏返る・・・浩二は一歩近づき、鈴子の顔を覗き込む



「じゃぁこれはどうだ?良平を呼びつけて僕が落選したその後の話をしたそうじゃないか!講演会もキャンセルしろと言ったんだろ」



鈴子がハッとなって言った、記憶がフラッシュバックする、あの日のイタリアンレストラン、良平の困惑した顔・・・



「そ・・・それは・・・あの時は・・・」




言葉が続かない・・・浩二は何も答えなかった、ただ黙って鈴子をじっと睨むだけだった、視線が鋭く、鈴子の心臓を抉る、鈴子も言葉が返せず、しばらくその場に立ち尽くした



部屋の空気が急に重く、息苦しくなって鈴子の胸を締めつけた、浩二の背中がすぐそこにありながら遠い異国の風景のように見えた、それから、くるりと背を向けると、ガラガラスーツケースを玄関まで引きずって行った



キャスターが床を軋ませて耳障りな音を立てる



「ごめんなさい!ごめんなさい!二人のためだと思ったの!だってあの時のあなたは忙しすぎたわ」




鈴子がなんとか彼を引き留めようとスーツケースを引っ張る、指が滑って爪が折れたため、指先に鋭い痛みが走ったがそんなものなど気にも留められなかった、浩二は振り返らずにドアノブに手をかけた



「もう君の顔なんか二度と見たくない!こんな女と結婚なんか出来ない!」


「お願い私の話を聞いてちょうだい!説明させて浩二!」




鈴子の声が裏返る、涙が頬を伝って床に落ちる



「僕達はおしまいだ!君は自分の会社も人間も自分の都合の良い駒の様に扱う!この僕もだ!何が二人のためだ!僕は君の周りにいる、兵隊の様な人間じゃない!もう我慢がならない!君のおかげで僕は大切なものを失った」




浩二の声は低く、しかし決して揺るがなかった、ドアが開いて廊下の冷たい空気が流れ込む、外の世界の匂いが、部屋の温もりを一瞬で奪い去った




「浩二!浩二!違うわ!お願いだから説明させて!家に入って!」



鈴子は浩二の腕にすがりつく、しかし浩二は物凄い力で鈴子の手を振り払ってエレベーターのボタンを押した、金属の扉が開いて浩二は中に入る



「浩二!お願いっっ!」




振り返らないままエレベーターの扉は閉じられ、浩二は出て行ってしまった。



「浩二!」




扉が閉まる音が響いて部屋に静寂が落ちる、涙が止まらず、鈴子はそのまま床に崩れ落ちた



あまりにも力が抜けすぎて膝が床にぶつかって、鈍い痛みが広がったがそれさえも現実味がなかった、鈴子は冷たいエレベーターにズルズルと縋りつき、泣いた



指先が金属の壁を掻き、爪がさらに欠けた



―今・・・私の愛が・・・ガラガラと音を立てて崩れていく・・・―




鈴子は泣いた・・・声を漏らして泣いた




ヒック・・・「どうして分かってもらえないの・・・浩二・・・こんなに愛しているのに・・・」





今まで私の思い通りにならなかった男性はいなかった・・・あの定正さんでさえ一世一代の賭けに出た時に、彼は百合ではなく私を選んだ




私はあの時から傲慢になってしまっていたのかしら・・・ 浩二も自分の思い通りになると思っていた、でもあの人はいつだって自分の夢や希望に燃えていて・・・私の事は二の次だった・・・



ハラハラ涙が溢れる、頰を伝う熱い雫が唇の端に塩辛く染みた、もう彼は二度と私の所へ戻ってこない、一度飛び出したカナリヤは二度と戻ってこないのよ・・・



彼は私の事を酷い女だと言ったわ・・・



私はただ・・・彼を深く愛しただけないのに・・・



そう・・・私はこんな愛し方しか出来ないのよ




鈴子は泣いた、いつまでも涙が枯れるまで泣いた、部屋の隅で、彼女の嗚咽だけが虚しく響き続け、まるで永遠の闇に包まれいくようだった

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