テラーノベル
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ボクはスラムと呼ばれる場所にいた。
スラムにいるヤツは兄弟らしい。
なぜか聞いてみたら、
「兄弟は争うものだからだ。」
と言っていた。
よく分からないが、外の世界はそうなんだろう。
スラムでは争うのが当たり前だった。争わないと生きていけなかった。
でも、争うのはイタかった。
体が、心が、枯れた声で叫んでた。
もう楽になりたいってさ。
ある日物知りな女が教えてくれた。
**「死体ってイタイともいうんだよ。」**ってさ。
なぜかその言葉に惹かれた。
いつもイタかったからだろうか。
分からないが、その日から世界が変わった気がした。そこら中にある死体はイタイという輝かしいものに見えた。
ボクも、、、
ボクの他にもイタイになりたいヤツがいた。
競争をした。どっちが先にイタイになれるかという競争を。負けたヤツはイタイになったヤツに花をあげないといけないらしい。
あいつはボクより先にイタイになった。
今までで1番、幸せそうな顔だった。
負けてしまったものは仕方ない。ボクは毎日、花をあげた。
踏み潰されたタンポポでも、枯れてしまったシロツメクサでも、綺麗だったらあげた。
この花はあいつに届いているだろうか。
いつも通り、花をあげに行くときだった。
その日は花が全然咲いていなくて、あげに行った時にはすでに周りは暗かった。
もうすぐです着くというとき視界の端で何かが動いた。光っていた気がした。
、、、イタイ。
何がイタイのか、どこがイタイのか、それすらもよく分からない程だった。傷口がジンジンする。世界がまわる。
あ、、、でも、これで
そうだ。この花は自分用にしよう。
ねぇ、やっとボクもイタイになれるよ。
その時、新しい死体、、、いや、
新しい遺体ができた。
「イタイ」 完
コメント
2件
世界観大好きです……! 痛いから遺体に……ってことですよね、多分(語彙力)