ランチタイムにはまだ数十分余りがあって、誰もいない休憩室で一人お弁当を広げると、所在なさにテレビを点けてみた。
すると、「これから、KOOGAの新社長の会見が始まります」と、ニュースのアナウンスが流れた。
「えっ……今から?」
あの無愛想だった彼が一体どんな会見をするんだろうと、興味津々で画面に身を乗り出す。
だが、会見に現れた彼の姿に、私は思わず目を見張ってしまった。
「……えっ、あの人……誰?」
テレビ画面に映ったのは、額を出したスタイルにきっちりと髪をセットして、スクエアレンズ型のメガネを掛けた、クールインテリタイプの精悍な男性だった。
前に会った彼とは、もしかして別人? いや、そんなわけは……と、よく見れば、あの時には無造作に下ろしていた髪を整えて、してはいなかったメガネを掛けた、当の本人らしかった。
「嘘……同じ人には見えないんだけど」
驚いてテレビの中の人物を見つめる。
あまつさえ、仕立てのいい三つ揃いのスーツを着こなしたその人は、多くの報道陣を前にしても微塵も動じることなく、「私は──」と、物静かな落ち着いたトーンで淀みなく話していて、顔合わせの時とはまるで違い、いかにもクーガの二代目然としたオーラを放っていた──。
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