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「《片翼》の片割れに贈物をすることで、発動する呪いのようです。発動すると自分大好きナルシスト野郎と自惚れ屋状態になるとか……。殿下は魔法関係に詳しいのですが時々どんな魔法か、呪いかを試したがる癖がありまして……」
「そうか。よし、殺そう」
「ルティ!」
ルティが王族を殺してしまったが、その後が面倒になる。私とルティのスローライフを守るためにも穏便な解決は必須だ。
「《片翼》と知って求愛する者など殺されても文句は言えませんよ。それだけの者に手を出したのですから」
「今は平常じゃないし、呪われているのなら被害者でしょう?」
「シズクは優しすぎます。しかし罰は必要ですね」
目が笑ってない、ガチだ。しかしこれでルティが不機嫌だった理由が分かった。
(だから私と接触を控えさせようとしたのね。術式の特定まではできていなかったから離れるように動いてくれていたのに、私が余計なことをしたからルティを不安にさせてしまった)
そう思ったけれど、黙っていたルティも酷いと思う。
「ルティはいろいろ考えて動いていたのに、意図を汲めなくてごめんなさい。でも、そういうのも、今後は相談してほしいわ……。じゃないとまた変に考えてしまうもの」
「……シズク。そうでしたね」
一瞬で不機嫌さが消えてしょんぼりと落ち込む。尻尾も耳もへにょって垂れ下がっている。不覚にもちょっとカワイイと思ってしまった。頭を撫でそうになった手を止める。
「これからはどうすべきか、シズクにも相談します」
「ええ」
一つのことを決めるのに、私はお互いに相談慣れしていなかった。だから今回のことが起こったのだと反省する。気をつけようと思いながらも、まだまだだ。
「これからはお互いに次は報告、相談、連絡をしっかりしましょう」
「わかりました。シズクとこうやって一つ一つ決めていくのも悪くなりませんね」
怒りも収まったのか、先ほどまで逆立っていた尻尾がふわりと私を包み込む。むぎゅっ、と尻尾に抱きついたら嬉しそうだ。
「──という感じで、ルティは落ち着けたけど……危なかったわ」
「ごめんなざい! ううっ……。私がエリオットのこと《片翼》だって、嬉しくなって周りに話したの。たぶんその時に……」
「王子の叔父上──ディアス様の一派がそれを聞いて、自分と殿下諸共、ジーナを利用して亡き者にしようと考えたようだ」
「よく気付きましたね」
でも可能ならもう少し早く教えてほしかった。そう思ったけれど、口には出さなかった。
「最初はジーナと《片翼》についての擦り合わせと、お互いの趣味や人生観などを話していた。その過程で──」
お見合いみたい。なんだか初々しい。そう微笑んでいると、ルティの尻尾が私にすり寄ってきたので、モフモフを堪能する。
「?(よく分からないけれど、シズクが可愛い)」
「それにしても《片翼》を利用するなんて、怖い物知らずの魔女と王族がいたものね」
自分たちの手を汚さず、他種族を巻き込んでくるやり方が陰湿だ。偶然とは言え私とルティの仲を引き裂こうとしているのなら、ちょっと許せない。
「シズク、小国なら半日もかからずに滅ぼすけれど──」
「それやったらもう口聞かない」
「止める」
「うん」
「シズク……」
ルティは尻尾で私を引き寄せると、ぎゅうぎゅうに抱きしめる。私は抱き枕ではないのですが、それでルティが大人しくなるのならいいか。《片翼》になってまだ一日目だと何かと不安に陥り易いのかもしれない。
この幸福が消えてしまったら、どうしようと。それは私も同じだ。
だから些細なことに対して過剰な反応をしている。ブリジットとしてのトラウマが私にも残っているように、ルティの心にも深い傷痕が残ったまま。今すぐに大丈夫って言うだけじゃなくて、もっとルティを大事にして、大切だってお伝えして、一緒に居よう。
話がこれ以上拗れると面倒になるので、殿下には術式を封じる魔導具を付けた後、リビングのソファに寝かせた。
検証の結果、呪いの発症の原因は懐中時計を渡したことで発動したらしい。エリオット様とジーナ王女をターゲットにしたかったようだが、よりにもよってルティと私で条件発動したのだから運がない。いや結果的に最悪な事態にならなかったことを考えると、運が良かったと考えられなくもない。
とりあえず今は情報を整理しよう。
「エリオット様。王子の叔父に当たるディアス様という方は、国を収めるに値する器の持ち主なのですか?」
「……」
時世のことを聞いただけなのに、ルティはムッ、としている。なぜに?
エリオット様は少し困った顔をしていたが、私の質問に答えてくれた。
「正直、帝国の傀儡となる予感しかありません。我が国は百年年ほど前、クレパルティ大国が三つに分かれて誕生した国です。西の領地は西の森貿易都市アルブム、中央の領地は我が国、そして北の領地はガスティナ帝国の領地となりました」
「(ブリジットの記憶では、帝国の名前もなかったわ)帝国はいつからあるのです?」
「確か……」
「百年と少し前に、ある王族の隠し子が王位を簒奪し、そこから帝国を名乗った。周辺諸国を陥落させて302年にガスティナ帝国とクレパルティ大国との間で、全面戦争を起こす。帝国は他種族の奴隷化をしていたことで天狐族の怒りを買い、その暴君を排除した。帝国は暴君皇帝の死後、内政に尽力し、周辺諸国とは和平あるいは不可侵条約を取り結んでいる」
「そ、その通りです」
ふふん、とルティは自慢気に答えた。尻尾もふさふさ揺れている。
「(めちゃくちゃ詳しい。でも私が亡くなったのは360年前、……百年前まではクレパルティ大国はあった。となるとブリジットが見た火事はなんだったのかしら? もしくは私を追い詰めるために見せた幻? それともあの火災で大国としての国力が衰えた? ……ん? 天狐族?)もしかして……皇帝を排除した天狐族ってルティ?」
私の発言にエリオット様とジーナは「え」と声を漏らした。ルティは私の髪に触れつつ、微笑んだ。
コメント
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あー、今回めっちゃ良かったわ…! 「♡♡♡う」からの「それやったらもう口聞かない」で一気にシズクの温度感が分かるの好き。ルティの不機嫌の理由が「呪いで自分大好きになったらシズクに嫌われるかも」ってとこ、ウルっときた。報告・連絡・相談を決め直すシーン、関係性の成長って感じで刺さる。天狐族ルティの過去がちら見せされたのも熱い🔥
#恋愛
#長編