テラーノベル
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重い鉄のドアをしっかり閉めると、彼女の声は聞こえなくなった。
「はあ、はあ……」
ノブを握りしめた手が震えている。
だいじょうぶ……大丈夫。
深呼吸、しよ……。
ノブにしがみついた格好のまま、息を吸って吐いてを繰り返した。
それを何度か繰り返すと、ようやく部屋を見渡す余裕ができる。
「あっ……」
思わず息を呑んだ。
長く伸びた廊下。
その突き当たりには同じドアがもう一つ。
廊下を挟んで、両側には空の牢が並んでいる。
その牢の道の真ん中に、一人の男の子が立っていた。
「!?」
一瞬またさっきの女の人のような「お化け」かと思ったけど、その目は赤くない。
違う、お化けじゃない。
彼は私を見ていた。
赤くないグレーの目でじっと。
その視線に気圧されて呼吸が止まる。
不意に男の子がニコッと笑った。
「こんばんは」
「こんっ……」
止まっていた息を意識的に吐き出して、呼吸を再開。
「こん、ばんは……」
「ここで何してるの?」
「……えっと……出口を探してて……」
「どうやってここに?」
何だろう。
笑顔なのに、空気が張り詰めている。
この子の右手が、腰の銃にかけられているから?
「物置から……地下道、通って……でも扉が閉まっちゃったから……」
「地下道……あの井戸の下の?」
「うん」
「誰かに連れてこられたわけじゃないんだ?」
「わからない……声がして、階段を落ちたら……地下にいたの」
「声?」
「私を呼ぶ声がするの」
「…………」
彼は黙り込んだ。
何かを考えている短い間の後、唐突に話題を変える。
「もしかして、体弱い?」
「えっ、私?……私の?」
「そう。最近、食欲はある?」
「…………」
目をぱちくりさせた。
質問の意味は分かるのに、意図が分からない。
男の子は真面目な顔で答えを待っている。
それならちゃんと答えなくちゃよね?
「食欲は……あんまり……体も強くないです。学校ずっとお休みにしてる……」
そういえば、昨日はお薬しか飲んでない。
ずっとベットにいて動かないせいか、ほとんどお腹が空かないのだ。
「最近は特に具合が悪い感じ?」
#一次創作
ruruha
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ruruha
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「うん。そうだと思う」
「そっか……」
右手を銃から離すと、私へ差し出した。
「手ェ、出して」
「!?」
咄嗟に背中に手を隠した私に、彼は肩をすくめた。
「大丈夫、痛いことはしないよ。脈を測りたいだけ」
言いながら、ウエストバッグから腕時計を引っ張り出す。
「脈……?」
「ね」
促されて恐る恐る手を差し出すと、私の手首を取った。
私、そんなに具合悪そうに見えた?
「あの……大丈夫。今は調子いいから……」
そう言ってみたけど、反応はない。
男の子は左手で持った腕時計の秒針に目を落としたまま、動かない。
邪魔しない方が良さそう。
仕方なく、そのままじっとしていることにした。
名前も知らない子に初対面で脈を取られるなんて、変なの……。
暇なので、少しだけ下にある少年の顔を眺める。
私の方がちょっとだけ背が高い。
いくつなのかな。
私より年下に見えるのに、随分しっかりしている。
私も年齢の割に小さくみられるから……この子もそうかな?
少し色素の抜けた髪の色は、なぜか懐かしい気がした。
前にどこかでこんな色の髪の人と出会った気がする。
誰だったかな……。
そんなことを考えていたら、不意に男の子が顔を上げた。
どうして、そんな痛ましそうな目をするの?
「やっぱり……」
小さく呟いて、手を離した。
握られていたところがすーすーする。
あまり脈がよくなかったのかな。
何だか泣きそうに見えたので、急いで声をかけた。
「平気。今日はいつもより調子がいいの、心配しないで……」
けれど、彼は小さく首を振る。
「それは」
言いかけた瞬間、少年は弾かれたように背後を振り返った。
なに?
私もつられて、同じ方向に顔を向ける。
牢屋の道の突き当たりに、もう一つの鉄のドアがある。
ドアは閉まっていた。
「どうし……きゃっ!」
突然、強い力で腕を引っ張られる。
「な、なに……」
「こい!!」
逆らう間も無く、近くの牢に引きずり込まれた。
男の子は私を床に押し付けて座らせると、素早く牢の扉を閉める。
何!?
何が起きてるの!?
質問される間も与えられないまま、気づけば額にカードを押し当てられていた。
「あ、あの……」
「シッ」
短く指示されて、口をつぐむ。
彼の視線は牢獄道の突き当たり、奥の扉に注がれていた。
視線はそのままに、右手で銀色の銃を持ち上げる。
また動くと怒られそうなので、目だけでそちらを伺った。
鉄格子越しに見える、鉄の扉。
何なの?あの扉から何が来るというの。
やがて見守る私たちの前で、ガチャとノブが回った。
「!」
ドアの隙間から顔を出したのは、『私』だった。
昨夜見た『私』!
四つん這いの姿勢で、ドアを頭で押し開いて部屋の中へ侵入する。
だらんと下げた頭を揺らしながら、並ぶ牢の前をぺたぺたと歩いた。
次第に、私たちの牢へ近づいてくる。
「ひっ……」
そんなつもりはなかったのに、思わず声が漏れた。
素早く手が飛んできて、私の口を塞ぐ。
それと同時に『私』がカッと顔を上げ、私たちの牢に突進してきた。
「ガアッ!」
勢い余って鉄格子に激突。
目の前で、赤い顔が鉄格子の隙間に押し付けられた。
「!!」
きつく口を押さえらていたおかげで、何とか声を上げずに済んだ。
鉄格子を挟んで、その距離は三十センチもない。
「ひひ……」
笑い声が、生々しく降りかかってくる。
怖いのに目を閉じることができない。
お化けの私は私よりも痩せこけていて、妙に手が長かった。
なぜか目の前にいる私たちが見えていないのか、キョロキョロと赤い目が揺れる。
鉄格子の向こうから差し込まれる長い舌が、探るように宙をうねる。
口を押さえている手にぐいと引かれ、私の顔を背けさせて舌先をかわした。
「うあぅ……」
やがて『私』は引きつった笑みを浮かべながら、ぺたぺたと去っていく。
『私』の姿が見えなくなると、ようやく男の子は手を離してくれた。
「あれは……」
銃を腰のホルスターに収めながら、何かを呟いて立ち上がる。
が、私は座り込んだまま立ち上がれない。冷たい床に手をついて、体を支えているのが精一杯。
長い手、細い足。
血に濡れた目。
顔はやっぱり私だ。
どうして?
どうしてあのお化けは、私と同じ顔をしているの?
コメント
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# 感想 うわあああ!!!めっちゃ怖いけどめっちゃ気になる展開!!!😭💦 「私と同じ顔したお化け」が鉄格子に突っ込んでくるシーン、マジで映像が浮かぶくらい臨場感やばかった……あの長い舌とか痩せこけた感じとか、想像しただけで鳥肌立ったよ🥶🔥 しかも初対面なのに脈測ってくる謎の少年、なんであんなに痛ましそうな顔したんだろう?「やっぱり」って何がやっぱりなの!?気になりすぎてもう次が待てないよおおお!!! 二人で息♡♡♡て隠れてる間の緊張感がリアルで、読んでるこっちまで息止めちゃった……。 次の話もすぐ読みます!!!続きを早くください!!!✨📖