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次の日。昼過ぎ。
るかは、めずらしくキッチンに立ってた。
冷蔵庫を開けたり閉めたりして、
中をのぞきこんでる。
俺はソファから声をかけた。
「なんか作んの?」
「……冷凍食品ばっか。飽きた」
「買いに行くか?」
「……別に。もういい」
るかはそう言って、
何も取らずに冷蔵庫の扉をバタンと閉めた。
ちょっと強めに。
⸻
そのまま、
るかは部屋に引っ込んだ。
「……」
俺は一瞬、
なんでそんな機嫌悪くなるんだよ、って思ったけど、
わざわざ追いかけるほどでもないと思って、スマホをいじり始めた。
⸻
30分後。
るかがまたリビングに来た。
「……なにしてんの?」
「スマホ」
「ふーん」
それだけ言って、
るかは俺のスマホをのぞきこんだ。
俺は別に隠す理由もなかったけど、
なんとなく、
「今それ聞く?」みたいな気持ちになった。
だから、
ちょっと素っ気なく言った。
「ヒマなら自分でなんかすれば?」
⸻
その瞬間。
るかの顔が、
すっと冷たくなった。
「……言われなくてもわかってる」
小さな声。
でも、めちゃくちゃ刺さる声だった。
それだけ言って、
るかはまた、自分の部屋に戻っていった。
⸻
「……っ」
俺は小さく舌打ちして、ソファに沈み込んだ。
なんだよ。
別に怒らせたかったわけじゃねーし。
でも、
たぶん、
俺もるかも、
どうしていいか、よくわかってなかっただけだ。
⸻
この日は、
それきり、ほとんど会話がなかった。
夜になっても、
部屋の中はずっと、重い静けさで満たされていた。