テラーノベル
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春の風が神社の縁側をなでる午後、博麗霊夢は一人、お茶を淹れていた。湯気の向こう、静かな時間が流れる。
「霊夢ー! 来たぞーっ!」
その静けさを壊すように、空から降ってきたのは、やはりあの黒い帽子の少女——霧雨魔理沙だった。
「また勝手に上がり込んで……」
そう言いながらも、霊夢は二つ目の湯呑みを用意している。魔理沙はそれを見て、ふふっと笑う。
「やっぱ霊夢、優しいなぁ。もうすっかり、私専用って感じじゃないか?」
「うるさいわよ。どうせ来るんでしょって思っただけ。」
霊夢は横目でちらりと魔理沙を見る。その視線は冷たいようで、どこかあたたかい。
「ふーん……そういうの、嬉しいんだけどな」
魔理沙は頬杖をついて、春の空を眺める。花びらがふわりと風に乗って、二人のあいだを舞う。
「今日ね、ちょっと飛び回ってたんだけどさ」
「また何か盗ってきたの?」
「違うってば! 今日は……あんまり面白いことなかったんだよ。ただ、途中でふと思ったんだ。なんで私は、霊夢のとこにばっか来るのかなって」
霊夢はお茶をひとくち。淡い香りが鼻をくすぐる。
「そりゃ、あんたが寂しがりだからじゃない?」
「それもあるかもな。でも、たぶん——」
魔理沙は少しだけ声を落とす。
「霊夢といると、心が落ち着くんだよ。何も起きなくても、ここに来るだけで、なんか安心する」
その言葉に、霊夢はしばらく黙っていた。風が二人の髪を揺らす。まるで、その静けさ自体が会話の一部のようだった。
「……なら、好きにすればいいじゃない」
霊夢は小さく言って、少しだけ魔理沙の方に体を寄せる。
「神社は別に、あんたが来ても困らないし」
魔理沙はぱっと目を丸くしてから、にやりと笑った。
「おー、ついに公認! もうここ、私の家にしちゃおうかな?」
「……そのときは、お賽銭ちゃんと払いなさいよね」
「えー、やっぱりそこは霊夢の愛で免除ってことで!」
「するかバカ!」
ふたりの笑い声が、春風に乗って遠くへ溶けていく。
その日、神社の縁側には、なにも特別な出来事は起きなかった。ただ、穏やかで、心が少しだけあたたかくなるような、そんな時間が流れていた。
コメント
1件
あうっ(?) こんな夜にコメント失礼します、!! はっきり言いますよ!? 情景描写が上手すぎます✨✨ 風景が伝わってきて…感動です🥹 あとれいまりが…れいまりがぁああ!!((黙れ 尊すぎて口角が全国旅行です(?) もっと伸びるべきだぁぁ…