テヒョンside
ジミナは泣き疲れて眠ってしまった。せめて眠っている時だけでも、病気の夢じゃなくて楽しい夢を見てくれてるといいな…。
今日のことは、ジミナにはよっぽどこたえたみたいだった。あそこまで取り乱して泣くのを見たのは初めてだ。
布団をバンバンと手で叩き、ボロボロ涙をこぼすジミナの様子は本当にかわいそうで見ていられなかった。何と声をかけてあげたらいいかも分からず、ただそばにいることしかできない自分が無力で…。
そうでなくても入院してからのここ数日で、日に日に憔悴しているようだったジミナ…。このままではジミナの心がもたないのではないかと、僕は心配だった。
僕は、ジン先生に話をしに行くことにした。ナースステーションに行き先生の居場所をきく。食堂にいると聞いて行ってみると、先生は1人で夕飯を食べていた。
「ジン先生食事中にごめんなさい。ちょっとジミナなことで…」
「あぁテヒョン、どうかした?」
「あの…さっきジミナ、病室で浣腸したでしょう?その時は気丈に頑張ってたんだけど、その後僕と2人きりになったら大号泣しちゃって…」
「え?そうなの?大丈夫?今は?」
「今は泣き疲れて、寝てる……。」
「そっかぁ…そうだよね。ジミナ、昔から繊細な子だったからかなぁ。年頃だし、ベッドで排泄とか辛いにきまってるよね…。しかも俺、今回の入院はジミナのせいだよ!絶対安静だからな!ってきつく言っちゃったからなぁ…。」
「うん。ジミナも自分が悪いって分かってるし、全部受け入れて頑張ろうとしてる…。でもやっぱり、ずっと寝たきりなことや、トイレに自分で行けないこととか、すごくこたえてると思うんだ…。先生…少しの時間でも車椅子に乗せてあげて、トイレぐらいは行かせてあげられないかなぁ…?」
「うーん気持ちは分かるんだけど…。ジミナの心臓さ、今ほんとにやばいんだよ。あと1回何かあったらもうもたないかもしれないぐらい…。でもそうだな、明日検査してみて、少し良くなっていたら考えるよ。ジミナも頑張ってるもんな、うん。テヒョンもなるべくそばにいてやってな?」
「あの、それでお願いなんだけど…今日ジミナの病室、泊まっちゃだめ??」
「え?今日?急だなぁ。」
「ジミナ、本当に今までにないぐらい泣いていて…何かあったらと思うと心配なんだ…。俺が付いていればおしっこしたい時もすぐベッドで手伝ってあげられるし…。ジン先生、お願い…。」
「テヒョンは本当にジミナ思いだなぁ。小さい頃から、ジミナの体調が悪いとおまえの方が泣いてたよね…。わかったよ。あの病室2人部屋だけどちょうど今ベッド1つ空いてるし、そこで寝ていいよ!看護師さんに言っておくから。」
「ジン先生〜本当にありがとう!!ジミナもきっと喜ぶと思う。」
「あ、そしたらさ、もうすぐ夕飯だから、ジミナの食事介助してあげてくれない?最近苦戦してて、なかなか食が進まないしやっと食べても吐いちゃったりするから俺も心配してたんだ。前にも言ったけど、このまま食べられないようだと鼻にチューブ入れることになっちゃうからさ…。ちょっとでもジミナが食べられるように見てあげて。」
「分かった!」
「あ、入院食は患者の分しか出ないから、テヒョンはここで食べて行ったら?俺が奢ってやるよ。何でも食べたいの注文してきな!おすすめはカツカレーだよ」
「え、いいの!?ジン先生ありがとう〜。」
僕は急いで夕飯を食べ終えると、オンマに電話をした。
「オンマー。今日僕、ジミナの病室に泊まるね。ジン先生に許可もらったから」
「そうなの?ジミナは大丈夫?ジミナに何かあった?」
「いや、そういう訳じゃないけどさ…。明日の学校は休むかも。いいでしょ?」
「分かったけど…学校休むのは1日だけよ。ジミナのことよろしくね。」
「うん。オンマも、ちゃんとごはん食べてねー」
オンマには、ジミナが浣腸されて僕の前で号泣したことは言わなかった。ジミナもきっと、知られたくないだろうと思ったから…。
病室に戻るとジミナは起きていた。
「あ、テヒョン、まだいたの?僕寝ちゃってたから、もう帰ったのかと思ってたよ」
「ジミナ、あのね、今ジン先生に許可を貰ってきたんだけど、俺今日ここに泊まってもいいって!」
「テヒョンほんと!?うれしいな。…もしかして、僕が泣いたから?」
「まぁね。ジミナのことが心配で。今日は夜おしっこしたくなってもすぐ手伝ってあげられるよ。」
「それじゃあお茶を沢山飲んでも平気だね。いつもは夜中にナースコール鳴らすの悪いから、あんまり飲まないように気をつけてたんだ!」
そんなことまで気にしてたのか…。僕はジミナのことが不憫で堪らなかった。
その時、ガラガラと扉が開いて食事が運ばれてきた。今日のメニューはごはんに焼き魚、ほうれん草のお浸しに野菜スープだ。
「ジミナ、食べさせてあげるよ。どれが食べれそう?」
「う、うーん。じゃあ、お魚…」
僕は箸で魚の骨を丁寧に取ると、身の部分をジミナの口に運んだ。
「美味しい?」
「まぁまぁ…。オンマの手料理が食べたいな…。」
30分程かけて、ようやく全体の1/4ぐらい食べ終えた。きっと僕がいるから、これでも無理して食べてるんだな…。涙目で一生懸命もぐもぐと小さな口を動かすジミナが僕は愛おしくて、だけど悲しかった。
その夜、結局僕は眠れなくて、ずっとジミナの横で座っていたんだ。寝ている間にジミナの心臓が動きを止めてしまったらと思うと怖くて…。すやすやと眠るジミナの左胸、心臓の辺りに手をあてて、僕は夜が明けるのを待っていた。
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