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はぁ、今日もまたまた学校の時間。そして朝から始まるのは、地獄の挨拶運動&服装チェック。まったく、やになる。
おっと、だめだね。学校一の天才美少年がそんなこと言ってたら。
さ、今日も律儀に頑張ろうか。ちょっと遅れたらしい。校門前にもう魅麗と螺鈿先輩もいるだろう。
「おおい!魅麗!」
いないか……。ちょっと遅刻したころかと思ったんだけど。
「占星歌《セイカ》!螺鈿占星歌!」
いない……
集合時間結構すぎたのに。まあいっか。螺鈿先輩のことだし、また病んだんだろ、きっと。
魅麗、もしかして、誰かから虐められてショック受けたりしたんじゃないかな。バスとか電車が遅延してるだけならいいんだけど。
とうとう、挨拶運動が終わった。二人揃って休みとは。
なんか背後から生ぬるい視線が……
「碧波君、わたくしの服装検査をしてもらえないかしら?どこか変わったと思わない?」
げ、古林令羅生徒会長。こりゃ面倒なのが来たぞ。
「ほら!香水変えたのよ!」
気づくわけないでしょ。まあ、なんか臭さが変わったなとは思ったけど。
「古林会長、アウトだね。香水は校則違反だよ。」
古林会長は、上目遣いでなによ!と叫んだ。
「碧波!多めに見なさいよっ!このわたくしの言うことがきけないっていうのっ!」
なんだよ、今日は螺鈿先輩がいないからって偉そうに。
「風紀委員に校則破ってますって宣告するのは、怒られに行ってるようなもんだろ。」
古林会長は、
「教室まで送るわ」
と言った。
送るってよりは着いてくるだけだろ。
もはやストーカーだ。
「古林会長はお暇なの?いっつも人を追いかけ回してるけどさ」
「何言ってんの。暇じゃないけど着いていってやってんの。」
古林会長は、どうでもいい話をずっと振ってくる。
「碧波、タイプってどうなの」
「うーん、水泳のダイブは得意だよ。」
「碧波、最近どう?」
「うーん、ストーカーがそこにいなければ楽しいかな。」
「あ、あ、ごめんなさい……」
「は、はい……」
「でもさ、あんたあれよね、わたくしのことちゃんと見てる?」
「うん。ちゃんと目を見て話してるじゃないか」
そもそも君を見ていても吐き気がするだけだけどな。
「あんた、わたくしの目じゃなくて、目の中の風景を見てない?」
「ん?なんのことでしょう。」
「ほら、わたくしのこと可愛いって思ってる?」
「ハイ、カワイイカワイイ。」
「わたくしを見ていってる?」
「うん、目を見て言ってるだろ」
「あ、あんた、目の中に映ってる自分に向かって言ってるんじゃ……」
「い、いやそんなこと……」
そんなこと、ありますけど……。まあ、天才美少年を見てると目の保養になりますし?
「授業遅れるし、早く走った方がいいよ。」
古林令羅は、はいはいと二つ返事して、しぶしぶ自分の教室の方へ行った。
まったく、面倒だね。螺鈿先輩が横にいると古林令羅は寄ってこないんだけど。古林と螺鈿先輩は同じクラスらしいけど、古林も螺鈿先輩も、どうも互いに互いのことが苦手らしい。
……ちなみに僕は、どっちも苦手だ。
授業が始まった。相変わらず、つまらない。
休み時間には窓辺で本を読んでいた。つまらない。
つまらないのはいつものことだけど、風紀委員会というものが、その退屈を紛らわしてくれた。今も、きっとそうなのだが……
魅麗になにかあったのではないかと思うと気が気でなかった。
こんな風に、魅麗には関心があるが、僕は螺鈿占星歌に興味関心がない。別に嫌いなわけではない。彼女が独りで戦ってきたのは知ってる。でも、君だけが戦っているわけじゃない。わざわざ嘲るような連絡までしてくる忌々しい同級生や、目の疲れや、外へ出る恐怖や、君からの憎しみと、僕も戦ってきたのだ。
もし今、あの時の君の苦しみを背負えと言われたら、喜んで背負う。だが、背負った後に死ぬなと言われたら、一瞬考えなくてはならない。
駄目だな、もう。
魅麗も、こんな風になるのだろうか。
その次も、またその次の代も、ずっとこんな苦しみを背負ってゆくのだろうか。
分からないけれど、途方もなく深い闇がずっと繋がっている。
一つの犠牲で、これを、断ち切れるなら。
……ここには、誰も居ない。
魅麗、待っていろ!全てを、終結させる!