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「…はあ?」
素っ頓狂な声を出したのは紛れもない彼───ぺいんとだった。それと同様、口を開けて驚いていたのはトラゾーとしにがみくんだ。
けれど、清々しい。この笑みは、きっと嬉しいんじゃなくて、ただ単に───
「感情は、マリオネットだから。 」
───おかしいから、だろう。
「…何言ってるんすか。当たり前のことですよ!!僕とクロノアさんはずっと、この糸を切ってくれるまで待ってたはずです……!!」
頭の混乱が激しいのか、いつものぺいんとのように落ち着きがない。どこか縋るように泣きつくぺいんとは見ていられなかった。
でも、ぺいんとは何かしら苦しんできたからこそ、分かり合えるものが離れてしまったから正常な判断は難しいのだろう。
でも、もうみんなと変わらないよ。
「───切らなくていいんだよ。」
「…え?」
当たり前のことのように言ってしまえば、相手の涙は目から止まった。
相手に一歩、二歩と近寄る。相手は少し後退りしたけれど、自分は相手の頬に服の裾を当てて涙を拭う。
「みんな、感情に操られてるんだよ。その糸を切っちゃえば、みんな笑うことも、泣くこともできなくなるんだよ。」
何言ってるのかわからない?と聞けば、相手は泣き崩れた。膝から崩れ落ち、大泣きした。急にどうしたのかと、慌ててみんなでぺいんとの元に駆け寄った。
「………ずっと、わからなくて。」
わからない、とは感情のことについてだろうか。
見守られる中、ぺいんとは言葉を紡ぐ。
「…小さい時、友達の怪我した話が面白くて、笑ったんです。……でも、全然笑えるような話じゃなかったらしくて。自分からしたら、どうやったらそう怪我するのか分からなくて笑ったら、バカにされたって…思われたらしくて。」
泣きじゃくってはいない。ただ、どこか笑いながら話すぺいんとがよくわからなくて、真剣に話を聞いた。
「…ハブられるようになって。だから、そこから、自分の感情はいらないんだって思うようになって…。…そこからが、すごい順調だったから、自分の感情なんて捨てた方がいいって思った。」
はちゃめちゃな語彙かもしれない。鼻の詰まったひどく聞き取りにくい声かもしれない。でも、みんなは必死にぺいんとの話を聞いていた。
自分は手を握りながら。
トラゾーは背中をさすりながら。
「───でも、なんか遠回りしてたっぽいなあ…。」
ひどく情けなく消えたその声の後、ぺいんとは大泣きし始めた。
後輩であるしにがみくんはどう慰めればいいのか分からなく、手の行き場を失っていたけれど、迷いなくその手は伸ばされた。
しにがみくんは、ぺいんとの頭を撫でた。
……………
もうどのくらいみんなでぺいんとを撫で続けただろう。
自分は彼の両手を握りながら、大丈夫だよ、と声をかけ続けて。
トラゾーは彼の背中をさすりながら、ただ優しい笑みを向けていた。
しにがみくんは彼の頭をぐしゃぐしゃになるまで撫でて、バカですね、とつぶやいていた。
何分かそうした後、ぺいんとはありがとう、と鼻の詰まった声で小さく言った。
それを皮切りにみんなはぺいんとから手を離し、立ち上がった。
「───そうだ、僕たちも泊まっていいですか?」
「「え、」」
困惑の声を出したのは、ぺいんとと俺だ。
しにがみくんの声に続くように、トラゾーもしゃべる。
「それいいっすね。俺、数学教えてもらわないとできませんよ!!」
少し困り顔でそう大きく声を出したのは、トラゾーで。
くす、と笑った。1人じゃなく、2人で。
ぺいんとはどこか呆れながらも、笑みで彼らを迎えた。
「───じゃあみんな、いらっしゃい。」
結局のところ、糸は必要だった。この操り人形には、糸がなければならなかった。
───マリオネットでないとダメだった。
コメント
2件
うわー(泣)😭😭めっちゃめちゃ最高です!こんな素敵な物語をありがとうございます!感情の事についてのお話はあまり無いうえに、とっっっても素敵な作品です!今更なんですが「マリオネット」の完結おめでとうございます!これからも見続けますね!