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#怪異
イキリ火の玉
1,443
夕方。村長の奥原と何人かの村人が集まって儀式を始めていた。今回もミサと木村が参加している。
努も誘われたが断った。拷問を見たくないというものあったがケツシというものを見つけないといけなかったからだ。
「ケツシに誘われってことは、誰か人ってことでしょうか? それとも不思議の国のアリスの兎みたいな動物とか……」
「人だとしたらお前かちぃこが怪しいけどな」
「そんなぁ……僕からしたら他のみんなが怪しいですよ」
梶とケツシについて考えたがそもそも普通に車で走っていてこの村に迷い込んだのだ。車を運転していた安田が怪しいかといえば、そうとも思えない。トンネルが怪しいといえば怪しいが『誘われる』という意味では違和感がある。
やはり、何か先導者的な存在を考えてしまう。
梶は集会所に残っていた親分たちに今夜が満月なこと。そして、それまでにケツシというものを見つけないといけないということを説明した。
しかし親分は沢村にブツブツと文句を言っているだけだし、ちぃこは安田と体をつつき合っていた。誰も真剣に考えていなかった。
儀式に参加したミサと木村が戻ってきた。木村は疲れた顔をしていたがミサは爛々としていた。
「呻き声みたいな不思議な音がしていたの。それでね、全身切り刻んでね、ゆっくり殺したのよぉ。最初は目玉。あの器具を押してグチャッと」
親分に体を絡ませながらミサは興奮気味に話す。親分はうんざり顔でミサの話を聞き流していた。
努は窓を少し開けて外を見た。もうすぐ陽が沈む。気持ちだけは焦ったが、どうすることも出来ない。梶を見ると珍しく苛ついているようにみえた。
「ご飯、遅いですね」
陽が沈む焦燥感と不安に耐えられなくなった努は誰ともなく話しかけたけど誰も何も答えなかった。
もしまた村人が消えたら夕食は用意されない。とはいえ梶たちはヤクザだ。いざとなったら適当な家から食料を盗んでくるくらいはお手のものだろう。
「ちぃこ……ちゃんは、本名はなんて言うの?」
誰かと会話したくて、何となくちぃこに声をかけた。
「ちぃこはちぃこだよ?」
ちぃこは小首をかしげて答えた。
「いや、名字とか」
「待て」
突然梶が口を挟んだ。
「え? どうしたんですか?」
「ケツシって漢字で書くとどうなる?」
「ケツシ……血と死……アオ様の使いだから血と子のほうが合っているのかな?」
「俺もそう考えた。血の子と書いてケツシ。別の呼び方ならどうなる?」
「血と子でしょ? 単純に考えてチコ……え?」
「そうだ。チコ……ちぃこ」
努と梶がちぃこに目を向け、それに釣られて他の者もちぃこに目を向けた。
「あはは~バレちゃった? でももう手遅れだよ?」
ちぃこは悪びれずにぺろっと舌を出した。梶は立ち上がって扉を乱暴に開けると外に出た。努も後に続く。
「ああ……」
空を見上げて努はその場に崩れ落ちる。陽は落ち空には満月が出ていた。そして奥原と無数の村人たちがこちらに向かっているのが見えた。
そう、夜になっても村人は消えない。つまり努たちも村の住人、ニエビト……贄人になったのだ。
コメント
1件
いやーーー!!😭💦 ケツシ=ちぃこってそういうことだったの!? 名前で気づくとは思わなかった、伏線回収美しすぎる…!! しかも儀式で村人消えないってことは努たちももうニエビトってオチ、マジで背筋凍った… 満月の夜に全員共犯って最高にエモくて怖いよぉ!! 続き早く読みたい!!🐰💫