テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#chance
22
#生成AI
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
静寂。
テーブルの上。
ハンカチに包まれた“本物”。
マフィオソは、
丁寧にハンカチを開く。
中から現れたのは——
古びた写真立て。
その中には、
まだ若い頃のマフィオソと、
その隣で煙草を咥えて笑う男。
ファミリー先代のボス。
「……」
空気が静かに止まる。
マフィオソは、何も言わない。
ただ、写真を見つめる。
そこに映る自分は、
今よりずっと若い。
帽子もまだ似合っていない。
だが隣の男は——
楽しそうに笑っていた。
「そんな写真一枚のために」
チャンスがぽつりと言う。
「部下まで賭けるなんてな」
軽い口調。
だが、試すような目。
「……」
マフィオソは視線を落としたまま答える。
「この写真は」
低い声。
「もう二度と撮れない」
静寂。
「……」
「だが」
そこで初めて顔を上げる。
その目は、少しも迷っていない。
「私の部下たちは」
ゆっくりと。
「たとえお前に取られようと」
はっきりと。
「必ず帰ってくる」
その一言。
チャンスの笑みが、ほんの少し止まる。
「……」
数秒。
「はは」
小さく笑う。
でもそれは、
今までみたいな“遊び”の笑いじゃない。
「……そういうとこだよ」
ぽつりと呟く。
「何?」
マフィオソが問う。
チャンスは肘をつき、
頬杖をついたまま言う。
「じゃあ、教えてやる」
サングラス越しの視線。
「なんで先代がお前を“ボス”に指名したか」
空気が、変わる。
マフィオソの指先が、
ほんのわずかに止まる。
「……」
「先代の遺言」
チャンスは続ける。
「聞きたいか?」
沈黙。
だがマフィオソは否定しない。
それを了承と受け取ったのか、
チャンスは静かに笑った。
「昔さ」
コインを指で弾く。
「先代に聞かれたんだよ」
“次は誰が継ぐと思う?”
キン。
乾いた音。
「俺は最初、お前じゃないと思ってた」
「……ほう」
「怖かったからな」
あっさりと言う。
「近寄り難いし、無愛想だし、笑わねぇし」
「悪かったな」
「いや、事実」
即答。
だが次の瞬間、
チャンスの声色が少し変わる。
「でも先代は違った」
静かな声。
「あの人、笑って言ったんだよ」
チャンスは、
先代の声を真似るみたいに目を細める。
『あいつは、人が勝手についてくる』
「……」
マフィオソは黙っている。
「『無理に繋ぎ止めなくても、離れねぇ』」
コインが止まる。
「『そして——』」
そこでチャンスは、
まっすぐマフィオソを見る。
「『どんなに揺さぶられても、ブレない芯を持ってる』」
静寂。
部屋が、
しん、と静まる。
「……」
マフィオソは何も言わない。
だがその沈黙は、
否定じゃない。
チャンスは小さく笑う。
「だから選んだんだと」
「“あいつなら、組織が壊れない”って」
その言葉。
マフィオソの目が、
ほんの少しだけ伏せられる。
写真の中の先代。
肩を組まれて、
少し嫌そうな顔をしている自分。
「……勝手な男だ」
ぽつりと漏れる。
チャンスが吹き出す。
「ははっ、言うと思った」
「死んだ後まで人を振り回す」
「そこ含めて好きだったんだろ?」
「……」
否定しない。
その沈黙で、
十分だった。
「……なあ」
チャンスがふと真顔になる。
「お前さ」
「何だ」
「本当に、“帰ってくる”と思ってんの?」
静かな問い。
「もし俺が本気で奪ったら?」
「……」
マフィオソはゆっくりと写真を置く。
そして、
「帰ってくる」
即答。
一切迷わず。
「なぜそう言い切れる」
「簡単だ」
その声は静かで、
絶対だった。
「私は、あいつらを信じている」
沈黙。
チャンスが、
ゆっくり目を細める。
「……あーあ」
背もたれに倒れ込む。
「ほんとズルいな、お前」
「何がだ」
「そういうとこ」
小さく笑う。
でもその顔は、
どこか負けを認めているみたいだった。
「そりゃ」
チャンスは天井を見上げる。
「みんな、ついてくわ」